スペチアーレこそ「オトナ色」に|日本に納車された超レアカラーのフェラーリ・エンツォ

Darin Schnabel ©2023 Courtesy of RM Sotheby's

フェラーリ288GTO、F40、F50に続く、21世紀への新たな一歩として2002年のパリモーターショーで発表されたのが、エンツォである。Ken Okuyamaの名で知られるピニンファリーナの奥山清行氏が手がけたボディワークには、当時最新鋭のTipo F140B 6.0L V型12気筒エンジンと専用開発の6速自動変速機が組み合わせられ、創業者の名にふさわしい圧倒的なパフォーマンスを発揮する。元々399台という限られた台数のみ生産予定だったが、2004年にローマ法王ヨハネ・パウロ2世のために、1台のエンツォが追加生産された。

エンツォにF1技術を導入するため、フェラーリは最先端の素材と革新的なソリューションを投入し、軽量化と性能向上を図った。カーボンファイバーとノーメックス・ハニカムを使用したシャシーは、わずか200ポンドという軽量化を実現。風洞実験を経て完成されたボディワークは、カーボンファイバーとケブラーで編まれたパネルで構成されている。1970年代の712 Can Am以来、フェラーリ最大のV型12気筒エンジンは、ニカシルと呼ばれるニッケルとシリコンの合金を施したシリンダーウォール、チタン製コンロッド、トルクアップのための伸縮式インテークマニホールドなど、レース用に開発された部品がふんだんに使用されている。出力は651ps、トルクは658Nmを発揮。このエンジンは、フェラーリの伝説的なエンジニアリングの一例であり、マラネロにとって最後の自然吸気、非ハイブリッドのV型12気筒ハイパーカーに搭載され、その存在意義を確固たるものにした



エンツォの大半(全車両の70%以上)はロッソ・コルサで仕上げられたが、ごく一部のモデルはリクエストに応じて他の色に塗装され、ジャッロ・モデナ(黄色)、ネロ・パステロ(黒)、ロッソ・スクーデリア(赤)が人気だった。中でもアルジェント・ニュルブルクリンク101/Cというカラーリングは、生産台数の2%にも満たないわずか9台しか存在しない希少なカラーである。



その9台の仕様を詳しく見てみると、シャシーナンバー132662のエンツォだけがクオイオ・レザーの内装で、他の8台はネロかロッソ・レザーの内装でまとめられている。



そして今回RMサザビーズ主催のオークションにまさにこの1台しか存在しない仕様のエンツォが出品されることとなった。

日本へ新車で納車されたこの#132662のエンツォは、一度も登録されることなく、その生涯の大半をガレージの中で過ごしてきた。そのため走行距離はわずか227kmと、完全なるファクトリーフレッシュの状態である。ドアシルのプラスチック、イグニッションキーに巻かれたテープ、ブレーキとアクセルペダルのプラスチックカバーなど、この車はまだ工場出荷時の保護パッケージの多くがそのまま残っているのだ。





特に重要なのは、オリジナルの取扱説明書、カーカバー、スペアキー(取扱説明書と一緒にジップロックに入ったまま)、そしてラゲッジセット(3ピース、未装着)が付属していることである。



エンツォは登場から20年以上が経過し、21世紀における最も偉大なフェラーリの1台として認められている。美しいプロポーションと際立った魅力を備えたこのモデルは、マラネロで最も美しく、最も評価の高いモダンなハイパーカーのひとつである。フェラーリ・エンツォがコレクターズアイテムであることに変わりはないが、やはり最も注目を集めるのは、通常のレッド、イエロー、ブラック以外のカラーで仕上げられた希少なファクトリーモデルだろう。





#132662は、アルジェント・ニュルブルクリンクというエレガントなカラーを纏い、コレクターからも常に高い人気を誇る一台だ。希少性とオリジナリティを重視する愛好家にとって、究極の一台となることだろう。




Darin Schnabel ©2023 Courtesy of RM Sotheby's

オクタン日本版編集部

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