さらなる高みを目指す!アストンマーティン新型ヴァンテージにスペイン・セビリアで試乗

Max Earey

アストンマーティンは今、さらに高みを目指そうとしている。すでに老舗のハイエンドスポーツカーブランドというポジションを確立して久しいけれど、その価値をさらにもう一段と引き上げたいようだ。

狙うポジションはパフォーマンスとラグジュアリィを最高レベルで両立すること。わかりやすく言ってしまうとロールス・ロイスとマクラーレンを足して2で割ったような立ち位置… 最初の成果がDB11からDB12へのビッグマイナーチェンジで、内外装の見栄え質感が劇的に向上すると同時に、肝心のパフォーマンスも大きく進化した。第二弾がDBX。インテリアをDB12系デザインへと発展させ、グレードも707一本に絞って高性能路線に特化する。

ブランドイメージを上げるためにはプロダクトの進化に加えて環境づくりも重要だ。引き続きF1アクティビティを活用する一方で、超高級ホテルにオーダーメードシステムの拠点となるランドマーク・ショールームを開くなど、ブランド価値の伝え方にも工夫を凝らす。



そんな中、ヴァンテージもビッグマイナーチェンジとなった。エントリーモデルであるからこそヴァンテージは新たなブランド戦略において重要な役割を果たす。その実力のほどをスペインはセビリアで開催された国際試乗会で試すことに。

DB12の時と同様のマイナーチェンジ手法を採った。つまりフロントマスクとインテリアを新デザインとし、パワートレインとシャシーの性能を大幅に引き上げてきたのだ。DB12はGT寄りのスーパーツアラーとなっていたが、2シーターFRのヴァンテージはもう少しスポーツカー寄り、さらにドライバー・エンゲージメントを高める方向を目指すという。

基本的にDB12とおなじメルセデスAMG製V8ユニットを積む。モデルのキャラクターに合わせてスペックは変えられており、最高出力665ps・最大トルク800Nmと大幅にアップした。8ATも変速時間を切り詰めるなどスポーツカーらしさをいっそう前面に出す。さらにボディ剛性の強化やトレッドの拡大、新たなEデフの採用、最新のシャシー制御など、パフォーマンス面での進化は多岐に及んだ。



セビリア郊外のサーキットで実物を観察する。以前に比べ4割近く面積を広げたというグリルと新たなマスクデザイン、そしてワイドボディ化によって、パッと見た目は限定モデルであったOne-77の弟分のようにさえ見えた。ワイルドだ。

斜めに跳ね上がる例のドアを開け、中を覗き込めばこちらはうってかわってラグジュアリィなムードが漂う。DB12系のデザイン言語で機能の配置も同じ、物理スイッチを多く残してくれたのがありがたい。それでいてウルトラモダンな仕立て。着座位置も下がったようだ。ブランドの目指すスポーツ&ラグジュアリィを走り出す前から体感できる。







午前中は一般道で空いた山間部を走りまわった。以前のヴァンテージは意図的にやんちゃな味付けにされていたけれど、一般道をクルージングする限りコンフォート重視で洗練された乗り味に。明らかにボディは強くなり、シャシーも十分に仕事ができるようで、アベレージ速度を上げても不安はない。コーナリングは常に思い通りのラインを描き、なかでもアクセルオフでノーズの向きを変化させることが楽しくてならない。



ドライブモードをデフォルトのスポーツからスポーツ+に変えると、途端にスパルタンになる。リアアクスルの動きがよりダイレクトになるため、動きの把握に神経を使う。ワインディングロードでは落ち着いてマシンとの対話を楽しんだ方が良さそうだ。その限りにおいてドライバーはシャシーの制御を嫌味に感じることもなく、全てが自分の手の内にあるように走らせることができた。これもまた新たなドライバー・エンゲージメントのあり方というものだろう。





ランチを軽めに抑え、午後からその真の実力をサーキットで試す。最初はドライブモードをスポーツ+にし、シャシー制御も全て効かせたまま、さらに変速もオートマチックで攻めてみた。一般道より相当に高い速度域(ストレートでは250km/hに達した)で走り続けると、気温が高かったせいもあって、流石にトルコンオートマチックやカーボンセラミックブレーキに若干の不満が生じたけれども、メリハリをつけて操れば総じて楽しいFRスポーツカーに終始する。特にトルコンATはシフトダウンのタイミングが掴みづらいので、基本オートで変速したい時だけパドルで操作するという乗り方が有効だった。

トラクションコントロールの介入レベルを調整する機能(8段階)を使ってみる。レベルを少なくすると当然ながらリアのブレークが激しくプロでなければ御するのは難しい。真ん中の5あたりの制御が最も楽しめそうで、ある程度リアを滑らせながらのタイトヴェントなどは、全介入時よりリアアクスルの上下動が抑え込まれるため、気持ちよく走らせることができる。

ワインディングロードでもサーキットでも、V8エンジンは常に力強くヴァンテージの前進を支えてくれた。吸排気サウンドにも工夫が凝らされて、V8モデルでは以前からの課題であった官能性も感じられるようになった。ドライバーの喜ぶサウンドだ。

新たな境地を目指すブランドにとって、まずは高いレベルのマシンに仕上がっていた。あとはV12を積んだフラッグシップモデル(ヴァンキッシュか?)の登場を待つばかりである。




文:西川 淳 写真:アストンマーティン
Words: Jun NISHIKAWA Photography: Aston Martin

西川 淳

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