完全なハンドメイドにこだわる、ドイツ・グラスヒュッテの新星ブランド、モリッツ・グロスマン。
今年3月発表の「アトゥム・エナメル」に、数量限定の特別なモデルが追加された。
ドイツは多くの哲学の偉人を輩出し、カントやヘーゲル、ニーチェなど枚挙に暇はない。おそらく国柄や国民気質の根底に哲学があり、それはモノづくりにも大きな影響を与えているのだろう。だが論理的な思索には、単なる合理性や効率追求とは異なる人間味を秘める。ポルシェやライカといった精緻な工業製品に通じる魅力もそこにあり、そしてモリッツ・グロスマンもまた例外ではないのである。
「アトゥム・エナメル ジャパンリミテッド」は今年3月に登場した初のエナメルダイヤルモデルに日本仕様として磨きをかけた。WGとRGのケースカラーに合わせて、アイボリーとクリームの2色のエナメルダイヤルを採用した稀少なモデルだ。19世紀の懐中時計に倣うグランフー・エナメルのダイヤルは独特のテリ感のある艶が楽しめる。
特筆すべきは針だ。発表に合わせて来日したクリスティーネ・フッターCEOは「針こそ時計の顔」と断じ、グラスヒュッテでも唯一、世界的にも稀少な自社製針にこだわる。一本ずつ手作業で成型、磨きをした後、焼き入れをする。独特のブラウンバイオレットは焼き戻しのわずか数秒で生まれる酸化発色だ。
モリッツ・グロスマンはドイツ高級時計の伝統を現代に継承するといわれる。だがそれは経験則による、自分たちにとっての最良の選択に過ぎない。針への執着もそう。まさに深遠たる人間性を探求する哲学的といえるのだ。だからこそモリッツ・グロスマンは面白い。
ATUM ENAMEL JAPAN LIMITED アトゥム・エナメル ジャパンリミテッド
ケースはRG(ローズゴールド)とWG(ホワイトゴールド)の2色が用意され、それぞれ異なる色のドンツェ・カドラン製エナメルダイヤルが組み合わされる。日本限定各7本。手巻き、18KRG ケースまたは18KWG ケース、ケース径41㎜、R G:3 8 0万円 〜( 税抜)、W G:400万円 〜(税抜)
ブラウンバイオレットの針に、職人の技が光る
アトゥム・エナメル ジャパンリミテッドの発表会では、本国から来日した針職人、マティーナ・ハーンチによる"焼き戻し"の実演が行われた。時間をかけて丁寧に磨き上げられた針は、アルコールランプの熱で酸化発色させることにより、ブラウンバイオレットに色付く。この針を作れる職人は、グラスヒュッテにも2人しかいないのだという。
お問い合わせ:モリッツ・グロスマン ブティック 03-5615-8185
文:柴田 充 Words:Mitsuru SHIBATA
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