愛車と走る新しい風景に出会いたいのならば、車と一緒に行くフェリーの旅をご提案したい。
船でゆったりとした時間を楽しんだ後、現地でエンジン全開のドライブはいかがだろうか。
車好きならばよくご存知かと思うが、「旅」とは"目的の場所を楽しむ" というだけのものではない。移動時間や訪れた地そのもの、そしてその地の食や人との時間を楽しんでこそ「旅」といえるのではないだろうか。これからご提案したいのは、カーフェリーを使用した旅。愛車とともに移動しながらフェリーでは自分と車を充分に休め、現地では思いっきりドライブを楽しむ。そんな旅である。デリケートなクラシックカーと旅をするには適度な休憩も大切。その時間を上手に、優雅に過ごしたいのなら、断然フェリーがオススメである。
今回は、7月15日より3日間かけて北海道で開催された「トロフェオ・タツィオ・ヌヴォラーリ」に参加するため、自身の1960年アルファロメオ・コンレロとともに、名古屋から太平洋フェリーに乗船し、仙台経由で2日間の船旅をしながら北海道に向かわれるという政本氏の船旅に同行させていただいた。政本氏の車は元ワークスカーといわれ、約3年半の月日をかけて当時のオリジナル仕様にフルレストアされた。
船への車両搬入は各自オーナーによって行われる。係員の誘導により案内され、船内の車専用のスペースへ車を積み入れる。有料で積込みを委託することも可能だが、車を一番よくわかっているオーナー自身の手で積み込むという安心感は大きい。さて、車両を格納してからが、船旅の本番だ。出発の銅鑼がなり、陸から離れると、とたんに日常から切り離された世界が広がる。感じられるのは、流れていく海とゆったりとした時間だけ。
船内での過ごし方は、まったく自由だ。読書をしたり、目を閉じてリラックスしたり、ラウンジでコーヒーを飲みながら海を眺めるもよし。一方で、船内で行われるライブや映画上映を楽しむのも素敵なひとときであろうことは想像に難くない。
政本氏は用意周到。いつも旅の際には書店で気になる本を何冊か購入し、道中や現地で読んでいるそうだ。今回も持参した書籍
を片手に、甲板で好きなビールを嗜みつつ、日差しを浴びながら読書に熱中する。心地よく揺れるフェリーの上で過ごす、極上の読書タイムである。
名古屋港と仙台港間の運航では、船同士がすれ違うイベントも。何もない海のモヤの向こうから、少しずつ向かいのフェリーの影が浮き出てくる。すれ違うと分かっていても、大海原での出会いの瞬間はとても興奮するものだ。すれ違うのは一瞬のため、シャッターチャンスは短い。
船内ではピアノ演奏もおこなわれ、美しい音色がラウンジに響き渡る。
あっという間に2日間は経過し、船内のアナウンスで船旅の終わりが近いことを知る。フェリーでのひとときが濃密過ぎて忘れかけていたが、まだまだ旅は続き、むしろ今日からのラリーへの参加こそ本番である。
船を降り駐車場に向かうと、真っ赤なコンレロに早速荷物を積んで、出発の準備をする政本氏の姿が見えた。北海道の地に足を踏み入れて、ものの30 分も
経たないうちに、トロフェオ・タッツィオ・ヌヴォラーリのスタートである函館へ向かって出発していった。苫小牧港からは5時間ほどのドライブだ。もちろん、他の乗船客たちもどんどん出発して行く。
船旅は疲れるのではというイメージを持つ方もいるかと思うが、実際のところ、船にいるうちのほとんどがリラックスタイムであるため、到着後は休むことなくすぐにスタートできる。いや、正確に言うのならば逆で、すぐに走り出すためにフェリーという選択をしているのだ。
文:オクタン日本版編集部 Words:Octane Japan
写真:奥村純一 Photography:Junichi OKUMURA
太平洋フェリー予約センター
Tel:052-582-8611
[平日]9:00 ~ 19:00、[土日祝]9:00 ~ 18:00
※年中無休(年末年始除く)
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