マクラーレンF1気分を手頃に楽しむ方法│共通点を持つ隠れた1台

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マトラ・ムレーナにはマクラーレンF1との共通点がある。伝説的なコンストラクターが手掛けたミドシップスポーツカーであり、三人が横に並んで座るというユニークなレイアウトも同じだ。

宇宙関連やミサイルのメーカーから自動車に進出したマトラは、精巧なレーシングカーを造ることでよく知られ、1960~70年代にはヨーロッパのサーキットで数々の成功を収めた。その技術力を生かしてロードカーにも進出し、ミドエンジン一筋に歩み、ジェットや先進的なM530、スタイリッシュなバゲーラを発表した。

資金は潤沢ではなく、業務提携を結んでいたプ
ジョーの関心も徐々に失われていくなか、しかしデザインでもエンジニアリングでも最先端をいく企業だった。フランス最大のヒット作であるルノー・エスパスの開発を担ったことでも知られている。

そのマトラにとって、単独メーカーとしての最後のモデルとなったのが、1980年のパリ・サロンで発表した高性能の小型スポーツカー、ムレーナだ。

ムレーナは、シャシーの大半や横並び3座席というシートレイアウトなどをバゲーラから引き継いでいたが、頭痛の種だった製造品質は改善されていた。また、世界で初めてシャシーに溶融亜鉛めっきを採用。それをモダンで滑らかなボディで覆い、CD=0.328を誇った。

シャシーに関しては、優れたセットアップによって高いロードホールディング性能を実現し、それは高出力のエンジンにも充分に対応できるレベルに仕上がっていた。しかし、ベースの1.6リッターエンジンの出力はわずか92bhpにすぎず、シムカ・タゴーラ用エンジンを搭載した2.2リッターモデルでも118bhpと、アルピーヌA310 やポルシェ924 と同じ価格帯の車としては少々物足りない数字だ。救いは、5段ギアボックスで少ないパワーを最大限に生かせることだった。

16バルブエンジンで180bhpに向上させる"4S"バージョンの計画もあったが、プジョーの反対にあって頓挫。大きくパワーアップする数々のオプションも、経営状態の悪化で実現しなかった。最終的に落ち着いたのが、マトラが自らパワーアップを施して142bhpにアップした"S"だ。これは、ストックの2.2エンジンをベースにホットなカムシャフトやソレックス製ツインキャブレター、フリーフロー・エグゾーストの"パワーアップキット"を組み込んだものだ。当初は後付けのオプションキットとして発売されたが、のちに単独のモデルとなった。ようやくライバルを上回るパフォーマンスを備えたムレーナだったが、それも束の間に終わる。

プジョーは1983年末にムレーナの生産中止を決め、その直後にマトラとの提携も解消した。ムレーナの生産は、わずか1万680台で終了したため、現在では目にする機会も少ない。

イギリスで販売されたのはすべて左ハンドルで数百台にとどまるから、国内では今でもめずらしい部類に入り、ヨーロッパ大陸で探すほうが状態のよいものが見つかるだろう。

風変わりな車が好みで、興味をそそられたエンスージアストから質問攻めにあうのが好きな人、そして、いつも乗客が三人だという人には、ムレーナ以上にぴったりの車はない。


[注意点]
・12枚のボディパネルは高品質のFRP 製。ただし、広範囲にわたる傷やひび割れ、ふくらみがないか、よく調べる必要がある。その場合、いったん塗装を落として塗り直す以外に手がない。

・ボディパネルは錆びないが、スチール製のシャシーは錆びる。亜鉛メッキされた状態で出荷されたので、この時期の大半の車種よりはよい状態で残っているが、現在までに腐食が進んでいる可能性はある。

・テールランプやリアのトレーリングアームなどはムレーナ独自のパーツだ。しかし、サポート態勢は意外に充実している。ヨーロッパのスペシャリストやイギリスのマトラ・エンスージアスト・クラブが頼りになる。

・電気系統は信頼性の低さで有名。時間の経過とともにコネクターの多くが脆くなる。


・格納式ヘッドライトはシンプルなバキューム式で、一般に信頼性は高い。トラブルの多
くはエア漏れが原因で、エンジンを切ったあとにライトを開閉することで起きる。

・エンジンは1.6、2.2リッターともシンプルで信頼性も高い。定期的なオイル交換さえ怠
らなければ、ほぼトラブル知らずだ。ただし、冷却系をよい状態に保つことが必須で、オーバーヒートを起こすと取り返しのつかない事態に陥りかねない。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO( Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Matthew Hayward

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