マスタングとの別れ|『Octane』UKスタッフの愛車日記

Octane UK

愛車との別れを決断するにはそれなりに自分が納得できる理由が必要だ。5年間所有し多くの思い出を共にした1966年フォードマスタングの売却を決意した『Octane』UKのマーク・ディクソンがその胸の内をレポートする。



とある読者から「そのマスタングは売らないで」という懇願の言葉をいただいた。彼は、ご自身が1968年式のマスタングを売ってしまって以来、ずっと後悔しているそうだ。売るのは大きな間違いだという。それにもかかわらず、やはり私も売ってしまった。

先日、2000年代初頭の古い雑誌を読み返してみた。自分が所有するクラシックカーについてのランニングレポートを書いた記事があったのだが、そこには「借金の返済のために、○○(車名)を売らなければならなくなった」という内容が何度も出てきた。これこそが、自動車ジャーナリストの不安定な生活の一端だ。常に自身の銀行口座の残高を遥かに超える野心を抱いているともいえる。同じようなことがデジャブのように何度も起きていて、これまでに何度も経験済みなのだ。

今回私は、このマスタングか1927年製のアルヴィス12/50か、どちらを手放すか、というソロモン流の選択を迫られた。マスタングは5年間所有していて、3回のヨーロッパ遠征をはじめ、かなり多くの思い出がある。しかし、アルヴィスにはまだ大した思い出がない。これは完全に私の責任だ。少し作業を始めても他のことに気を取られてしまったためだった。とはいえ、その楽しみを味わう前に売ってしまうのは嫌だった。

実は他にも理由があった。アルヴィスにはマスタングの約 2 倍の価値がある。一方、マスタングは私が所有した最高の車の1台である。クールでかつ信頼性が高く、ランニングコストも安い。悩んだ末に私はこのように考えた。アルヴィスをあえて残して、将来売却するというパターンだ。それならアルヴィスの売却時に、状態の良いマスタングを購入してもかなりの現金を手元に残すことができるだろう。



手放すと決めたら、あとは買い手を見つけるだけだ。幸運なことに、レスという人物が現れた。彼は数台の素晴らしい車に加えて、マスタングも所有していた。レスに私のマスタングを見せに行った時、彼がかつて普段使いしていたという、ほぼ新品同様の1986年フィアットX1/9の状態を見て感動した。その瞬間に、彼がマスタングを大切にしてくれるであろうと確信したのだ。それはとても重要なことだ。そして私たちは価格に合意した。期待した金額には達しなかったが、現在の市場価格からすると悪くなかったのが救いである。


文:Mark Dixon

Mark Dixon

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