Octane Special SCOTTY CAMERON PUTTER’S STORY(VOL.8)

小平智プロ、スコッティキャメロン愛を熱く語る

_58A5561.JPG世界中のツアープロにとって、スコッティキャメロンは特別なブランドである。自身の要望を全て満たしたパターを入手するのは難しいにも関わらず、それでも使い続けたくなるからだ。今回、自身専用に作られたパターを愛用する小平智プロにその秘密を聞いた。

マネージャーの三上諒氏がそっと手渡すと、受け取った小平プロも、まるで宝物を扱うかのように、それを優しく両手で支えた。彼のためにスコッティ・キャメロンがハンドメイドで誂えたという、愛用のエースパター、「Newport2 Timeless」だ。今季、日本人5人目となるPGAツアー優勝を成し遂げた小平プロは、自他ともに認める「スコッティキャメロン好き、パター好き」だ。彼の並々ならぬ拘りの原点は、学生時代に遡る。
「初めて手に入れたのはスタジオスタイルニューポート2、GSSがインサートに使われていて。大好きなタイガー(・ウッズ)が使っているニューポート2がかっこよくて、同じ形状にしました」 と、彼は懐かしそうに語る。当時は他ブランドもいくつか試したが、「安心感があったから」、必ずニューポート2に戻ってきたという。

_58A5394.JPGカップイン直後、グリーンの上でエースパターを受け取るキャディーの大溝雅教氏は、すぐ着けられるよう手にヘッドカバーを準備している。小平プロの"パター偏愛"を示すエピソードのひとつだ。

「学生の頃はスコッティキャメロンに関する記事 など自分でファイリングして、澤さんがスコッティキャメロンに移籍した時、昔のモデルはこういうのなんですよ、今との違いはここはこうですとか、それを見せましたね。好きなものはとことん追及するタイプなんです」

澤さんとは、ツアーレップの澤岩男氏のこと。 彼の要望をキャメロン氏に伝える重要な人物だ。スコッティキャメロンは、プロと契約を結ばない特殊なブランドで、自分が欲しいパターの提供を受けるのは、キャメロン氏に認められない限り、プロでもかなり難しいことだという。

「プロになりたての当初は、みんなに支給しているパターをもらい、それで頑張って結果を出し続けていたら、澤さんが自分好みのデザインを採り入れてくれて。自分専用のオリジナルというか、自分にしか合わないパターを提供してもらえるようになった。もうちょっとこうしてほしいという要望も柔軟に聞いてくれるようになり、こういうのが好みですと伝えたらまた採り入れてくれて、そうやって 世界に2本とないパターができた。自分の好きなように作ってもらうためには成績がついてくることが絶対条件。だから、それを励みに頑張れます」

_58A5488.JPG_58A5417.JPG彼が愛して止まないこのパターは、フェースにもバックフェースにも余計なものがない、シンプルなデザインだ。

手の中のエースパターからヘッドカバーを外しながら、彼は嬉しそうにこう続けた。
「僕はシンプルが好きなんです。タイガーが使う、バックフェースに何もないニューポート2のような。あとクラウンが好き。キャメロンの王冠が昔から好きです。デザインもユニークというか発想力が豊かすぎて。スタンプも、例えばスコッティドッグとか。そういえばパターのネックで犬作ってましたよね?(宮里)優作さんに賞金王になったお祝いのプレゼントとして。ああいうのも普通、想像しないし思いつきもしない、本当にすごいと思う」と、スコッティキャメロンの話題は尽きない。

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PGAツアー初優勝を決めた、RBCヘリテージのプレーオフ3ホール目、約7mのバーディパットについては、「今考えると、よく決めたなって思うけど、あの時は入る気しかしなかった。打った瞬間から思ったところに打ち出せて、後はスピードだけだった。タッチもあって完璧でした」
そう小平プロは静かに、しかし熱い口調で振り返った。カップインの瞬間の力強いガッツポーズも、「無意識でした。普段はほとんどやりません」と語る。あの瞬間、左手に握っていたエースパターをインタビュー中も握りしめながら、「パターを肴にお酒が飲めます。冗談ではなく、寝る時も一緒ですよ」
念願のツアーカードを得て、これからPGAツアーに主戦場を移す彼の手には、スコッティキャメロンがずっと変わらず、あり続けるだろう。飛距離では勝る猛者達に対し、彼の武器は、正確なショットと卓越したショートゲーム、そして何より、どこからでも決めにいくパッティング。小平プロにとってパターは、世界のトップランカーをねじ伏せるためのパートナーでさえある。この先、スコッティキャメロンによる彼のウイニングパットが何回見られるか、楽しみは尽きない。

_58A5587.JPG_58A5584.JPGツアーバンは、 移動するゴルフ工房

ツアーバンは、ツアーレップやクラフトマンといったスタッフが、専用の機器やシャフト、スペアパーツ等を使い、削りを入れたりグリップ交換をしたり、トーナメントに出場するプロのクラブ調整や修理を行う場所だ。レースのピット作業の雰囲気といえば分かりやすいだろうか。月曜日に会場入りして、金曜日には次の会場へ向かうため、試合結果を見ることはできないのだが、ツアーバンは間違いなくツアープロを陰で支えている。

小平 智(こだいら さとし)/1989年9月 11日生まれ、東京都出身。PGAツアー1 勝、日本ツアー6勝(メジャー2勝)。 2010年プロ転向後、2013年日本ゴルフ ツアー選手権で初優勝。以降毎年、勝利 を重ねている。2018年、「RBCヘリテー ジ」で、キム・シウーをプレーオフで破り、 日本人5人目のPGAツアー優勝を飾る。


文:オクタン日本編集部 写真、構成: 南陽一浩 
Words: Octane Japan Photography & Edit: Kazuhiro NANYO
取材協力:Scotty Cameron Golf Gallery Tokyo URL: www.cameron-museum.com/

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