英国車オンリーのラリーイベント「ザ・グレート・ブリティッシュ・ラリー2022」

The Great British Rally

10年に一度、開催される「The Great British Rally」。今回の参加条件は「英国車であること」とシンプルで寛容なものだ。2022年はチャールズ新国王即位の記念として駐日英国大使館の改装前に特別に開催され、新旧総勢70台が関東を優雅に、優美に駆け巡った。『オクタン日本版』はこのイベントにオフィシャルメディアとして参加取材。その模様をレポートする。



2014年に初めて開催された「The Great British Rally」は、クラシック英国車ラリーとしてスタートしている。10年おきの開催が予定されていたが、今年はチャールズ新国王即位の特別な年とあって、英国車であれば年代やブランドを問わないという寛容なレギュレーションのもと開催された。本誌編集長と筆者はベントレー・フライングスパーで参加した。

早朝、スタート地点である東京・千代田区にある駐日英国大使館入口では、ちょっとした渋滞が起こっていた。というのも一台ずつセキュリティチェックを受け、“入門”するからだ。大使館の敷地は「不可侵」で、いわば英国の領土と同じ扱いとなる。荘厳かつクラシカルな英国大使館の建築デザインを背景に最新のベントレーがいるかと思えば、1920年代のインヴィクタがいたり、1950年代のアストンマーティンがいたり、異空間ぶりに思わず微笑んでしまった。

セキュリティチェックを無事に通過しゲートをくぐると、そこは英国なのだ。ボールルームと思しき建物内には亡きエリザベス女王の写真が飾られていたほか、いわゆる正統派の“アンティークショップ”で見かけそうな絵画や調度品が並んでいた。歴史的価値があるものには QRコードが振られており、各作品の解説をスマホで見ることができた。さすが、文化や歴史を重んじる英国らしい配慮だ。



大使館内でのスタート・セレモニーが終了してからは、いよいよ一泊二日のラリー・スタートだ。



「終戦前の古い車でラリーに参加する皆さんを見ると、自分が本当に車好きなのかたまに分からなくなることがあるんです」と発した本誌編集長。たしかに快適装備が皆無なばかりか、運転は決して楽ではないし、屋根もなければ窓さえないものも多い。そんな車でラリーに参加するのは自動車への深い愛、そしてラリーへの情熱の賜物で、尊敬に値すると言っていい。表立って聞いたわけではないが、クラシックカーでのラリー参戦は先人たちへのリスペクトと、昔の車で今を走ることでタイムマシンに乗っているような感覚を楽しむ醍醐味があるのかもしれない。



一日目のゴールは東京から1時間半もあれば辿り着く、富士スピードウェイ。だが、コマ図(目印と距離が記された、走行指示書)に沿って走ると、中央高速道路を相模湖東ICで降ろされた。富士スピードウェイへは取材のために何度も足を運んだことはあるが、国道で向かうのは初めてのこと。東京のベッドタウン、神奈川県相模原市から国道 413号線を西へ走ると、山間の長閑な風景が広がる。やがて到着したのは休憩場所としてコマ図に記されていた、山梨県南都留郡道志村「道の駅どうし」。駐車場はあっという間に新旧の英国車で埋まった。何も知らない一般利用者はさぞ驚いたことだろう。



道の駅を後にしてしばらくすると、富士スピードウェイまでは雄大な富士山を眺めることができ、日本の美しさを再発見。富士スピードウェイに併設されている「富士レクサスカレッジ」での昼食後はPC競技、ショートコースでのタイムトライアルが用意されていた。午前 9時前に駐日英国大使館を出発して、あっという間に夕暮れを迎えた一日だった。



宿泊は開業して間もない「富士スピードウェイホテル、アンバウンドコレクション by Hyatt」。「富士モータースポーツミュージアム」と一体化した館内では一歩足を踏み入れた瞬間からモータースポーツの魅力を肌で感じられる。ディナーが始まるまではドリンクサービスがエントランスでふるまわれ、ミュージアム見学も自由だった。そして、特別にアストンマーティン・ヴァルハラがお披露目された。





翌日の出走は午前 9時。御殿場にある秩父宮記念公園でお茶と記念撮影、ランチはゼッケン番号でグループ分けされ富士屋ホテル、インディゴ箱根強羅、箱根リトリートと振り分けられた。その後、中継地点(休憩ならびにPC競技が用意されていた)である大磯ロングビーチホテルへ向けて移動するも、週末とあって交通量は多かった。それでも大きなトラブルに見舞われた車がいなかったのは、普段からのメンテナンスが行き届いているからか。



二日目のゴールは横浜みなとみらいの「ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル」だった。大磯から横浜まではあっという間、と踏んでいたのだが…、あいにくの渋滞が続き、快適な車内空間のなかは睡魔との戦いが続いた。古い車ではクラッチ操作がさぞ筋トレになったことだろう。



The Great British Rally 2022は「英国車好き」という共通項をもった仲間たちが集い、ラリーではあったが“皆でツーリングを楽しんだ”というほうが感覚的には近いかもしれない。夕食の場でも駐車場でも車談義に花が咲いたり、車とは無縁の世間話で盛り上がったり、共通項があるので初対面でも打ち解けやすい雰囲気に包まれていた。本誌編集長は自らに厳しく車好きか否かを自問自答していたようだが、終始楽しそうであったことを報告しておく。



そして、筆者は深いことを考えることなく、素直にシンプルに車が好きであることを再認識できた一泊二日だった。


文:古賀貴司(自動車王国) 写真:The Great British Rally
Words:Takashi KOGA (carkingdom) Photography:The Great British Rally

文:古賀貴司(自動車王国)

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事