伝説に新たな息吹を|マトゥーロ・ストラダーレ試乗記

Luuk Van Kaathoven

この車は、普通のランチア・デルタ・インテグラーレではない。これはマトゥーロ・ストラダーレ。100%オリジナルでありながら、本格的に再設計され、絶妙なスタイリングが施され、想像力豊かに仕上げられた車両だ。

外側はスチールではなくカーボンファイバー製のため、軽量かつ強度が高く、腐食に強い。さらに、パネルのフィット感も向上している。内装は、美しいバケットシートが装備され、ドライバーはロールケージで保護される。ステアリングは、アルカンターラがあしらわれたアバルト製の2本スポークだ。安っぽいプラスチック製パーツは、アルマイト加工のアルミニウムやカーボンに換装されている。ダッシュボードは実用的なデザインで、ラリーカーと同等の機能を備えている。ダンパー特性や車高は調整でき、砂利道では特に有効だ。



さらに緑色のボタンには、WRCで2度のチャンピオンに輝いたユハ・カンクネンにちなんで「Juha」と刻印されている。このボタンを押すと、パワーが300から400bhpに増加する。

エンジンのアイドリングはやや高めで、バランスシャフトは幅広で強力なタイミングベルトに変更されているにもかかわらず、振動や小刻みな動きは皆無だ。ノーマル仕様のインテグラーレより100bhpもパワーアップし、406lb ftという強大なトルクを発生させるサウンドには、ある種の緊張感がある。エンジン内部では、鍛造ピストンやスチール製コネクティングロッドなどが完全に再設計されている。そしてギャレット製ターボチャージャーには、スライドベアリングの代わりにローラーベアリングが採用された。それにより、スプールアップが40%速くなり、ブースト圧も1.2から1.8バールに増加した。

渋滞の中をスムーズに移動するのに高回転は必要ないが、4000rpmを超えると加速の強い衝撃があり、まさに素晴らしい感覚だ。ストラダーレは、地平線に向かって猛然と疾走し始める。コーナーの入りと立ち上がりは高速だが、ストラダーレは腰を落としたまま、ロールを全く感じさせない。限界がすぐにわかるタイプの車ではあるものの、その限界は遥か彼方にあり、ドライバーの操作に即座に応答してくれる。

ギヤボックスは、1速、2速、3速のギヤが強化され、フライホイールは軽量化されている。シフトフィールもノーマルのインテグラーレより格段に良好で、タイトで力強い。インテグラーレの弱点であったドライブシャフトは、F1用に開発された特殊合金で作り直された。そのため、40ºまでのねじれやかかなりの負荷にも耐えることが可能だ。フルパワーのスタートでも、ホイールがスピンするのはタイヤがトラクションを見つけるまでのほんの一瞬だ。その後、ストラダーレは何事もなかったかのように走り出す。

ハンドリングが良いことは想像できるが、さらに印象的なのはその洗練された乗り心地だ。でこぼこ道でもキーキー音やきしみ音はなく、剛性が高い。それに、しっかりと柔軟性も備えている。これは、イントラックス社供給の優れたダンパーのおかげで、想定された不快感はまったくないい。

約34万ユーロと高価なマトゥーロ・ストラダーレだが、その変貌ぶりは並大抵のものではない。そしてこの変貌は、ヒロイックかつとびきりエンターテイニングな確固たる意識の基に造り上げられている。


文:Ton Roks

Ton Roks

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事