60年を経て最新モデルに息づくスポーツカーのDNA|ジャガーF-Type【2つのHeritage Edition】

Tim Andrew

ジャガーFタイプの前身にあたるEタイプは、いまからちょうど60年前の1961年に誕生し、1975年に生産を終了した。つまり、15年間の長きにわたって人々から愛されたことになる。スポーツカーとしてはかなり希有な例ではないのか。



なぜ、Eタイプはこれほどまで長く愛され続けたのか。

理由のひとつは、間違いなくそのエレガントなスタイリングにある。流れるようなラインはシンプルの極みだが、完璧なプロポーションとていねいに磨き上げられた曲面が織りなす美しさは目が覚めるほど。印象的なデザインのスポーツカーは枚挙に暇がないけれど、その気品溢れるスタイリングにおいてEタイプは唯一無二の存在といえるだろう。



では、Eタイプの走りはどのようなものだったのか? 残念ながら私自身は経験したことがないが、Octane英国版に、V12エンジンを積んだEタイプ最終モデルに関するこんな記事が掲載されていたので紹介しよう。



「渋滞を抜けて片側二車線の道に入ると、Eタイプはもうひとつの表情を見せ始める。エンジン回転数は1000rpmから3500rpmまで楽々と、しかし慎み深く上昇していくが、この領域ではエグゾーストノートの音色が微妙に変化する。決して騒がしくなるわけではなく、スポーティというよりは高貴な色合いが濃いサウンドだが、そこにカムチェーンの精緻できらびやかな金属音と吸気音がくわわり、さながらミュージカルのようなハーモニーを奏でるのだ」

Eタイプの魅力がエンジン・サウンドだけでないことは、次の一文を読めば一目瞭然だ。

「しかも、当時のスポーツカーとしてはかなり速い。4速70mph(約112km/h)で走行しているときのエンジン回転数は3200rpmで、ここから80mph(約128km/h)に上げても3700rpmに過ぎない。しかも追い越しを仕掛けるときにもシフトダウンする必要はなく、素早く加速に移れる。乗り心地が優れているのは相変わらずで、どんなにひどいバンプでも鮮やかに吸収してしまう。最新のコンバーティブルと比較してもまったく遜色がない快適性だ。また、ブレーキが信じられないほどよく利くことも特筆すべきだろう」



ここで紹介したEタイプ・ファイナルエディションから数えて38年目にデビューしたのがFタイプである。私は、ここのところ2台のFタイプに立て続けに試乗したが、その印象がEタイプの記事とあまりによく似ていることに大いに驚かされた。

【EタイプとFタイプのつながり】(写真15点)

デビュー当初のFタイプはパフォーマンス重視。このため乗り心地はやや硬めで、スロットルペダルを大きく踏み込んだ際のエンジン・サウンドもそれなりに迫力があったが、最新型ではそうした荒々しさが影を潜め、ジャガーらしい洗練された感触に変わっていたのである。



とりわけ印象的だったのがサスペンションのしなやかさで、これだったらワインディングロードだけでなくハイウェイ・クルージングも苦もなくこなせそう。私が試乗したのは2台ともコンバーティブルだったが、サスペンションに強い衝撃が加わってもそれを押し返そうとする力強さがボディから伝わってきた。正確なハンドリングの面でも快適な乗り心地の面でも、このボディ剛性が重要な役割を演じているのは間違いないだろう。

フラッグシップのR コンバーティブル P575に搭載される5.0リッターV8スーパーチャージド・エンジンは575psの最高出力を誇るものの、市街地では極めて柔軟性が高くて扱い易く、ジェントルに走るときのエンジン音が控えめなところも嬉しい。いっぽうで、ドライバーがパワフルな走りを求めたときには圧倒的なパワーを発揮。フルスロットルにすれば背中がシートバックにめり込むような加速Gを味わえる。足回りの設定もそうだが、何気ない街乗りからハードなドライビングまで、幅広い走りに余裕で対応できる懐の深さこそ、最新Fタイプの大きな魅力といえる。

文:大谷達也 写真:Jaguar、Tim Andrew、神村 聖

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