次代のラグジュアリーへのベントレーの「非凡な旅」

Bentley Motors

2022年10月26日から28日にかけて、ベントレーモーターズジャパン主催によるベントレーオーナーズツーリングが開催された。「エクストラオーディナリージャーニー」、非凡な旅とタイトルされたこのツーリングは小規模ながらも、これからのベントレーのコミュニケーション戦略の一旦を垣間見せるという意味で、とても重要なものだったようだ。参加したオーナーが口々に「贅沢だった」と感嘆した3日間に同行した。



旅のテーマは贅沢な時間の探求


秋晴れの晴天に恵まれた10月末の淡路島。目を瞑り、坐禅を組むと周囲を囲む森の音と、時折聞こえてくる鳥の囀りが心地いい。

『禅坊靖寧』は360度を淡路の自然に囲まれた、禅によるリトリートを体験できる施設だ。敷地面積は約3,000m2を有し、日本の子午線(東経135度)上に位置している。森の中に突如として現れる100mの空中回廊のような作りが独特で、設計は紙や木といった日本古来の素材を生かしながらも、まったく新しい発想によるモダン建築で世界的に知られる、建築家の坂茂氏による。当該施設ではインストラクターのアテンドによる禅体験をはじめ、自然豊かな淡路島の四季を味わう「禅坊料理」をいただくことができ、宿泊も可能だそう。訪れたのはベントレーモーターズジャパンとして初となるオフィシャル・オーナーズツーリング『エクストラオーディナリージャーニー』に参加されたベントレーオーナーの方々。全日程3日間に渡るプログラム2日目の最初の目的地、ここ『禅坊靖寧』では「禅」「書」「香」「茶」を体験することになっている。

『禅坊靖寧』での坐禅体験を前に、2020年度ミス・インターナショナル日本代表の金ヶ江悦子さんによる、呼吸による精神安定とリトリートを学ぶ。

到着後に施設紹介と淡路の番茶をいただくと、「禅」の思想をとりいれたデトックスとリトリートのワークアウトプログラムに入る。インストラクターは2020年度ミス・インターナショナル日本代表の金ヶ江悦子さん。呼吸による精神安定法などのレクチャーを受け、瞑想によるリトリートを体験した。先ほどまで自分を包んでいたベントレーコンチネンタルGTスポーツの12気筒サウンドに代わって、静寂の中の自然の音に包まれることの心地よさに気付かされる。「書」では『禅坊靖寧』の施設ロゴを手掛け、NHKの大河ドラマ「龍馬伝」の題字により幅広く知られる、書家の紫舟さんをインストラクターに、書の心得のレクチャーを受ける。続いてツアー参加者は「香」「茶」体験へ。お昼を過ぎると『禅坊靖寧』オリジナルの「禅坊料理」が供された。「禅坊料理」とは醸造料理人で発酵教室の講師としても活躍する伏木暢顕シェフ発案による砂糖、油、乳製品、小麦粉、動物性食品を一切使用せず作られた料理だ。

『禅坊靖寧』のロゴ題字は書家の紫舟さんによるもの。なんと紫舟さん自らによる「書」の体験。

石川県からツーリングに参加されたご夫妻がおっしゃっていた「本当に贅沢な時間ですよね」との言葉が印象に残る。

より立体的に動き出した『ビヨンド100』


これは『エクストラオーディナリージャーニー』のごく一部だが、プログラム全体のテーマとなっているのは2020年11月に発表された事業戦略『ビヨンド100』である。ベントレー モーターズの会長兼CEOのエイドリアン・ホールマーク氏が自社ホームページで「ベントレー モーターズは100年を超える歴史を持つラグジュアリー カーメーカーから、新しく、持続可能で、エシカルなラグジュアリーカーのロールモデルへと転換します」と説明するように、『ビヨンド100』は「世界をリードする持続可能なラグジュアリー モビリティ ブランドへの転換に向けたロードマップであり、電動化の未来を約束するもの」だ。

まだほんの2年前とはいえ、当時のマーケットの反応としては「電動化」の文字が先行し、「持続可能なラグジュアリーモビリティ」という大前提に関しては、その枕詞を「ベントレー」というブランドパワーに任せてしまった感がある。だが当のベントレーは、電動化も含めたすべての活動を次代のラグジュアリー・モビリティ・ライフでのイニシアティブ獲得への布石としているようだ。

ベントレーの故郷であるクルー工場は「ドリームファクトリー」と呼ばれ、自然エネルギーによる発電などによりすでにカーボンニュートラルを実現。さらに工場敷地内で使用する物流車両燃料をバイオ燃料に変更、導入1年で233トンのCO2削減に成功、利用水でも350,000Lの水のリサイクルを行っている。なんと2010年比では1台あたりのエネルギー消費量を76.7%削減していることになる。ほかにも女性人材の登用比率の拡大、技術系女子学生の研修制度の導入などの人権活動まで含めて、ベントレーはいまやラグジュアリーブランドマーケットにおけるサステイナブル活動のベンチマークにすらなろうとしている。

