世界最古のダイヤモンドメゾンの歴史、そしてウォッチブランドとしての挑戦

BACKES & STRAUSS

1789年にドイツで産声をあげたバックス&ストラウスの前身「Backes&Co.」 2代目が1800年代初頭からロンドンに拠点を開設し、世界中で認めらるダイヤモンドメゾンへ昇華した。



ダイヤモンドならではの究極の輝きは、肌に載せたときに驚くべき美しさを放つ。光を取り入れ、動くたびに光のプリズムを感じさせてくれる。チカチカとした表面反射による輝きの「シンチレーション」、ダイヤモンド内部に入った光が白く強く煌めく「ブリリアンシー」、プリズム効果によって虹色の輝きを放つ「ディスパーション」、と複雑な光を放つ唯一無二な存在でもある。そしてダイヤモンドは、身に着ける人の本来の美しさを導き出してくれる。

バックス&ストラウス社は、「ダイヤモンドを最も美しく見せるための腕時計」をつくるイギリスの会社である。その歴史をひもといてみると1789年、ドイツのハーナウで設立された世界で最も古いダイヤモンドメゾンである。創業者はゲオルグ・カール・バックスで、当初はBackes&Co.という名称だった。もともとは、金細工師として成功を収めていたゲオルグ・カール・バックスがダイヤモンド加工を手掛けるまで、そう時間はかからなかった。



当時24歳だった息子、ヨハン・フランツ・バックスをイギリス・ロンドンに送り込み、新しくバックスの事務所を開設させることになった。1819年にゲオルグ・カール・バックスが亡くなった後も、息子はダイヤモンドとジュエリーの取引と加工・製造を続けながらロンドンの事業を独立させ、社名もJ.F. Backes & Co.と改名した。

1851年のロンドン万国博覧会では、公式カタログの2ページに渡って同社が手掛けたジュエリーの図版に費やされ、展示された。「J.F. Backes & Co.」(“J.F”はヨハン・フランツの頭文字)として登録したアッシリアンスタイルのブレスレットは現在も大英博物館で見ることができる。

1856年、ヨハン・フランツ・バックスは、マックス・ストラウスという名の従業員を採用。15年後、マックス・ストラウスは同社を経営するまでに至り、1873年には現在のブランド名である「バックス&ストラウス」へと名前を変えた。1888年にジュエリー製造から、ダイヤモンド研磨および製造へ移行し、以来名門ジュエラー御用達のダイヤモンドディーラーとして世界中に販路を広げることとなった。

そんなバックス&ストラウス社、2006年11月にはスイスの高級機械式腕時計ブランドであるフランク ミュラー ウォッチランドグループと戦略的パートナーシップを結んだ。そして、ロンドンの地名を冠した「リージェント」、「バークレー」、「ピカデリー」コレクションが発表された。

「リージェント コレクション」は、1811年に宮廷都市計画家、ジョン・ナッシュがリージェント王子の依頼を受けて建築し、その後メリルボーン・パークとして知られるようになった、ロンドンを横断する広大な帯状の公園からインスピレーションを得ている。ナッシュの作品であるリージェント・ストリート、リージェンツ・パーク、セントジェームズ・パークなどで見られるクラシカルで調和のとれたプロポーションが、 同コレクションの大きなカーブと大胆な均整美に見ることができる。

リージェント
自動巻き、18KRG、約7.89ct、アリゲーターストラップ
1672万円(税込)
ケースに配された大粒のダイヤモンドが、光を集めて輝きを放つリージェントウォッチ。


1819年にジョン・ナッシュにより建築されて以来、常にロンドンの中心にある円形交差点・ピカデリー。その場所をイメージしたモデルが 「ピカデリー コレクション」だ。伝統的なスタイルの拠点であったピカデリーサーカスと、モダンファッションが生まれたオックスフォードサーカスを繋いだこの場所。ロンドンの象徴のひとつであり、新しいエネルギーとクラシックエレガンスとの融合というコンセプトが、ピカデリー コレクションと共通している。

ピカデリー ルネサンス
手巻き、18KRG、約2.45ct、アリゲーターストラップ
594万円(税込)
最高級のアイデアル カット ダイヤモンドが2列に惜しみなく配されている薄型ウォッチ。


ロンドンに数ある素晴らしい公園の中でも最も歴史的な魅力に溢れる公園のひとつ、バークレースクエア。エレガントでにぎやかなメイフェアの中心に位置する気品溢れる正方形の公園に着想を得て「バークレー コレクション」が誕生した。また、18世紀に設計されたバークレースクエアは、バックス&ストラウス社にとって特別な響きを持つ。広場内のプラタナスの木々は同社が創業した年、1789年に植えられたからだ。

バークレー ジョンブル
自動巻き、18KWG、約11.91ct、アリゲーターストラップ
2156万円(税込)
アイデアル カット ダイヤモンド、ルビー、サファイアが英国国旗を形成する遊び心。


バークレー エンペラー ブリリアント トゥールビヨン
手巻き、18KWG、約11.07ct、アリゲーターストラップ
7590万円(税込)
ダイヤモンドの匠と腕時計の匠による精巧なものづくりへの情熱と最高技術の結晶。


現在、ウォッチ コレクションのラインナップは拡充されており、新たに「ヴィクトリア コレクション」、「ルネサンス コレクション」に加えて、よりジュエリー色の強い豪華絢爛なものも登場している。また、フランク ミュラーとの協業で成し得た、トゥールビヨンも投入されている。ダイヤモンドトゥールビヨンウォッチの製作という試みは、ダイヤモンドの匠と腕時計の匠による精巧なものづくりへの情熱が合わさった、最高技術の結晶と言えよう。

なお、バックス&ストラウス社のダイヤモンドはすべて“カラーレス”に分類されるD、E、Fカラーで、クラリティは無傷のフローレスか内包物の発見が困難なVVS+のみ使用する。そして、すべてのバックス&ストラウス社のウォッチには、少なくとも1個のダイヤモンドがリュウズにセットされている。これは、ダイヤモンドのパビリオン(台座)を模したもので「Jewel in the Crown」と呼ばれるバックス&ストラウス社のシグネチャーとなっている。


文:古賀貴司(自動車王国) 写真:バックス&ストラウス
Words: Takashi KOGA (carkingdom) Images: BACKES & STRAUSS

文:古賀貴司(自動車王国)

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