あの「輝き」をもう一度│美しく蘇ったイタリアン・クラシック

車は乗っていれば自然と汚れるものであり、共に時間を過ごしている分だけ、各所に泥や砂など様々な汚れが蓄積されていく。人間と同じようにそれらを定期的にリフレッシュしないと、時には故障にもつながる。その「汚れ」を徹底的に落とし、かつての輝きを取り戻してくれる場所が、ここ千葉ガレージである。前号では、1泊2日のクイックリフレッシュをレポートしたが、今回は2週間以上をかけて蘇った2台のイタリアン・クラシックをお届けしよう。

Case 1
シャシー裏まで整えてこそ 1957年 アルファロメオ・ジュリエッタ・スパイダー

ひとことに「シャシー裏の汚れ」と聞いても、ピンとこないかもしれない。車検の前にはある程度洗浄するという場合もあるが、シャシーの裏についた汚れなど下から覗きこまないと見ることができず、目にすることも気にすることも普段運転している中ではほとんどない。それに、シャシー裏は走っていれば自然と路面からの影響を受けるもので、わざわざ気にするものでもないという方もいるかもしれない。



しかし、そんな場所だからこそ、"綺麗にする" という観点でじっくり見ることによって問題が発見されることもある。徹底的に洗浄するのは難しい箇所だが、千葉ガレージでは実際にシャシー裏を磨きの対象として、一般的に想像する「ディティーリング」以上のことをおこなってくれる。千葉ガレージ代表の千葉邦彦さんの言葉をかりると、「見えない場所だからこそ、整えておくべき」であるのだ。
 
エキゾーストパイプ、マフラーサイレンサー、ガソリンタンク、デファレンシャルギアなどなど。すべて人の手で丁寧に洗浄されていく。なかなか下回り洗浄の現場を見られることはないだろう。

そのシャシー裏洗浄をおこなうため、千葉ガレージでは、2020年10月に作業ベイの拡張に伴いリフトを一機設置した。海外でこそレストアの一項目としてみなされている「ディティーリング」であるが、そのためにリフトがあるというのは世界に目を向けてみてもなかなか例がない。兼ねてより千葉さんが抱いていた、「車の裏まで綺麗にしたい」という想いがこのようなかたちで実現されたのである。このことからも、ディティーリング、そして車に対するこだわりと情熱が少々違うのはお分かりいただけるだろう。

繊細な作業になるブレーキも細かな箇所まで洗浄される。これまでは気が付かなかった小さなブレーキの欠けや、劣化がここで発見されることもある。洗浄から発展して、次の課題がわかっていくのだ。

サスペンション周りにも泥が蓄積されていたりする。ビスも1本1本が綺麗になっているのが驚きだ。足回りの洗浄によって、走り心地が変わったという声もあるという。

 
すべてのコースでシャシー裏洗浄が含まれるというわけではない。「下回りだけ洗浄もできなくはないけれど、ボディも綺麗にしたうえでおこないたい」と千葉さんは話す。ここに紹介するアルファロメオ・ジュリエッタは、今回フルコースでの入庫だったためその対象であった。タイヤ/ホイールを外し、"裸足" の状態で作業がおこなわれる。アンダーフロアパネル、タイヤハウス、サスペンション、オイルパン、デフ、エキゾーストパイプ、マフラーなど下から見えるところはすべてその対象になる。特に足回りはずっと蓄積されてきたのであろう汚れが溜まっていたりするので、水をかければたちまち真っ黒の水が降ってくる。

左フロントの足回りだけでも、これだけの真っ黒な水が出てくる。ちなみに、作業はレインコートを着ながら、この黒い水を浴びながらおこなわれる。


人の手で時間をかけ、ていねいにおこなうからこそ、ビスの一本までもが見事に蘇るのだ。また、明るい作業ベイでシャシー裏をまじまじとチェックしていると、オーナーも分からなかった事故の形跡や、重要なボルトの脱落、錆びの原因となる傷があることに気づくこともあるそうだ。細かな箇所における防錆コーティングも含まれているため一度施せば安心である。シャシー裏洗浄が一通り終わってから、ボディとインテリアのリフレッシュがおこなわれ完成へと近づいていく。最終的に、このジュリエッタは1カ月ほどの作業時間がかけられた。レッドが眩いほどに蘇ったその姿は、まさしく 「眠れる美女」が起きた瞬間を見たようだった。



