古い爆撃機や思わぬ希少車に出会える場所|リンカンシャー航空史料館

Barry Wiseman

古い爆撃機への憧れは、罪深いものだともいえるだろう。結局のところ、これらの航空機は、最大の混乱と損害を引き起こすという目的のために造られたといえるからだ。しかし、もし爆撃機軍団がいなければ、第二次世界大戦の結果は、まったく違ったものになっていたかもしれない。

爆撃機軍団には、60カ国以上から約100万人が参加した。8325機の航空機と5万5573人の乗組員の命が任務を遂行の果てに失われた。これは全乗組員の56%に相当し、平均年齢は22歳だった。



リンカンシャーには爆撃機の基地が多く、リンカンシャー航空史料館では、その場所での生活を追体験することができる。入口から入って最初に目に入るのは、巨大な格納庫から顔を出している、ランカスター爆撃機の「ジャスト・ジェーン」だ。そのノーズ部にあるアートには、乗務員の気分を高めようという狙いによるものか、「ジャスト・ジェーン」のコクピットの下には、爆弾の上に座っているジェーンの絵が描かれている。

このジェーンは、『デイリー・ミラー』紙に連載されていたイギリスの漫画(連載漫画=comic strip)のキャラクターだ。「ストリップ」という言葉はある意味適切で、ジェーンはありとあらゆる不運に巻き込まれ、そのほとんどのエピソードで服を失くしてしまう。今では考えられないことだが、戦時中はとても人気があった。

このランカスター爆撃機は現在修復作業中だが、飛行場内での”地上走行”用に一般公開されている。また、ランカスター爆撃機の後ろに駐機されているモスキートNF11でも、同様の体験ができる。メイン格納庫には、バーンズ・ウォリスの跳弾やガイ・ギブソンのランカスター爆撃機の操縦桿など、興味深いものが多く展示されているほか、自動車についても充実したラインナップを誇っている。

飛行場内では、兵士用宿舎、司令拠点、ホームフロント(国民の生活、国内戦線、銃後)の展示、安らぎのメモリアルチャペル(祈念堂)などがある。全盛期の生活がリアルに感じられ、雰囲気満点だ。当然ながら管制塔も重要な要素で、無線やモールス信号の音で体験気分も盛り上がる。



また、爆撃機乗組員の12%が捕虜収容所に収容されたことも忘れてはならない。脱走兵記念館では、彼らが脱走して前線復帰するために行った努力に焦点が当てられている。

もう1つの建物には工房があり、ランカスターやモスキートの後継機となるハンプデン爆撃機の改修が行われている。面白いことに、ここのど真ん中には、ゴッゴモービルのサルーンカーのボディシェルが置かれているのだ。

その一角にある別の建物では、商用車を中心とした車両が展示されている。ランカスター1機分となる2000ガロンの燃料を積んだ、巨大なAEC社のタンカーもある。そしてこの巨体の背後には、息を呑むような光景が広がっていた。それはスクワイアか?ほぼ正解。1986年ケネディ・スクワイアだ。

スクワイアは1934年から1936年にかけて、わずか7台しか製造されなかった。見た目も中身も良くできているが、価格が高過ぎた。残念なことに、創業者のエイドリアン・スクワイアはこの数年後、ブリストルの空襲で命を落としている。

1980年代にケネディ社(現ヴィカレージ社)は、オリジナルのラダーシャシー、アッシュフレーム、アルミニウムボディ構造を採用し、アルファロメオ製の2.0リッターエンジンとトランスミッションを搭載したレプリカを16台製作した。残りのパーツは、主にイギリスから調達したものだった。これはまさにイギリス空軍の軍人たちが乗りたがるような車だが、それだけではない。そのケネディの後ろには、MG TAコクラン・スペシャルが鎮座している。それは、1954年にデ・ハビランド社の技術者が航空機の規格で作ったと言われる、ユニークな車だ。この2台だけでも、一見の価値有りである。

リンカンシャー航空史料館
住所:East Kirkby, Spilsby, PE23 4DE
空路も可。(飛行機で着陸することもできる)
詳細はウェブサイト参照
営業時間:火~土曜日の午前9時半~午後5時(イースター~10月末)、午前10時~午後4時(11月以降)。
料金:大人10ポンド、高齢者9ポンド、子供(6〜16歳)4ポンド。
詳しくはwww.lincsaviation.co.ukを参照


Words and photography: Barry Wiseman

Barry Wiseman

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