ニッチ中のニッチ!? ダートロード専用スーパーカー、ランボルギーニ・ウラカン・ステラートに乗る

Octane UK

ランボルギーニが、ネーミングに闘牛以外のアプローチをとったことは、過去に数回しかなかった。「ステラート」は「ダートロード」、つまり未舗装道路の意味だ。ラグジュアリーな特注車は増加傾向にあるし、LM-002は誰もが懐かしく思い出すだろう。しかし、ダートロード専用として特別にスーパーカーを設計するというのは、ニッチ中のニッチだ。ウラカン・ステラートは、パリ・ダカール・ラリーで見られるような、埃っぽい荒れた路面用に生まれた。いや、もしかすると、月面用かもしれない。それに、畑や農道を走り回るのにも適しているし、他の目的地にも行けるかもしれない。

ランボルギーニの専門家たちによると、彼らのデザイン理念は、「勇敢」「本物」「予想外」という、3つの言葉に基づいているそうだ。ある日、イタリアを象徴するナルド・テクニカル・センターで、軍事レベルの警備体制のもとステラートが社の方針に忠実であるかどうかの調査が行われた。

その「理念」について、一言ずつ紹介しよう。レヴェントン、エゴイスタ、セスト・エレメントがアーカイブにある以上、ランボルギーニ側に恐れはほぼ無いと考えるのが妥当だろう。とは言え、大衆車向けではない車を作るには、相当な度胸が必要だ。たしかなのは、ステラートがドライバーを「勇敢」な気持ちにさせてくれることだ。非常に有能な車で、実際に“どこにでも”行けるわけではないにせよ、ロッキー山脈を横断したり、カルロス・サインツ親子と楽に競えるような、そんな自信とサポートに満ちたドライビング・エクスペリエンスを与えてくれる。タコメーターの針が4000rpmを超えるたびに、肩の後ろでオーケストラが戦いの雄叫びを上げる。

この最もイタリア的なメーカーは、ドイツ資本の傘下になり今日のような大成功を成し遂げても、その本質を頑なに守り続けてきた。ステラートの場合は、エンジニアたちはワークショップの鍵を渡され、単に「パーティーを楽しんでこい」と言われたような感触だ。彼らはどうやら、ウルスをナルド・サーキットのストラーダ・ビアンカ(ダストロード)でテストしていて、何気なくこうつぶやいたらしい。「うちのスーパーカーがここで走れたら楽しいだろうね」まさにこの地で、私が“うちのスーパーカー”に乗ってドリフトする写真をご覧あれ!



こんなデザインで開発プロセスを承認させたメーカーは、ほとんどないだろう。普通の会社なら途中で“大人な”上司がこう言うだろう。「よし、みんなビールを何杯か飲んだことだし、そろそろ仕事に戻ろうか?」と。これで先ほどの3つの言葉のひとつである「本物」の項目にもチェック完了。

それでも、ステラートは「予想外」だったろうか?ラリーモードを備えた610bhpの自然吸気V10エンジンのツーシーターが、それ以外のものになるとは思えないが、多くの人が本気で望むものであることはわかった。くぼみ、でこぼこのキャンバー、スピードバンプ、水たまり、泥、落ち葉などのある現実の世界では、真新しく、完璧に整備され、途切れることのない道路は希少なものだ。それ故に、究極の性能、独創性、高級感を持ち、テールに力を入れ続けることなく、縁石をも恐れない車を手に入れるということは、言ってみれば予想外の才能の組み合わせなのだ。歓迎すべきことではある。

ノーマルのウラカンより44mm高く、アンダーボディプロテクションを備え、フロントもリアもさらにワイドとなる。サスペンションの可動もより大きく、埃を除去した吸気のためのルーフマウントのエアスクープと、マジカルな風景を記録する内蔵カメラも装備する。ステラートは、フル装備のテストカーなら30万ポンドを超えるものの購入は“可能”で、ウラカンの中でも最も“楽しめる”バージョンだといえるだろう。購入“可能”と言っても、すでに売り切れになっていなければの話だが。


文:Nick Hendrix

Nick Hendrix

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