フェラーリ専門ファクトリーの決意

Photography:Hidehiro TANAKA

奈良のナカムラエンジニアリングはフェラーリを得意とするファクトリーとしてその名を馳せている。新たに欧州からプロのテクニシャンを招いた。彼らが今後特化するのはエンツォ時代までの跳ね馬らしい。

ナカムラエンジニアリングを率いる中村一彦氏は、筆者の知る限り日本で最もエンツォを崇拝するメカニックだ。その崇拝があまりにピュアで筋金入りだから勢い、フェラーリという車に対する姿勢もどこよりも厳格になる。要するに、中途ハンパなコンディションの跳ね馬がナカムラエンジニアリングを通過することなど許したくない。ただ動くというだけの跳ね馬などあってはならない。あの世でエンツォに顔向けできない、というわけだ。


足まわりのリフレッシュが終わればOH済みのエンジンを搭載して販売される予定の71 年ディーノ246 GT ティーポM。内外装ともに素晴らしいコンディションだ。

それゆえときに誤解を招くこともあるが、中村は決してめげたりしない。それでも尚、日本中のフェラーリをベストコンディションにしたいと思い続けている。否、もはやその思いだけが日々の原動力になっていると言っていい。

草葉の陰でエンツォが泣くような事態だけは避けたい、という意味では、このたびナカムラエンジニアリングがエンツォ存命のあいだに企画されたモデルに今後重きを置いていくという決断をしたことは理にかなっている。

V8モデルでいえば348シリーズまで、12気筒でいうとテスタロッサ系まで、である。要するに今となってはクラシックに分類される跳ね馬たちだ。


今後、ナカムラエンジニアリングでは独自のネットワーク(海外も含む)で仕入れた跳ね馬の販売にも力を入れていく。写真は97 年F 355 G T B でフルオリジナルの6段MT。

この分野を強化するべく、中村が従来からの優秀なメカニックに加えて、海外からもプロフェッショナルを招聘した。ポルトガルや英国のフェラーリ・ディーラーでレストレーションやエンジニアリングの経験を積んだ職人である。彼はナカムラエンジニアリングのオフィシャルサイトのメンテナンスレポートを発見、その綿密な作業に驚嘆し、自ら来日を希望した。世界の巨人ボッシュにおけるエンジニアという仕事を投げ打ってやってきたのだ。

そんな若き才能を呼び込んだナカムラエンジニアリングの魅力は、絶対に手を抜かないという作業ポリシーにあると筆者は思っている。修理や交換を必要とするポイントはもちろんのこと、ナカムラエンジニアリングから出て行く跳ね馬は入庫したときとはちょっと
違う輝きをみせている。オーナーの気づかない場所までチェックされ、ときにはクリーニングされているからだ。外れたビスがあれば
新しいビスを使って留め直してあるからだ。

そうじゃないとフェラーリの真価をオーナーが味わうことなどできないと、ナカムラを含めここで働くメカニックたちが考えている。新車時のコンディションを知らないオーナーの車であるならば尚さらだろう。

ちょっと古めの跳ね馬に乗っているオーナーで、愛車のコンディションを確かめておきたいと思っている方は、ぜひ一度、ナカムラエンジニアリングの「フルインスペクション」メニュー( 7 万円・税別)を受けてみてほしい。まずは愛車の今のコンディションの真実を自ら受け入れることから、本当の跳ね馬ライフは始まる。愛馬の真の性能を知りたくはないか?

ナカムラエンジニアリングでは今後、中村の意にかなったクラシックモデルの販売も積極的に手がけていくという。


問ナカムラエンジニアリング 〒639-1103 奈良県大和郡山市美濃庄町271-13 TEL:0743-54-6400  https://www.nakamuraengineering.com/

文:西川 淳 写真:タナカヒデヒロ Words:Jun NISHIKAWA 

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