マンセルに勝利をもたらした レッド5がオークションに

Bonhams

近年で最も重要なF1マシンが、今年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで開催されるボナムスのオークションに出品される。ナイジェル・マンセルに1992 年のタイトルをもたらしたウィリアムズFW14Bだ。“レッドファイブ”は、当時最も技術的に進んだF1 マシンであり、史上稀に見る圧倒的な強さでシーズンを支配した。
 
1990 年代初頭、空前の進歩を遂げたテクノロジーと巧みな戦略により、F1は刺激的な時代に突入した(ただし、チーム予算は際限なく膨らみ、持続可能性はなかった)。なかでも興味深いのが1992 年シーズンだ。エイドリアン・ニューウェイがデザインしたウィリアムズは、油圧制御のフルアクティブ・サスペンションと、6段のセミオートマティック・ギアボックス、トラクションコントロールシステムを擁し、他のチームのはるか先を行っていた。マクラーレンも同様のテクノロジーを導入していたが、あのアイルトン・セナを持ってしても歯が立たなかった。
 
マンセルは後続より2 秒も速いラップタイムを頻繁に叩き出し、最終的に1シーズンで9勝を挙げ、5戦を残して早くもタイトル獲得を決めた。イギリス人ドライバーがF1チャンピオンに輝くのは1976年の故ジェームズ・ハント以来であり、セナが持っていた1シーズン最多勝利記録の8勝を塗り替える快挙だった。
 
マンセルは写真のシャシーナンバー08 のステアリングを握ってそのうち5 勝を挙げた。それ以降のシーズンはチームメートのリカルド・パトレーゼがドライブし、かなりのポイントを稼いでいる。
 
FW14B/08は現在も見た目に素晴らしいだけでなく、機能的にも万全だ。しばらくはウィリアムズ・グランプリ・エンジニアリングが管理していたが、のちに個人オーナーが買い取り、同様の非常に厳しい基準で維持してきた。数週間前に走行したばかりで、3.5リッターV10ルノーRS3エンジンは甲高い咆哮を上げ、複雑なアクティブ・サスペンションも完璧に作動し、まったく衰えていないことが確認されている。これでレースをする勇気のある者はいるだろうか。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA

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