日本の美しさを世界に発信する、ラリーニッポン in 東北 2022

DAY3で通過した城ヶ倉(じょうがくら)大橋。全長360m、アーチ支間長255mの日本一の上路式アーチ橋である。橋上からは八甲田連峰や青森市街を見渡すことができる(Jokei TAKAHASHI)

ラリーニッポンが2019年以来、3年ぶり12回目の開催を果たした。2013年、2016年と2回を台湾で、また2018年には北米カリフォルニアなど、海外においてもイベントを実施してきたラリーニッポンだが、日本の歴史や文化を再認識し、日本の美しさを世界に発信するという理念において、その最終的な目的は「日本を元気にする応援プロジェクト!」としている。そして今年2022年、ルートは東北が選ばれた。



まだ見ぬ新しい景色を求めて


ラリーニッポンの第1回開催は2009年。それは東京から白川郷を抜けて京都を目指す約1000kmのルートだった。以来毎回完全にルートを変えて、参加者に新しい景色を提供することにプライオリティを置き企画を重ねてきている。いわゆるタイムトライアル方式のクラシックカーラリーの側面も残しつつも、日本の誇る世界遺産や文化遺産を巡る「旅」そのものを楽しむことを大切にしている。それがラリーニッポンなのだ。

コロナ禍において参加者の安全確保を第一に、いち早く開催延期を決めてきたラリーニッポンが、イベント再開のステージとして選んだのは東北であった。開催日程は2022年10月26日から29日の4日間。約1200kmにおよぶ長い行程であった。

初日のスタート前に、仙台大崎神社で交通安全の祈祷を受ける1957年MG-TD。

初日のスタートは仙台の大崎八幡宮。上杉伯爵亭を周り裏磐梯の壮大な景観を楽しみながら仙台に戻ってきた。二日目は湯沢稲庭町、角館武家屋敷を通り、田沢湖から岩手の安比まで足を伸ばす。三日目は奥入瀬渓流のせせらぎを感じつつ、八甲田を巡るユニークなルート。そして最終日は花巻から中尊寺参拝をコースに含みながら、最後はウエスティンホテル仙台にて盛大なパーティと表彰式を開くというもの。参加台数は1974年までに製造されたクラシックカー約50台で、もちろんレプリカの参加は認められていない。

1963年Mercedes Benz190SLと並ぶ1929年 RILEY 9 BROOKLANDS SPEEDMODEL。オクタン日本版編集部はこのライレーで帯同取材に参加した。

今回も毎日ほぼ2回ずつのPC競技が用意されていたが、ラリーニッポンの醍醐味は何といっても参加者にドライブの感動を与えるためのルートメイクにある。コース設定にあたり主催者は参加者目線で何度もチェックを繰り返し、走って楽しいことはもちろん、時に名所旧跡に立ち寄りながら穏やかな時間を過ごし、その土地のもつ魅力を存分に味わうことを大切にしているのだ。

奥入瀬渓流を走る1967年MG-C、1964年Volvo 122Sなど。深呼吸をしたくなる清流の音に、アクセルを踏む力が自然と緩む。

レストコントロールも兼ねてランチを楽しんだ上杉伯爵亭を出発する1957年Alfa Romeo Jiulietta Spider。

「日本を元気にする応援プロジェクト!」がラリーニッポンのテーマであるが、クラシックカーラリーとしては唯一、観光庁の後援を受けているところも面白い。クラシックカーファンのみならず、多くの観光客や地元の人々とふれあう機会を大切にすることはもちろん、海外からのエントラント招致にも積極的であり、今回も複数組の外国人参加者がいた。


角館武家屋敷でのレストコントロールでは地元テレビ局での取材も入り、観光客と参加者との交流もあった。 

アメリカからの参加者は1965年Ford COBRA 427 S/Cで。

また教育支援を、開催にあたってのひとつの指標にしていることも興味深い。こういったイベント企画の運営にあたっては、サポートスタッフの協力体制は必須である。ラリーニッポンは以前より様々な大学とプロジェクト連携を図ることで、学生がイベント開催準備から運営を通じ、社会活動としての成功体験を積むことを支援してきている。今年は東北学院大学学生のサポートがあったが、そのしっかりとした対応には大きな安心感があった。

1969年ALPINE A 110。東北らしいゆるやかなワイディングが続く。この季節ならではの紅葉も楽しめた。

ある種クラシックカーラリー競技として緊張感を残しながら、「わんこそば」体験や中尊寺金色堂見学なども織り交ぜ、観光としての楽しみも用意されたラリーニッポンは実に奥が広い。次回 2023年は10月に北海道での開催が予定されている。


文:オクタン日本版編集部 写真:高橋定敬 
Words: Octane Japan Photograph: Jokei TAKAHASHI

オクタン日本版編集部

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