そもそもクラシックカーは、年式相応に耐久性も下がっていると考えたほうがよい。フロント・ウインドウやボディの塗装だって、往時の環境に対応していたと考えるべきで、現代のハイスピード走行での飛び石などを考慮すれば、ダメージを避けるためには大昔の巡航速度を守ってあげたいところ。それはパネルバンなど立派な積載車でボディを完全に覆った場合でも同じだ。
サスペンションは経過年数なりに弱ってきているから、タイヤやアームをベルトでギュウギュウに締め付けてしまったら、どんなひどいダメージが残らないとも限らない。とにかくクラシックカーと最新型車はまったくコンディションが異なることを理解してほしい。車をいたわる気持ちが、とにかく大事なのだ。
さて今回積載車でV8を運んでくれたスタッフは、クラシックカーのベテランでもある。アストンマーティンV8は横浜のベイエリアにある大きな整備工場にしっかりとていねいに運ばれた。ご存じでない方が多いと思うが、英国アストンマーティンのクラシックカー部門はアストンマーティン・ワークスという名称で、創業1913年から製造したすべての車を正しくレストアすることをモットーとしている。もちろん入手が難しいパーツなどもあるが、特別な会社らしく親切に対応してくれるらしい。だからまずはどういった部品の交換や補修が必要なのか、外せる部品を全部外してしっかりと見極める必要があるのだ。
車両が到着して最初に行ったのが、ガソリンタンクの取り外しだ。
ガソリンが腐るということをご存じだろうか。「ガソリンは油でしょ。原油はずっと地底深くに堆積していたのだから、永く置いておいても悪くなるはずがない」。そう考えるひとが非常に多い。答えはNOである。
ガソリンは意外ともたない。気温変化が少ない所でも品質がきちんと維持できるのはたったの半年程度。空気にいつも触れるような状態なら3か月程度で劣化が始まる。ガソリンに含まれる『アルケン』が酸素に触れて酸化し、酢酸やギ酸に変化してしまったり、揮発成分が抜けてしまったりして劣化が起こる。劣化したガソリンは独特の匂いを放つ。腐ったガソリンが入ったまま、無理やりエンジンを回すと、その酸がエンジンを溶かす可能性もある。長く放置された車は、とにかくていねいに取り扱わなくてはならない。
結果としてアルミニウム製のタンクは、外観はきれいだったが、中はかなり厳しい状態だった。タンクキャップ付近も腐食して蝶番が作動しなくなっていた。まずはここから。
アストンマーティンV8(1972-1990)
エンジン 5340cc V8
最高出力 280bhp/5500rpm
最大トルク 301 lbt-ft(約41.6kgm)/3500rpm
0-60mph加速 6.2秒
最高速度 149mph(約240km/h)
オクタン日本版編集部
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