まさかの本物のWRカーも? 初開催のラリーファンミーティングで遭遇した、現存していることが奇跡な車たち

Tomohiro AOYAMA

WRC(世界ラリー選手権)やJRC(全日本ラリー選手権)などのラリー競技自体をイベントとも呼ぶが、ラリー関連の「ファンイベント」となると意外に少ないのではないだろうか。せいぜいメーカー主催のモータースポーツ系ファンイベントに、ラリーのコーナーがある程度。しかし、そんな常識を破るラリーのファンイベントが富士スピードウェイで初めて開催された。そのイベント名は「RALLY FAN MEETING 2023」。自身もWRCやJRCへ参戦するウェルパインメディアが主催する、ファン参加型のラリーイベントだ。

トークを聞くだけでも十分に楽しい!


このイベントの特徴は、ラリーファンなら誰でもOKという門戸の広さだろう。富士スピードウェイという場所柄、交通手段は自家用車になりがちではあるものの、どんな車でも入場可能。レプリカカーなどのラリーカーに関係する車両は、会場で来場者も見られる展示車両として入場もできる。WRCラリー・ジャパンが22年に復活開催されてから国内でのラリーは盛り上がりを見せているものの、今回のイベントのようにラリーの魅力を伝え、ファン同士も交流でき、ラリーに関わるパーツメーカーや参戦チームも広くファンに知ってもらえる、そんなイベントは今まで開催されてこなかった。そんな現状を打破した、新しいラリーファンイベントといえるだろう。

イベントのコンテンツも、初開催とは思えないほどの豪華さだ。メインはステージでのトークショーと、ラリードライバーによる同乗走行。ほかにも各ブースのキャンペーンガールPRタイムや、展示されたWRカーとファンの車を並べて写真に収められる2ショットイベントなど、コンテンツは盛りだくさん用意されていた。





同乗走行のゲストドライバーには、日本で唯一のワールドタイトルホルダー新井敏弘選手、APRCチャンピオン川名 賢(すぐる)選手が登場。ウェルパインモータースポーツの村田康介選手とともに、パイロンを立てた広いエリアを縦横無尽に走り回って、ファンの心を鷲掴みにしていた。





ステージ上では、モータースポーツ実況でお馴染みのピエール北川アナウンサーと、ウェルパインモータースポーツで村田選手のコ・ドライバーを務める梅本まどか選手が登場。ゲストドライバーたちと繰り広げられたそのトーク内容は、オフレコ案件も含めてどれもここでしか聞けないようなことばかり。いつの間にか会場はファンの笑顔に包まれていたのが印象的だった。MCの2人も軽妙なトークでファンたちに語りかけながら、会場を大いに盛り上げていた。



存在自体が奇跡! ディープなラリーファンでも驚く車たち


そして会場のファンが見て楽しめたコンテンツが、会場内に展示駐車されたさまざまなラリー関連車両の見学だ。これは参加オーナー自らの車を展示することで、会場内のファン同士での交流を増やすため。会場はオーナーズミーティングとしても利用可能なため、レプリカカーやスバル車、トヨタ車などのオーナーズクラブに参加している貴重な車両も見られた。



そのなかでもラリーファン歴30年以上の筆者が、特に印象に残った2台を紹介しようと思う。

マツダ ファミリアGT-A


会場に到着するなり真っ先に視界に飛び込んできた、323(ファミリアの欧州名)。なんと、2桁ナンバーのワンオーナー車(!)だった。国産車初のフルタイム4WD搭載グレード「GT-X」の後期型で、この個体はスポイラーなどがレス仕様になっている競技車ベースの「GT-A」。激レア車だ。オーナーさん曰く競技にはまったく参加しないで大事に乗ってこられたとのこと。今でもふだんから乗られているようで、一緒に参加していた奥さまも「買い物に行くときにも普通に使ってますよ」と答えてくれた。スーパーにこの車がいたら、知っている人ほど驚くに違いない。



もちろんこの日集まった車の中で、唯一の323。かなりのレア車でもあるので、最近はパーツ不足も深刻なのでは? とオーナーさんにうかがったところ、「意外と同年代の、例えばNAロードスターのパーツのように流用できるものも見つかっているんです」とのこと。ロードスター自体がパーツの寄せ集めで作られている車ということもあるが、同じB6エンジンを搭載する車ということで流用ができる物もあるのだろう。いつまでパーツ生産が続くかはわからないが、323は日本車で最初にグループAへの挑戦をワークス体制で始めた名車。できる限り長く乗り続けて、維持してほしいと感じた。

スバル インプレッサWRC



車名の最後にWRCと書かれることが、ワールドラリーカーの略だとわかる人にとってはこの貴重さがすぐに理解できるだろう。この個体は、スバル製ではなく正真正銘本物のプロドライブ製ボディシェルを使った、究極のWRカーレプリカだ。1998~99年にWRCスバルワークスで使用された、S5と呼ばれるモデル。日本のナンバープレートを取得するためにエンジンを市販用EJ型に載せ替えてある以外は、ほぼWRカーそのものといえる。



日本のナンバープレートが付いていること自体に違和感を覚えるほど、見慣れない感覚。フロントフェンダー内にはブレーキキャリパー冷却用のオイルクーラーがあったり、インテリアはまんまWRカーのものだったり、リアクォーターウインドーのSUBARUロゴだったり、あの当時WRCでしか見られなかったワークスカーが目の前にあるということに、非常に興奮してしまう。ラリーファンにとっては、そのくらい特別な車なのだ。







メーター内のグラフィックも、WRカーの表示をサンプルに新規でわざわざ制作するほどのこだわり。よくぞ日本で維持してくれましたと、最大限のリスペクトを持ってオーナーさんに話をうかがった。



オーナーさんはほかにもWRC 2000(S6)も所有しているようで、このスバルの初期型WRカーのファン。「永遠の憧れ」「並のスーパーカーを買うならこっちを買う」など、筆者と同じような思いを持ったラリーファンだということが、話を聞いてわかった。世界的に見ても、現存台数が数台しかないとも言われている貴重な初期型のインプレッサWRカー。この先も大事に維持していただくことを、心から願った瞬間だった。

ラリーファンイベントがもっと広まることを願って


このほかにも、S30ダットサン 240Zのモンテカルロ仕様や、ワイドフェンダーキット装着のシトロエン DS3 WRCレプリカなど、ここでしか見られないような車種が会場では多く見られた。ラリーファンなら、ゆっくりと車を眺めながら歩くだけでも十分に楽しめる。このようなイベントが今までなかったことが不思議なくらいだが、このRALLY FAN MEETINGが今後も続いていけば参加者もどんどん増えていくに違いない。そう感じたくらい、ラリーファンにとっては魅力的な1日を過ごせた。ぜひ来年以降も継続して開催してもらいたいと思える、有意義なラリーイベントだった。




文・写真:青山朋弘 Words and Photography: Tomohiro AOYAMA

青山朋弘

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