「ビヨンド100はまったく新しい価値観をベントレーに加えるものです。世界のオピニオンリーダーたちを私たちのターゲットと考えた時、そこには新しいラグジュアリーライフスタイルへの大転換がすでに起きていることに気づかなければなりませんでした」

全行程を同行したアジア太平洋地域ディレクターのニコ・クールマン氏。

こう話すのは今回のツアーに同行したニコ・クールマン、アジア太平洋地域ディレクターだ。ポルシェ・アジアパシフィックでマーケティングディレクターを務め、現在は日本にはじまり、オーストラリア、カンボジア、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、韓国、台湾、タイ、フィリピン、ベトナムを含む地域全体を管理する氏が、わざわざ日本のオーナーズツーリングに同行しているかについては明確な意図があった。

「4パッション・ポイント」とは


「これからベントレーモーターズは『ビヨンド100』の実現と同時に、全世界のオーナーやすべてのターゲットに対して、次代へ向けた新しいコミュニケーションを展開していかなければなりません。それが『4パッション・ポイント』です」

『4パッション・ポイント』とは今後のベントレーにおけるコミュニケーションの重要な基軸となるもので「ウェル・ビーイング」「サステナビリティ」「音楽」「不動産」で構成される。

「ベントレーモーターズがターゲティングする新しい世代のオピニオンリーダーたちの興味関心を4つに集約したものです。これらはまた、マーケティングにおける富裕層の興味関心事ともシンクロします」と前述のニコ氏。

なるほど確かにエクストラオーディナリージャーニーというタイトルからして“非凡な旅”である。日常からの逃避ではなく、より積極的かつ能動的に非凡な体験を求める富裕層は多い。さらに「コロナ・パンデミック以降に急激に変わった価値観」とニコ氏が表現するように、環境への配慮と取り組みは世代が若くなるほどに重要度を増している。そんなマーケットに対してヘリテイジを加味した「ベントレーだからラグジュアリーであることは当然」では迫る次代におけるマーケットイニシアティブを獲得できないことをベントレーは理解している。その発露がビヨンド100であり、それを顧客体験型のツーリングという形で世界で初めて開催されたのがこのエクストラオーディナリージャーニーというわけだ。

現在ベントレーモーターズは高級スコッチウィスキーメーカーのザ・マッカランと持続可能な未来へのビジョンを推進するためのパートナーシップを締結している。

体験することの価値をあらためて考える


あらためて正味2日間に渡るエクストラオーディナリージャーニーの工程のハイライトを紹介する。

DAY1-1
日本書紀の冒頭にも記される日本最古の神社とされる伊奘諾神宮を参拝。ツーリング最初の目的地となった伊奘諾神宮で安全祈願のお祓いをいただき、特別に製作いただいた西陣織の巾着袋に御朱印帳まで賜った。まさにエクストラオーディナリージャーニーのはじまりだ。

最古の神宮、伊奘諾神宮を訪ねる。ベントレーが静々と鳥居をくぐり本殿へむかう。

伊奘諾神宮では参加者全員が交通安全祈願を受けるとともに、参加者のために特別に製作された西陣織の巾着と、御朱印帳を賜る。

DAY1-2
瀬戸内海と紀伊水道の干満差により、激しい潮流が発生することによっておきる鳴門の渦潮を遊覧。大きいもので直径20mにもなるその迫力に圧倒される。あまりにも有名な観光地ながら、「知っているのと実際に見るのとでは迫力が違いますね」とは参加者の弁。

DAY2
冒頭でご紹介した淡路島に完成したばかりの禅リトリートを標榜する禅坊靖寧禅で禅体験。自然と共鳴し、自然の声を聞き、先進的な建築に触れ、より良く生きるとは何かを考えることを考える、という意味でベントレーモーターズが掲げる4パッション・ポイントを凝縮した場所であろうと想像する。

DAY2
888年に創建された世界遺産にも認定される真言宗の総本山、仁和寺を参詣。二王門にはコンチネンタルGTがライトアップされ、他にも1928年ル・マン優勝車両とコンチネンタルGTCが並べられた。さらに宸殿でのディナーなど、通例では体験できない夜を参加者全員で満喫した。

京都、仁和寺の二王門に特別に展示されたコンチネンタルGT。ほかにも敷地内にはコンチネンタルGTCと、1928年のル・マン優勝車両も展示された。

宸殿でのディナーでは、自動車ジャーナリストの西川淳氏、安東弘樹氏によるトークショーも。

総走行距離358.6km。神戸からスタートし、淡路島から兵庫を経由し、京都へと向かったエクストラオーディナリージャーニーは結果、参加者全員から好評だったと聞く。今後、「4パッション・ポイント」を基軸にしたコミュニケーションは全世界で展開されることになるだろう。そこにはオイリーボーイたちの冒険譚、白洲次郎への憧憬というヘリテイジに則りながらも、より良く生きることを思考する新しいラグジュアリーライフの提案がなされるはずだ。


文:前田陽一郎(オクタン日本版編集部) Words:Yoichiro MAEDA(Octane Japan)

文:前田陽一郎

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