「古い車は、乗らないと逆に調子が悪くなる」|60年前のビートルが教えてくれたこと

Matt Howell

『Octane』UK版スタッフによる愛車日記。今回は1962年フォルクスワーゲン・ビートルに乗るマット・ハウエルのレポートだ。還暦越えのクラシックカーで息子と二人旅は、やはりそれなりのハプニングがあったようで・・・



昨年秋のことだ。まだ家を出たばかりのところで息子のハリーが「あの音は何?」と聞いてきた。
「スピードメーターのケーブルから音がしているから外してみようか」と返事をしている最中に、車は止まってしまった。『グッドウッド・リバイバル』へ向かう往復300マイル強の旅は始まったばかりだというのに。

もう30年も所有しているので、この車のことはとても良く知っている。しかし、この4年間はほとんど走らせていない。それは車にとっても良いはずがない。古い車は、乗らないと逆に調子が悪くなる。60歳になるこのフォルクスワーゲンも、乗らないとどうなるか、それは明白だ。

その前月、この車の簡単な点検をしたのだが、作業リストはすぐに大量の項目でいっぱいになってしまった。配線の整理に始まり、新しいCVゲートルの装着、エンジンとギアボックスの整備、E10対応の燃料パイプの取付け、ウェーバーIDFのベンチューリの交換、新しいステアリングボックスの取付け、さらに防錆処理に至るまで、細かい作業が延々と続く。

これだけ車について知り尽くしていれば、午前5時42分にスピードメーターのケーブルを外すのも、大したストレスには感じない。その後すぐに、修理は完了。ハッピーなフラットフォーサウンドと降流式キャブレターからの心地よくも耳をつんざく様なインダクションの唸りを聞きながら、爆走することができた。

A1、M1、M25といった高速道路を通り過ぎ、完璧に手入れされたフォルクスワーゲンのファストバックに乗る友人のデイモンに会うため、M25がA3に合流する森の中のカフェを訪れた。そしてどこからともなく、グッドウッドに向かう他のクラシックカーがやって来て、オーナー達も集まり、話をしたり、写真を撮ったりした。そして私たちは満面の笑顔でその場を去ろうとした。ビートルに乗り込みキーを回したが、ダッシュボードの照明が暗くなるだけだった。…エンジンがかからない。

「ちょっと変だね」と息子のハリーに言いながら、もう一度試してみた。今度はエンジンがかかったので、このトラブルのことはすぐに忘れてしまった。1時間後、私たちはすこぶる上機嫌でグッドウッドの駐車場に車を停めた。グッドウッド・リバイバルはいつだって素晴らしいイベントで、私たちはそのすべてを体感するべく精力的に観て回った。

最終レースが終わり、ハリーと私はビートルに戻った。さて帰ろうとしたところ、予想に反して、エンジンはかからなかった。私がサイドランプを点けっぱなしにしていたせいで、バッテリーがあがってしまったようだった。近くにいたドライバー2人に声をかけ、ジャンプスタートでそのときは事なきを得た。

A3で給油するまでは順調だったが、そこで実はスターターが壊れていたことが判明した。グッドウッドの衣装を着こんだ二人がBPのガソリンスタンドで青いビートルを押しているのを見かけたら、それは私たちだ。数時間後、私たちは真っ暗闇の中をドライブして帰還。その瞬間が今回の旅のハイライトだったかもしれない。

次の仕事は、スパ・フランコルシャンへ向かう前に、壊れたスターターモーターを交換することだ。

もちろんその後、数週間後に控えたスパ・フランコルシャンへのロードトリップの前に整理すべき、新たな作業リストを作成したことは言うまでもない。


文:Matt Howell

オクタン日本版編集部

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