真に特別なロールス・ロイスがオーナーに納車される瞬間に立ち会う

Photography:Shinsaku YANO、Cornes Motors LTD. 

ロールス・ロイスは、車として特別である。中でも限定で創られる希少なモデルには、何にも代えがたい魅力がある。そのキーをオーナーの手に渡す特別な機会は、ディーラースタッフの暖かい工夫で演出されていた。

大阪の中心地に位置するコーンズコレクション梅田ギャラリーには、朝早くから特別な納車準備に取り掛かる多くのスタッフの姿があった。ガラス張りのショールームは、この日だけはロールス・ロイスのワードマークがあしらわれたシートで覆われ、内部が見えなくなっていた。室内で行われていたのは、照明やBGMの調整や花束の贈りかたなど。すべては特別な1台を大切なお客様に納めるための準備であった。主人公であるオーナーは夕刻に梅田ギャラリーを訪れ、サプライズとも言える歓迎を受けて愛車に乗り込む。その車こそ世界でわずか20台の限定車、日本では唯一となるロールス・ロイス ファントムテンパス コレクションである。

幸運にもこのTEMPUSを手に入れられたオーナーは、複数のロールス・ロイスを、ご自身で運転を楽しむために保有されている。ロールス・ロイス・モーター・カーズ大阪のセールスマネージャーへの信頼は厚く、多くのことを任せていただけるという。
 
テンパス コレクションの意匠は、天文現象のパルサー(Pulsar)からインスピレーションを受けている。宇宙の巨人とも呼ばれるパルサーは1967年に英国ケンブリッジの天文学者ジョスリン・ベルによって発見されたもので、規則的な電磁波を放出しながら視界に入るすべてのものを照らし出すという。宇宙の灯台としても知られるパルサーは、現存する最も正確な宇宙時計として常に時を刻んでいるのだ。
 
歴史的にも人間は強い意思で時間の支配に挑んできたが、果たして時が止まることは決してなく、また誰にも止めることはできなかった。このファントム テンパス コレクションでは、あえて「時のない世界」を展開し、時間の制約を排除した特殊な空間を創り出すことをコンセプトとした。「時間をどう活かすのか」。ファントム テンパス コレクションは、自らのパワーで世界を創り上げる人のための1台なのだ。
 
夜のとばりが降り始めたころがテンパスに乗り込むには最適だ。光ファイバーによる照明と複雑な刺繍が組み合わされた「パルサー・ヘッドライナー」が採用されたインテリアが、天体から降り注ぐ美しい星空を表現してくれる。宇宙のディスプレイはサイドパネルまで広がっており、パーフォレーション(Perforations)製法によりドアの内張りには渦を巻く星雲のライトパターンが描かれている。イルミネーションが点灯せずとも、深みのあるレザー・コントラストにより、幻想的なムードを醸し出してくれるのだ。
 
パッセンジャーシートのフロントフェイシアには100本のアルミニウム柱が配される。"時間"と対峙する"静止"を「フローズン・フロウ・オブ・タイム(Frozen Flow of Time)」として表現するこのアートワークは、時間からの自由を表現するために、あえて時計をデザインから除いている。アルミ板1枚から削り出された100本の支柱にはブラックアルマイト処理が施され、パルサーの自転周期である1億年を表現しているのだ。それぞれが美しく光を反射するように職工の手によって丁寧に研き上げられた100本の支柱は、デザインとして固定されているが、波紋が美しく流れるように映るから不思議である。
 
ファントム テンパスには、2020年にロールス・ロイスが「ハウス・オブ・ラグジュアリー」への進化を発表したときに展開された2 次元ロゴがインテリアに用意されている。またボンネット・マスコットの台座には、オーナー自身が選んだ日付と場所を刻印することが可能で、時間を超えた思い出を愛車に刻むこともできるのだ。また「テンパス・シャンパン・チェスト( Tempus Champagne Chest )」も美しい。ハンドペイントでパルサーが描かれたテーブル。その下にはシャンパンとキャビアを冷やす冷蔵ルームがあり、V12エンジンのシリンダーをモチーフにしたクリスタル製シャンパンフルート4 脚と、マザーオブパールのキャビアスプーンが収められている。
 
このテンパスは発表時点で、20台すべてがソールドアウトしたという。
 
ロールス・ロイスはオーセンティックなBespokeを求めるカスタマーのために、常にコーチビルド(COACH BUILD)を提案してきたが、テンパス コレクションを手に入れたオーナーは、そのプロセスを少しだけショートカットすることができたのかもしれない。ただし世界にわずか20台という希少性は何にも代えがたいものである。
 
乗車フィールは最新ロールス・ロイスそのものだ。だがこのインテリアに包まれていると宇宙空間にやさしく抱かれたような感覚を覚えてくる。

市内の、とある路地で。大阪は商いの街だけあって、市内中心部の船場や本町付近にはちょっとした歴史的建造物がまだ多く残っている。ただしファントムはどんなヘリテージに勝る威厳を放つ。
 
ダッシュボードに刻まれた「The distinction between past, present, and future is only a stubbornly persistent illusion(過去、現在、そして未来の区別は。幻想にすぎない)」はアインシュタインの言葉。究極のラグジュアリィはもはや哲学。オーナーにしか見えないこの世界こそ、ホンモノの贅沢と言えるのだろう。

文:堀江史朗(オクタン日本版) 写真:矢野晋作、コーンズ・モータース株式会社  
取材協力:ロールス・ロイス・モーター・カーズ大阪
Words:Shiro HORIE(Octane Japan) Photography:Shinsaku YANO、Cornes Motors LTD. 
Cooperation:ROLLS-ROYCE MOTOR CARS OSAKA

ロールス・ロイス・モーター・カーズ大阪
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オクタン日本版編集部

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