名高いグッゲンハイム美術館の全フロアが、総勢38台の名車で埋め尽くされる|「MOTION Autos Art Architecture」展

Pablo Gómez-Ogando / Norman Foster Foundation

建築家ノーマン・フォスターが企画した特別展がスペインで9月18日まで開催中だ。今や絶滅の危機にあるもの―自動車―を記念する内容だ。オープニングナイトに招待されたスティーブン・アーチャーがレポートする。



クラシックカーに関するワールドクラスの企画展は、もはや目新しいものではない。素晴らしい専門の博物館も世界中にあって、エンスージアストを楽しませている。しかし時折、展示の目的や内容、まとめ方で、従来の水準を一変するような展覧会がある。4月にスペインで始まった「モーション:自動車、芸術、建築」の場合は、3つの要素がすべて揃っていた。

ある意味、驚くにはあたらない。これを企画したのは、建築家のノーマン・フォスター卿なのだ。ロンドンの通称“ガーキン”や、香港のHSBC本店ビル、フランスのミヨー高架橋など、名高い建築物を数多く手がけている。車との関連では、師であるリチャード・バックミンスター・フラーが発明した驚くべきダイマクシオンを再生したことが有名だ。それだけでなく、フォスターは自身のガレージに多数の車を所有し、この企画展には、クライスラー・エアフローやジャガーEタイプなど、9台を提供した。

フォスターは、マドリードにノーマン・フォスター財団を設立して、過去を称え、未来を形作る活動を行っている。この企画展も、財団を通じて実現させた。コンセプトが浮かぶと、フォスターはニューヨークのグッゲンハイム財団に提案し、そこから企画がスタートした。「私が車を愛するのは、芸術的な側面ゆえだ。アーサー・ドレクスラー(ニューヨーク近代美術館の元館長)の言葉どおり、“走る彫刻”だからね。数年前にアイデアが浮かび、この企画展のまとめ役を依頼された。これは、デザインを建築と工学と芸術に分けている壁を壊すよい機会になると思った。車は、もっと芸術と並列に語られていい」

会場も名高いことはいうまでもない。フランク・ゲーリーが手がけたビルバオのグッゲンハイム美術館は、その建物自体が芸術作品として高く評価されている。大胆にしてモダンな建物は、スペイン北西部に位置し、1997年のオープン以来、現代建築のターニングポイントとの呼び声が高い。

この名高い美術館は、興味深い空間に事欠かない。

加えて、展示にあたっての細部へのこだわりと完璧主義、そして、コンセプトに賛同する各国のオーナーから集まった目を見張る展示車両によって、長年語り継がれる展覧会となった。過去を振り返れば、1997年にルイ・ヴィトンがニューヨークのロックフェラーセンターで開催したコンクールや、2012年にウィンザー城で初めて開催されたコンクール・オブ・エレガンスが思い浮かぶ。初開催の特権をおおいに生かして、世界中からあらゆる時代の名車を集め、一世一代の見事なイベントに仕上げていた。

この企画展が、構想から実現までに3年以上を費やしたというのも納得である。ただし、そのメッセージについては、気が滅入るものと受け取る人もいるだろう。「これは、ガソリン車の有終の美、内燃機関の時代へのレクイエムだ」とフォスターは説明する。では、しめやかな“お別れの会”なのかといえば、それは違う。人々を興奮させた重要な車を振り返って楽しみ、現代生活への大きな影響力を称える機会だとフォスターはいう。この企画展で、社会における車の重要性はもちろん、その革新性、エンジニアリング、デザイン、スタイル、発想が、私たちにどれほど大きな喜びをもたらしたかを再認識してほしいと願っているのだ。

オクタン日本版編集部

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