クロノグラフを発明した天才、『ルイ・モネ』の時計|Louis Moinet TIME TO RACE

LOUIS MOINET

自動車の歴史はスピードというもっともわかりやすい性能を競う歴史であり、そのスピードを数値化する計測の歴史でもある。その計測において、クロノグラフという機構がもたらした功績は計り知れないが、意外やルイ・モネの名前を知る人は多くないかもしれない。



自動車レースとは計時の歴史だ


自動車レースの発祥は諸説あるが、記録として残っているのは1894年に開催されたパリからルーアンまでの127kmを走破するというもの。そしてその6年後にははじめての国際レースも開催されているから、人間にとって競うことは本能であり、技術革新の原動力でもあるのだろう。ところでパリからルーアンまでのレースの記録は6時間48分という記録が残っているようだ。以来、自動車レースはさまざまな系譜を辿るが、唯一変わらないのがタイムだ。つまり時間(クロノ)を記録する(グラフ)ことは自動車レースの歴史でもある。クロノグラフはそんなカー・ガイたちの情熱とともに発展してきた。

クロノグラフの発明と天才時計師


それはちょっとした事件だった。2013年、それまで定説とされていたクロノグラフの誕生年が1820年代から1816年に改訂された。1816年に制作された天体観測用クロノグラフが発見されたからだ。それは毎時21万6000振動の(針が1秒で一回転する1/60秒の計測可能)ハイビートムーヴメントだった。製作者はルイ・モネ(1768~1853)。世界で初めてクロノグラフ機構を作った偉大な時計職人であり、芸術や天文学といった様々な分野でも才能を発揮した、類稀な天才だ。



フランスに生まれ、幼い頃から趣味で時計作りを嗜んでいたそう。20歳でローマに移り、建築・彫刻・絵画を5年間学んだ。その後パリで美術アカテミーの教授を務め、様々な著名な芸術家と交流するなかで、時計への情熱が再燃する。1800年からスイスで本格的に時計製造の訓練を始めると、たちまち頭角を表し、王室御用達の時計職人として名を馳せることになる。顧客にはナポレオン・ボナパルトやトーマス・ジェファーソン、ジェームズ・モンロー、ロシア国王、フランス王妃などが名を連ねた。そして制作されたのが近年の時計史の事件ともなった、あのクロノグラフだった。

時計ブランド、ルイ・モネの誕生


その精神を宿した時計を再び世に送り出すために、ジャンマリー・シャラーが2004年にスイスのヌーシャテル州サン・ブレーズに創業したのが現在の独立時計ブランド『ルイ・モネ』だ。ルイ・モネのすべての時計は、一点物もしくは限定品として生産され、『コズミックアート』と『メカニカルワンダーズ』に分類される。多くの作品に、宇宙からの隕石や太古の素材を用いた希少なパーツを使用することも特徴だ。「独自性」「創造性」「アート&デザイン」「希少性」の4つのバリューを掲げる。

散りばめられたレースへのオマージュ


話をクロノグラフへと戻そう。クロノグラフの発明以降、人間はより精緻な単位でレースを数値化してきた。もし、いま、ここにルイ・モネが生きていたらどんなクロノグラフを誕生させているだろう。ここに紹介しているモデル、『タイム トゥ レース』は、まさにクロノグラフの発明者による「レースの時間=タイム トゥ レース」と名付けられた一本だ。

そこには自動車レースへのオマージュがあちらこちらに散りばめられる。用意されたのは往年のインターナショナルカラーであるブリティッシュグリーンに、イタリアンレッドとフレンチブルーのラバーストラップ。同様にタキメーターと針の色もインターナショナルカラーで演出される。6時位置の時分ダイヤルに表示するナンバー(1~99)はいわばゼッケンのような存在だが、カラーとナンバーの組み合わせは選択可能(既にオーダーされた組み合わせは注文不可)ゆえに、世界に1本というパーソナライズウォッチとしての魅力も兼ね備える。



さらに、モノプッシャー式のクロノグラフのプッシュボタンは大ぶりで、ドライビンググローブの上から操作可能なうえ、意匠も往年のレーシングカーの操作ペダルを彷彿とさせる。あえてスケルトンダイヤルにし、12時位置に配されたコラムホイールやクロノグラフ機構の動きを眺められるような仕上げも、人間が作り上げた“機械式ムーヴメントとエンジン”へのリスペクトを感じる。暗所では、秒針・クロノグラフ秒針・30分積算針・インナーベゼルの目盛りが発光し、そのさまは夜のドライバーズシートから、メーターパネルを望む景色のようだ。





そして世界三大デザイン賞を受賞


ルイ・モネはブランド設立からほどなくして、UNESCOやグッドデザイン賞など数々の権威ある機関・大会から30以上の表彰を受けているが、この『タイム トゥ レース』も2023年6月に世界三大デザイン賞のひとつとも呼ばれるRed Dot Design Awardを受賞している。それは類稀な天才が発明したクロノグラフが、その機能と機構の美しさから、レースに情熱を燃やすカー・ガイはもちろん、人生の時間を楽しむすべての人の時計として認められたということだろう。


TIME TO RACE タイム トゥ レース
本文でも触れているように、『タイム トゥ レース』は世界に1本しかない、パーソナライズウォッチだ。ユーザーはカラーコードと、6時位置の時分ダイヤルに表示するナンバー(1~99)を選択し、オーダーすることができる。カラーコードとナンバーの組み合わせは世界にひとつだけとされ、都合世界に1本のみの限定生産となる。暗い中で見えるダイヤルはまさにレーシングカーのメーターパネルを彷彿とさせる演出も。自動巻き(CAL.LM96)、グレード5チタン、ケース径 40.7mm、50m防水、616万円(税込)

株式会社ジーエムインターナショナル TEL:03-5828-9080


文:前田陽一郎(オクタン日本版) Words: Yoichiro MAEDA (Octane Japan)

前田陽一郎

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