1世紀以上を経て、ロールス・ロイスの予言的な言葉が現実に!電動ハイパーラグジュアリークーペ「スペクター」に試乗

Octane UK

私のようなしがない自動車PRコピーライターが、新車を宣伝するために何かいいワードがないか必死で探しているとき、まるで雷が落ちたようなコピーに出くわして思わず「イエスッ!!」と叫んでしまうようなことが時々ある。ロールス・ロイス新型スペクターを宣伝する際のコピーを探している時に、ロールス・ロイスの共同創業者であるチャールズ・ロールズが1900年に述べた言葉を見つけた時がまさにそうだった。

「電動車には匂いも振動もない。固定式の充電ステーションが整備されれば、とても便利になるはずです」

このロールス・ロイスの予言的な言葉が現実のものとなるまでには、1世紀以上の歳月を要したが、ついにロールス・ロイスは2011年、コンコルソ・ヴィラ・デステで電気自動車ファントムのプロトタイプ、102EXを初公開した。私たちは、当時の現行ゴーストでの壮大なロードトリップレポートの余談としてこの車を紹介し、私のコ・ドライバーであるリチャード・ヘセルティンは「これはただのテストモデルのようなものだが、数十年後のハイパーラグジュアリーカーがどのようなものになり得るかを予告している。興味をそそられる車だ」と、そのときに述べている。

しかし、リチャードが予想したよりもずっと早く、その時がやってきた。



新型スペクターは、3トン近い巨大な2ドアクーペで、コンセプトは従来のレイスに似ているが、あらゆる点で革新的だ。

まず最初に浮かぶ疑問は、一回の充電でどこまで走れるのかということだろう。ロールス・ロイスのプロドライバーによると、2023年の初めにカリフォルニアの暑さと乾燥の下でテストした際には、一回の充電で300マイル以上も走ったそうだ。冬はとても寒く雨も多い英国のような環境下では、私の経験から考えると最長でも230マイル、公式のガイダンスに従って充電を80%までに抑えると(バッテリーを長持ちさせ、充電時間を最小限に抑えるため)、185~190マイル程度に減少するだろう。このサイズと豪華さを考えると、ある意味称賛に値する。

ロールス・ロイスは長旅に適した車だ。私は以前、同僚のグレン・ワディントンとファントムクーペを交代で運転し、南フランスからロンドンに戻り、1日で1100マイル以上を走破したこともある。そういった使い方をしている中で、頻繁に停車する必要があるとイライラするだろう。急速充電器を使っても、80%に達するまで1時間はかかるのだ。

航続距離の不安はさておき、この車が愛される車であることは間違いない。実際、その愛は一般の人々にも及んでいるようで、駐車しているときの通行人からの評判は非常に好意的だった。私がノッツ州マンスフィールドのマクドナルドの前でスペクターの充電をしていると、カスタムしたハッチバックに乗る若者が寄ってきて「きれいな車ですね。仕事は何をしてるんですか?」と、声をかけてくれた。近年、ロールス・ロイスは比較的若い顧客層をターゲットとしているため、その戦略が成功していることを感じた。

かなりの胴回りにもかかわらず(全幅はミラーを含めると2.14メートルもある)、曲がりくねった道では驚くほど小回りが利く。特にタイトなラウンドアバウトでは、四輪操舵が威力を発揮。フロントとリアの電気モーターによって4輪とも駆動するのだ。合計出力は430kW(584bhpに相当)で、リア・モーターがその3分の2近くを担っている。



先代レイスはV12ツインターボで624bhpを発生し、車重は600kg軽かったが、これは環境に優しい未来のために支払う代償と言えよう。スペクターの最も優れている点は、乗り心地だ。23インチという巨大なホイールを履いていながら、過酷すぎる道を除けば基本的にはどんな道でも滑らかにする驚くべき能力を持っている。ほとんどずっと、エアサスペンションからわずかな震えが感じられるだけで、この巨大なマシンがパッチワークのような路面を丁寧にアイロン掛けしていくようだ。左右非対称の段差に遭遇すると、アンチロールバーが片側ともう片側を切り離し、各ホイールがそれぞれ独立した状態になる。その段差を乗り越える時に非常にまれに、「ドン」という音がするが、もしそうなったときは、普通の車だったら一旦降りて異常がないか確認するレベルの大きな段差だったということだ。

インテリアも期待通り素晴らしい。ヘッドライニングに何百もの光ファイバー製の「星」をあしらった有名なスターライトルーフは、初めて見ると開いた口が塞がらなくなってしまうだろう。後席の乗員スペースはそこそこあるが、身長180センチの私の2人の息子は、後席のセミリクライニングポジションに不満を漏らし、長時間の移動はしんどいという。そのような不満はフロントシートにはない。



技術的な面におけるほとんどの部分は、BMWの最新版iDriveのロータリーノブで操作でき、かなり直感的に使うことができる。巨大なリア・ヒンジのドアは電動開閉だ。ドライバーはブレーキ・ペダルに足をかけたままドアを閉めることができ、両手は自由に使える。



インターネットの発達により、紙の説明書は付属しない。2.9トンもの重さを誇るこのようなハイパーラグジュアリーカーでは、環境への影響を考慮しても、紙のマニュアルを提供すること自体が問題になるとは思えない。ロールス・ロイスよ、時流に逆らってでも、単なる説明書に留まらず、見ているだけで楽しめるような美しいハンドブックを作成してほしいものだ。価格が40万ポンドにも上るような車なら、そんな特別なマニュアルを付ける価値は十分にあるはず。

航続距離と充電の懸念はさておき、スペクターは本当に素晴らしい車だ。電動パワーが本当に似合う車は、オフローダーとロールス・ロイス、この2つのタイプだけだろう。


文:Mark Dixon

Mark Dixon

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