アストンマーティンは、ラグジュアリーブランドとして認知されている。が、今回登場したニューヴァンテージはGTのDB11との明確な差別化を図り、 思いっきりスポーツカーに振ったという。DB11から新たに投入されたボンド接着式アルミニウム構造のシャシーを採用するが、 コンポーネントの約70は新設計されたもの。そのパフォーマンスを探るべく、国際試乗会に参加してきた。
試乗前のブリーフィングで開発ポイントを聞くだけでも「走りへのこだわり」が伺える。たとえば軽量化。スポーツカーならマスト要件、最近では燃費のためスポーツカーならずとも注力するところ。ヴァンテージは、現行モデルより約130Kgも軽い1530Kgのウェイトを実現。軽さは七難隠す、と言っても過言でないほど、速さやハンドリングへの貢献度は高い。そして、ボディ剛性も、ねじり剛性は現行の約1.5倍と大幅に高められた。
アストン初採用となる「Eディファレンシャル」は、左右のタイヤの回転差を制御してトラクション性能を向上するのみならず、旋回性能を高めるベクタリング効果も発揮する。そして、シャシーでもっとも注目すべきは、ダイレクトなハンドリングのために、リヤのサブフレームを、ブッシュを介さずボディに剛着している点だ。
さて、試乗ステージとなったのは、ポルトガルのアルガルベサーキット。限界域まで試せるクローズドコースでの試乗は、自信の表れに他ならないだろう。しかも、完全なフリー走行。そして、電子デバイスESPオフも解禁!! 期待が高まらずにはいられない。
ヴァンテージもDB11同様、AMG製のV8 4lツインターボエンジンを搭載する。が、ウェットサンプを採用、そしてキャリブレーションを行い、サウンド含めアストン流にチューニングが施されている。375kW/685Nmというパワースペックに、最初は様子を見ながら相手の出方を伺う。こんな強烈なトルクなのにFRの二輪駆動じゃさぞかしトリッキーなんじゃないかと先入観を持っても仕方ないだろう。しかも、イギリス車はジギルとハイドよろしく二面性を持つという印象が強い。ところが。シャープでありながら、クルマの動きがとっても分かりやすく、きわめて運転しやすい。トランスミッションをリヤに搭載するトランスアクスル方式で前後重量配分が50:50というバランスの良さに加え、ドライバーがクルマの回転軸付近に座るパッケージングとなっているためだ。
コーナーの入り口でステアリングを切り込むと、微少舵角からリニアに反応し、アンダーステアもほとんど見られない素直な操縦性。ステアリングギヤ比が過剰にクイックじゃない点も操作性に優れ好印象。ステア操作によってヨーが発生してからクルマの一挙手一投足を面白いほどダイレクトに感じる。ハードブレーキからステアまではリヤが安定していて、その後ロールしながらフロントに追従するように動き、アクセルオンで路面を豪快に蹴っ飛ばす。立ち上がりでは、Eデフの恩恵もあり旋回加速の領域から高いトラクション性能を発揮し、よほどアクセルを踏み過ぎたりラフな操作をしなければ、テールスライドにナーバスになるシーンもない。そして、リヤがスキッドしてもコントロール性に優れる。
ストレートで加速していくと、低回転域から強大なトルクを発揮するが、安定しているせいか、意外とスピード感がない。もっとも、エンドで260Km/h近くに達しているので、速さは十分なのだが。そしてパワーに見合ったブレーキ性能も備える。この安定感、ダウンフォースも奏功しているのだろう。いや、ストレート以上に、高速コーナーの安定性からも伺える。実はこのサーキット、かなりトリッキーなコースレイアウトとなっており、空しか見えない上りの状態からの下りのコーナーとか、下りながらの4速全開コーナーとか、気持ち的にアクセルを戻したくなるようなシーンが多々ある。が、慣れてきて意を決して踏んでいくと、その方が安定するのだ。
シンプルでクリーンなエクスリテアデザインも、すべて空力性能向上を考えてデザインされたものだという。造形的な美しさと機能美が見事に融合されている。
新型ヴァンテージは、すべての技術的要素が絶妙にシンクロし、ホンキでサーキットを走っても十分に満足させてくれるパフォーマンスを備える。グランドツーリングカーからリアルスポーツカーへと昇華していた。
アストンマーティンヴァンテージ
ボディーサイズ:4,465mm×1,942mm×1,273mm
ホイールベース: 2,704mm
車重: 1,530kg駆動方式:FR 変速機: ZF製8速AT
エンジン型式: オールアロイ製 DOHC 4.0リッター・ツインターボV8
排気量: 4,735cc 最高出力: 510PS / 503BHP / 375kW @ 6,000rpm
最大トルク: 685Nm / 2,000~5,000rpm
本体価格: 1980万円(税抜)
文:佐藤久実 写真:アストンマーティン
Words:Kumi SATO Images:Aston Martin
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