最新モデル以外の展示にも注力!2024年のパリモーターショーで見た変化

Tomonari SAKURAI

2年に1度の祭典であるパリモーターショー (Mondial de l’Auto 2024 - Salon Automobile Paris) が、10月14日から20日まで、パリのポルト・ドゥ・ヴェルサイユ展示場で開催された。

前回のモーターショーでは、フランスが電動自動車へと大きく舵を切った象徴として、主要な自動車メーカーが出展を取りやめ、中国をはじめとする電気自動車メーカーが目立つ展示会となっていた。有名な自動車メーカーはフランスの大手3社のみという状況だったが、さて今年はどうだろうか。

会場の入り口で渡されたポケットマップの表紙には、アルファロメオ33ストラダーレの写真が使われている。これは前回とは違い、期待が高まる。そのマップを広げてみると、使用されているホールは前回よりも広くなっているが、それでも依然として小規模だと感じた。日本のメーカーは1社もなく、メルセデス・ベンツも不在。フェラーリもなければ、英国からのアストンマーティンやベントレーもいない。やはり不安を抱きつつ、会場に足を踏み入れた。

規模が小さいものの、会場内は混み合っており、盛り上がりは予想以上だった。会場では、アルピーヌやダチアを含むルノーグループ、プジョーやシトロエンを擁するステランティスが出展。今回は同じ傘下にあるアルファロメオも参加している。BMWはミニと共に出展し、フォルクスワーゲングループもアウディやシュコダを連れて展示を行っている。

ステランティスの一員としてアルファロメオも出展。33ストラダーレを披露した。

BMWは新たなステージへ。ヴィジョン・ノイエ・クラッセ。

BMWの特徴であるキドニーグリルの新解釈で挑んでいる。ヴィジョン・ノイエ・クラッセX。

フランスの自動車メーカーは地元のショーということもあり、パリモーターショーで初公開のモデルを用意していた。ルノーは、最近公道でも見かけるサンクに加え、初代のデザインを受け継いだトゥインゴやキャトルを初公開。最新の電気自動車でありながらも、歴代のデザインを受け継ぐスタイルが採用されており、非常に興味深い。

ルノーでは、すでに市販が始まっている5(サンク)をはじめ過去のルノーの車両を受け継いだデザインで電動化したモデルを初公開。

R5のいくつかのバリエーションを展示。

R4を初公開。

初代トゥインゴを電動化するサービスかと思いきや、これは電動自動車として新しくデザインされたもの。

ロゴは液晶で映像化されている。

こちらはコンセプトとして展示されたR17。

アルピーヌは、エアロキットで武装した110台限定のA110 Rウルティメを初公開。また、自社開発の3.5L V6水素燃焼エンジンを搭載し、740馬力にまで引き上げたアルペングロー Hy6も初披露された。

このパリで初公開の車両を何台も登場させたアルピーヌのブース。

限定110台のアルピーヌA110R ウルティメ。アルピーヌレーシングの技術を結集。

345馬力まで引き上げられ、エアロパーツでダウンフォースも増している。何より話題はルノーグループで過去最高の高額な価格だ。

こちらも初公開。プロトタイプレーシングカー アルペングローHy6。

独自開発の3.5リッターV6水素燃料エンジン。2基のターボを備えて740馬力を発生する。

シトロエンはC5エアクロス・コンセプト、プジョーはE408やインセプションコンセプトを初公開している。

初公開されたC5エアクロス・コンセプト。

展示されたコンセプトカーはすでに公開されていた505からインスパイアーされたノスタルジックなスタイルから脱却。

室内も直線的なデザインが特徴的。

最新モデルの発表が続く中、会場には自動車100年の歴史を展示するスペースもあった。1891年のプジョー Type3からT型フォード、2CVやDS、初代プリウス、そしてEVのシトロエン AMIまでが展示された。

自動車の歴史100年から。1891年のプジョー Type3。

1949〜90年の間に510万台生産された2CV。

ハイブリッドの市販車第一号プリウスも歴史の1つ。

そして現代ではシトロエンAMIで締めくくる。

また、映画に登場する車たちをテーマにしたスペースも設けられており、世代によって反応する車が異なるのが面白かった。『スタスキー&ハッチ』や『マイアミ・バイス』に反応する私と同世代、『ジュラシック・パーク』に登場するジープに反応する若い世代、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はどの世代にも人気があるようだ。

映画の中の車たちの展示から「TAXI」のプジョー406。

ナイトライダーからナイト2000。

マイアミバイスからトム・マクバーニーのデイトナスパイダー。

フランス車デロリアンベースのタイムマシン。

その横には、高速道路を管理するヴィンシのブースがあり、高速道路での作業中に事故に遭った車両が展示されていた。高速道路での安全運転や、作業車の仕事がいかに命がけであるかを強調した展示は、とても印象深かった。

高速道路の作業車。それも、事故に遭ったものばかりを展示。

国家憲兵隊の高速機動隊のA110。

かつては世界中の車が一堂に集まる「車の祭典」として知られたモーターショーだが、昨今のパリモーターショーはやや趣が変わってきている。それでも、車業界関係者や多くの来場者を見ていると、こういったショーが廃れていくという噂はまだ先の話のように感じた。電動自動車一本なのか、水素燃料が主流となるのか、それとも新しい技術が誕生するのか――車の未来はまだ見えにくいが、パリモーターショーはその狭間で揺れ動きつつも、注目を集め、盛り上がりを失わないショーだと感じた。

日本の企業で唯一ブースを構えたTHK。THK社の技術が結集して作られたラグジュアリーEVカーLSR-05の注目度は高かった。この車については次回もう少し掘り下げていきたい。


写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

櫻井朋成

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