フランスのマルシェに車好きが集う|Vivre aux champs Philippe - Section véhicules Anciens

Tomonari SAKURAI

パリ西方の近郊にある街、ラ・ガレンヌ・コロンブ。この街にも車愛好家のクラブがあり、毎月第3日曜日の朝にミーティングが開催される。会場となるのは、普段はマルシェが行われる広場。フランス各地で見られるような、マルシェ用に屋根が設けられた場所だ。一応、旧車愛好家向けの集まりではあるが、車好きであれば誰でも集まれるという非常に寛容なミーティングだ。特に主催者やスタッフが見当たらないのも特徴で、参加者は勝手に入ってきて、勝手に停めて、仲間とワイワイ楽しむという感じだ。

この日もバカンスシーズンということもあり、集まる車の数は限られていた。こちらも特に期待せずに向かったわけだが、ちょうど僕が到着したのと同じ頃、ジネッタ15がやって来た。ジネッタをフランスで見かけるのは稀だ。モンレリーサーキットの大きなイベントでは見かけるが、こういった小さなミーティングに参加しているジネッタは非常に珍しい。それだけ、この町の車好きの層が厚いのかもしれない。ロータス・ヨーロッパS2もいて、なかなか楽しそうな雰囲気だ。

フランスでは見かけるのが珍しいジネッタ。モデルはG15だ。1000ccながらグラスファイバーボディで車重550kgという軽さ。まさにライトウェイトスポーツ。

その横にはロータス・ヨーロッパS2。

広場の周辺にあるカフェやレストランはバカンス中でお休みだったが、パン屋さんは営業していた。遅い朝食のためか、ランチの準備でパンを買いに来た人たちが足を止めて車を眺めているという、のどかな光景が広がっていた。

屋根付きの広場は雨の日には安心だが、この日のように好天に恵まれると少し暗い。8月とはいえ、この日の朝の気温は11度。バイクでTシャツの上にレザージャケットを着て走っていると、もう寒いくらいだ。だからというわけではないが、一台だけ、日の当たる屋根の外に停まっている車があった。それがまたひときわ輝いて見えた。フルレストアされた美しいボディだけでなく、あちこちのメッキパーツも輝いている。その車は、戦前の1920年代のルノーNNだった。ボンネットを開け、ピカピカに磨かれたエンジンルームも披露されていた。

1920年代のルノーNN。何とも美しいコンディション。

951cc4気筒サイドバルブエンジンも美しくレストアされている。

この当時からルノーらしい曲線を描く。リアビューも美しい。

ボンネットと合わせてトランクルームも開けてあるのかと思いきや、予備シートなのだ。

エンジンの後ろ側面にラジエターを持つルノーならではのビュー。エンジンのメカニックさがまたたまらなく美しい。

一列にはポルシェが集まっており、ナローボディの912から現行の911GT3や718ケイマンGT4までが揃っていた。

新旧のポルシェが並ぶ。

912からGT3まで。

その中でも、今回一番注目を集めていたのは、メルセデス・ベンツの280SEクーペ、W111だ。ここに来る途中、僕の前を走っていたその車に、しばらく見惚れながらついていったほどだ。何とも開放感のあるリアウィンドウと、エレガントでゴージャスなシルエットが人を魅了する。ブラックボディにルージュなインテリアが映えて、まさに美しい車だった。

300SLそして...

280SEクーペが今回一番人気。

常に人が集まった。

エンジンルームも隅々まで手が入れられている。

外装の黒に対して赤いインテリアがとても美しい。

バカンス中のとても静かなミーティングだったが、それでも充実していて、集まった人々は皆、ワクワクしていた。

普段ならこの会場を埋め尽くす車たちが集まるのだろう。バカンス中のミーティングは静かにそれでも濃い。教会の鐘の音をバックに静かに盛り上がるのだ。


写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

Tomonari SAKURAI

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事