実用性を完全に無視!見る人を驚嘆させた地を這うようなデザインコンセプト

Photo: Rainer Schlegelmilch

1970年代のスーパーカーで流行したウェッジシェイプの先陣を切ったモデルといえば、1968年のベルトーネ/アルファロメオ・カラボ、1970年のピニンファリーナ/フェラーリ・モデューロ、そして、1969年のピニンファリーナ/フェラーリ512Sベルリネッタ・スペチアーレだ。この3台が登場してからの進歩の早さは驚異的で、1971年発表のランボルギーニ・カウンタックが3年後には発売されたのである。

ついにこうした非現実的な車が実際に顧客の手に渡ることになったのだ。耐久レーシングカーとして作られたフェラーリ512Sは、ポルシェ917の影に隠れ、目立った活躍はあまりなかった。しかし、競技生命が短く終わったがために、5.0リッターV12エンジンとともにシャシーが残り、ピニンファリーナのコンセプトカー製作に最適の素材となったのである。スタイリングを手掛けたのは、当時ピニンファリーナで短期間チーフデザイナーを務めていたフィリッポ・サピーノ。彼の描いたベルリネッタ・スペチアーレは地を這うような見事なプロポーションで、明るいイエローがインパクトを一層強めていた。この鮮やかな色は、その後のスーパーカーにおけるトレードマークとなった。



コクピットは一枚のガラスで出来たキャノピーで、前方を支点としてコックピット全体が開閉する仕組みとなっている。リアのエンジンカバーには黒い冷却用ダクトが4列並んでいる。インテリアは機能性一辺倒だ。シートは黒いプラスチックと赤いタータンチェックのバケットで、身動きができないほど狭かった。ショーカーなので実際に走行する予定はなく、純粋に形だけが追求された。後方視界なども考慮されることがなかった。

そんな実用性を無視したデザインは、1969年のトリノ・モーターショーで訪問者を驚嘆させた。フェラーリにとっては、1960年代の曲線美から、エッジの鋭い新たな1970年代へと移行する転機となり、その後登場する365GT4や512BBの先駆けとなった。現在はフランスの自動車博物館に展示されている。

オクタン日本版編集部

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