1963 Jaguar E Type Lightweight re-creation
ここに1台のジャガーEタイプ・ライトウェイトがある。この車両は1960年代に生産された本物の12台ではなく、2014年にジャガーが再生産した6台でもない。近年になって米国で組み上げられたリクリエーションだ。しかし、徹底的に「本物」を再現するべくこだわり抜かれている点において、注目すべき1台であるといえる。この美しいEタイプの詳細をご説明しよう。
2014年8月に、ブラウンズレーンの旧ジャガー本社工場で、まったくの新車のライトウェイトEタイプが6台だけ再生産されたことは大きなニュースとなった。ジャガーEタイプのライトウェイト・レーシングモデルは、1963年から64年にかけて18台製造される予定だったが、事情により完成したのはそのうちの12台だけだった。しかし、近年になり完成されなかった6台が再生産され、それらのシャシーナンバーには、1963年に用意されながら、使われずにいた番号が振り当てられた。
ここにあるライトウェイトEタイプは、1963 年から64 年にかけて生産された12 台とも、ジャガーのファクトリーが再生産した6 台とも別物の車両だ。1 9 63 年式のシリーズ1 ロードスターをベースに、米国カリフォルニアで2007 年頃に組み上げられた車で、2010 年に日本にやってきた。ジャガーがシャシーから再創造したライトウェイトE タイプとは異なり、1963年式の車両をベースとしているため、日本でもナンバーを取得しての公道走行が可能だ。しかし、到着時はボディのチリが合わず、塗装も雑であったことから、日本のジャガー・スペシャリストは、この車を本物のライトウェイトE タイプに近づけるべく、外装、内装、エンジン、すべての部分に手を入れた。
ライトウェイトEタイプを再現する上で重要なポイントは4つあったという。ひとつ目は、モノコックまで含め、ボディがフルアルミ製であること。二つ目は、レーシングエンジンに使用されていたワイドアングルヘッドを装着していること。三つ目は、エンジンがアルミシリンダーブロックであること。そして、四つ目はルーカス製のインジェクションを装着していること。エンジンだけは耐久性の観点でスチールブロックが採用されたが、それ以外の部分については可能な限りオリジナルのライトウェイトEタイプの仕様が再現された。
まず、もっとも重要なのがアルミ製ボディである。1963年に生産されたライトウェイトE タイプのボディを手掛けたRSパネルズが製作したボディパネルを使用した。これはジャガーのファクトリーが再生産した6台にも使われた「本物」のボディである。鈑金塗装はわたびき自動車が手がけ、ボディカラーはクリームに仕上げられた。
シートも、日本に来た当時はノーマル仕様だったが、ライトウエイトEタイプ用のものに置き換えられた。ステアリングはオリジナルの3.8の物を使用。当時は競技用車両にもノーマルと共通のステアリングが採用されていたが、これが今となっては入手しにくいパーツのひとつとなっているという。
エンジンにはワイドアングルヘッドと、ルーカスのインジェクションを装着。このインジェクションは高価な上に気圧の変化に弱く、公道ラリーなどには不向きである。リアリティを追求するためにインジェクションを採用したが、オーナーの要望によってはキャブレターに変更することもできるという。実際、ジャガーのファクトリーが再生産した6台も、キャブレターかインジェクションかを選べるようになっていた。
材料が揃い、いざ組み上げという段階になったとき、苦慮した点がひとつあったという。それは、どの時代のライトウェイトEタイプに近づけるか、というところである。1963年〜64年にかけてジャガーのファクトリーを出た12台のライトウェイトEタイプは、プライベートチームに渡ったあと、それぞれ改良が施されたため、時代によってデザインに差異がある。市販開始当時は、ベースとなったEタイプ・ロードスターのスタイルのままだったが、スピードを追求する過程で、タイヤはより太くなり、車高は低く抑えられ、リアフェンダーの盛り上がりも大きくなっていった。このリクリエーションには、デビューから少し経った、進化の過渡期にみられたスタイルが踏襲された。アメリカから日本に来た時よりも、少しだけリアフェンダーが盛り上がった形状になっているという。
このライトウェイトE タイプは、たしかにリクリエーションだ。だが、ジャガーが再生産したライトウェイトとの違いは「誰が作ったか」というところのみ。1963 年当時と同じボディを架装し、同等のスペックを誇り、公道を走行することも可能なこのライトウェイトE タイプは、価値ある1 台と呼べるだろう。
写真:デレック槇島 Photography:Derek MAKISHIMA
撮影協力:Jaguaria/株式会社ワイズ
HP:www.jaguaria.com
2024.04.07
フランス・ミュールーズにある世界最大規模の自動車博物館を探訪|560台 ...
紡績王シュルンプ兄弟によるコレクションが展示される国立自動車博物館。その後半は弟フリッツの車、特にレースへの情熱で集められたレーシングカーのコレクションを中心に紹介していく。自らブガッティType35 ...
2024.04.12
イタリアを代表する御曹司が特注した、ミリタリー仕様のフェラーリ458イ ...
イタリアを代表する華麗なる一族といえば、フィアットを創業したアニェッリ家であろう。フィアット社を通じて1969年にはフェラーリとランチアを、1986年にはアルファロメオを、そして2009年にはクライス ...
2024.04.16
モーニングクルーズ ロータスエリートミーティング&オールドロータス|新 ...
代官山 蔦屋書店で毎月第2日曜日に開催しているモーニングクルーズ。4月14日はロータスエリートミーティングとジョインし、オールドロータスをテーマに開催された。(ここで指す「エリート」は「初代エリート」 ...
2024.04.11
モデナで作られるマセラティ純血エンジンを搭載した名車たち
初開催のフォーミュラE東京大会で衝撃的な優勝を遂げてからまだ1週間と経っていないのに、今度は独自開発したV6エンジンに的を絞ったサーキット試乗会を行なうというのだから、最近のマセラティはなんともアグレ ...
2024.04.08
海外にも多くのファンを持つ「元祖・COOL JAPAN」|モデルファク ...
ポルシェやフェラーリの名前は知っていても、モーガンやパガーニの名前を知らない“クルマ好き”はいる。模型の世界でも、タミヤや京商の名前は知っていても「モデルファクトリーヒロ」の名 ...
2024.04.12
連載:アナログ時代のクルマたち|Vol.24 ポルシェ356Aスピード ...
ポルシェの名が付くスポーツカーが誕生したのは第2次世界大戦後のことである。その基本構造が、同じポルシェ博士が開発をしたフォルクスワーゲン・ビートルと同じだったことから、“ビタミン剤を飲み過 ...
2024.03.29
ランボルギーニ、その60年はV12と共にあり|60 Years of ...
ランボルギーニの起源にまつわる物語はよく知られている。イタリアン・エキゾティックの世界で新参者のフェルッチョが注目を集めるためには、フェラーリに匹敵するエンジンを持たねばならなかった。そこで彼は世界最 ...