バラバラに砕かれた車・・・その正体は?│「一瞬を凍りつかせる」技術に迫る

M.A.D.Gallery



「写真はある一瞬を切り取るものであるのに対し、Disintegratingシリーズはいずれも一瞬を創造したもの」、とファビアンはいう。「このイメージの中で皆さんが目にしているものは、実際の世界に存在したことがありません。車が粉々に砕け散るように見えるものは、実際のところ、何百枚もの個別のイメージを組み合わせて人工的に作り出した「瞬間」です。 一瞬を創造する、というのはユニークな喜びに満ちています...一瞬を凍りつかせることは感覚を麻痺させるのと似ています」

この作品から見て取れるのは、爆発したクラシックスポーツ カーの姿だ。深い感動を残す印象的なガルウイングドアのメルセデスベンツ 300 SLR Uhlenhaut Coupé (1954)、流線型が象徴的な黒のジャガー E-Type (1961)、そして、官能的な曲線美に心を奪われるフェラーリ 330 P4 (1967)。すべての作品を見る

ファビアンはまず、個々の部品が収まるであろう位置を紙の上にスケッチする。そして、スケールモデルをまさに「ばらばら」に解体していくのだ。ボディから小さなネジに至るまで。それぞれの車には1000個以上の部品がある。

その後、最初のスケッチをもとに、細い針と糸を使い個々の部品を決まった位置に置いていく。 細心の注意を払いながら各ショットのアングルを決めたあと、それぞれに適した照明を設置し、部品を写真に収める。Disintegratingのイメージを作り出すために、彼は気の遠くなるような膨大な枚数の写真を撮った。



そして無数の写真を合成し、1枚の写真を製作するための後処理に掛けられる。基準点となるのは車輪。Photoshopを使いあらゆる部品を1枚のレイヤー(マスク)へと落とし込み、切り取り、最終イメージへと貼り付けていく。

「あるほんの一瞬を切り取ったようなイメージを作成するために、2ヵ月を費やしました。どのモデルも複雑な構造で、車の解体にはそれぞれ1日以上かかっています。とはいえ、少年時代に誰もが夢中になった世界です。 細部を分析する過程は楽しくもあり、解体ではさまざまな発見がありました。タマネギの皮をむくような感じですね」

しかし、彼はこうも述べている。「一番手強かったのはカメラ、レンズ、そして照明のセッティングでした。美しい写真が撮れないと、それはもうストレスがたまりましたから!」
 

次回は、Hatchシリーズ「殻から生まれるフェラーリ250GTO」をご紹介。

オクタン日本版編集部

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事