Case 2
車それぞれに合った洗浄方法で 1967年 ランボルギーニ・ミウラP400
 
ランボルギーニ・ミウラは、めったに見かけられるものではないが、
時々イベントで目撃することができる。読者の中にはミウラ・オーナーもいるかもしれない。しかし、隅々まで洗われているミウラの姿を見たことはないだろう。千葉ガレージでは、車の年式、ジャンルを問わないため、このようにミウラといった"夢のスーパーカー"を手がけることも少なくない。そして、ここではそれぞれの車が持つ特性に合った洗浄方法が施される。
 
ミウラでは、まず前後カウルを開けてから、各ホイール、サスペ
ンション、前後フレーム、エンジン、トランスミッション、カウル裏側の洗浄から始められる。ミウラは、ボディ全体のリフレッシュをおこなうための入庫だったため、シャシー裏洗浄は含まれていない。前述の段階を2日間かけておこない、塗装膜表面のザラツキなど不純物の除去も含む入念なボディ洗浄がはじまる。エンブレムなどの細かな外装パーツをひとつずつ外し、ボディの研磨作業に向けての準備を進めていく。そして、このマルチェロ・ガンディーニによって描かれた曲線美を活かすように、大小のポリッシャーを使い分けて慎重に研磨される。一連の研磨作業が終わると、ボディコーティング施工と外装部品の洗浄、補修がおこなわれる。

ミウラではお馴染みの、前後カウルを開けた姿がここでも。この状態でも、ミウラ特有の美しい曲線的なボディがよく分かる。

見たらすぐそれと分かる、特徴的なミウラのエアインテーク。すべて慎重に取り外して、これまで「火」を噴いてきたことで付いた汚れを落とす。

もちろん、P400のアイコン的な存在でもある「まつ毛」、ミウラの特徴的なエアクリーナーも取り外され、新品のようになるまで洗浄と仕上げが施される。外した時にはすっかり黒くなっているエアクリーナーは、ミウラならではといえようか。コーティングの後にはボディワックスとインテリアクリーニングの段階に入り、インテリアにおいてはシート、ルーフライナー、スイッチ類など隅々までディティーリングされる。そして、全体の組み立てがおこなわれ、最後の仕上げが施されてから完成だ。コーティングとワックスはミウラ特有の美しさがより映えるような製品が選ばれており、「新車時以上」といっても過言ではない見事な輝きを取り戻している。また、ミウラを象徴するポイントのひとつであるベルトーネのバッヂも新品のようになっており、その威厳が再び吹き込まれている。

ホイールも1本ずつ丁寧に作業が進められていく。ホイール1本の洗浄だけに10時間がかけられることもあるという。

ミウラのボディラインを強調するためのコーティング剤、ワックスが使用され、往年の美しさが見事に蘇る。
 
ミウラはミウラに合った洗浄方法と仕上げ方法があり、ジュリエ
ッタにはジュリエッタに合ったそれがある。車自体の構造はさることながら、作られた目的、歴史、デザイナーが意図していたことなどすべての要素を考慮したうえで千葉ガレージでは車と向き合い往年の美しさを復元している。さらに、隣にある整備工場と提携しているため、洗浄している中で何か問題が発見されても応急処置してもらえるということも嬉しい。車種は問わず、かつての姿へと蘇らせたい車があれば、クイックリフレッシュからでも試していただきたい。さらに愛車を好きになり、もっと大切にしたいと思えるはずだ。


株式会社千葉ガレージ
住所:〒168-0062 東京都杉並区方南2-4-6
電話:03-5913 - 7170(要予約制)
参考価格:1泊2日クイックリフレッシュ 16万5000円(税込)~

文&写真:オクタン日本版編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事