時を超えた美しさ│二度目の日本上陸を果たしたジャガーEタイプ

Photography:Keishi OKUZUMI

1967年の日本で、英国車の総代理店であった新東洋企業が新車で販売したジャガーEタイプ。時代を超えていま、本国のクラシックセンターで見事なフルレストアを受けて再び戻ってきた。

東京の赤坂や麻布、白金界隈が輸入車のメッカだった時代のことを直接知っている年代ではなくても、私と同じように車好きなら誰でも「新東洋企業株式会社」の名を耳にしたことがあるはずだ。赤坂の新東洋といえば、年配のエンスージアストにはジャガーをはじめとした英国車の輸入元として、また近年では旗艦ショールームを構えたアストンマーティンのインポーターとして、車好きには有名な老舗である。昭和32年創業の新東洋企業株式会社は、当初はオースチンやモーリス、ライレー、MGなどのブランドを抱えていたBMC(後のBLMC、ローバー・グループ)の総代理店として、その後はプジョーやサーブ、マセラティなども扱っていた伝統あるインポーター/ディーラーである。

3年ほど前にアストンマーティンのディーラー権を返上したが、依然として英国車との縁は続いており、現在は横浜のみなとみらい地区に本拠ショールームを擁するジャガー・ランドローバー横浜を運営している。
 
そのサービスファクトリーのガレージに佇む美しいシリーズⅠフィックスドヘッド・クーペ(1962年型というから最初期のモデルだろう)は、かつて新車時代に日本に輸入された個体であり、英国でレストアされた後に再び日本に戻ってきた車だという。すなわち、新東洋の手で二度目の日本上陸を果たしたことになる。1961年のジュネーヴショーで発表されたジャガーEタイプは、ル・マン24時間レース(ジャガーは通算7回優勝しているがそのうち5度は1960年以前)で活躍したC/Dタイプを彷彿とさせるエアロダイナミックで流麗なスタイルが自動車界に衝撃を与え、世界で最も美しい車と称賛されたばかりでなく、直6DOHCエンジンや4輪独立サスペンション、4輪ディスクブレーキなどの高度なメカニズムを備えており、ジャガーの名を世界的に高めた傑作であることはいうまでもない。




私事だが、かつて私が所属していた『カーグラフィック』誌は創刊第2号(1962年5月号)でジャガー(白いオープンモデルだったが)を取り上げている。創刊号で特集したメルセデス・ベンツ300SLとともに、まさしく当時の日本では夢のスポーツカーだったのである。


英国のジャガー・ランドローバー・クラシックワークスで完璧にレストアされたシリーズⅠクーペは、歳月を経た風格も漂わせて華美に過ぎず、そのうえ実用性をも考慮した素晴らしいコンディションであることはもちろんだが、たまたまかつて日本で販売された車であるという点も不思議な縁を感じさせる。ちなみにガレージの奥には、四半世紀も前のスーパースポーツカーXJ220も"ひっそりと"、だが大切に保管されていた。老舗の暖簾の重みとはこういうことだろう。

文:高平高輝 写真:奥隅圭之 Words:Koki TAKAHIRA Photography:Keishi OKUZUMI 取材協力:ジャガー・ランドローバー横浜  Thanks to:Jaguar Land Rover Yokohama

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