思い出を「形」にしたランチア・デルタ|アウトモビリ・アモス

Automobili Amos

MODERN RESTORATION_05
新世代のビルダーが作るレストレーションの新しい形

「レストモッド」という一大ムーヴメントをひもとく特集、第5回はランチア・デルタ好きならおそらくご存じの、アウトモビリ・アモスのプロジェクトに迫る。「子供の頃から思い出に残っている車を再び蘇らせる」とは、単にその車を所有することより夢がある話ではないだろうか。ここにあるランチア・デルタ"フトゥリスタ"はある人物の思い出がかたちになったものだ。


「アウトモビリ・アモス」(AutomobiliAmos) 。ランチア・デルタを好きか、車に関するトレンドに敏感な方であれば一度は耳にしたことがあるかもしれない。2018年9月にスイスで開催された自動車の見本市グランドバーゼルにて大きな話題をさらった存在こそが、このアモスが生み出した「ランチア・デルタ・フトゥリスタ」だった。フトゥリスタとは"未来" を意味するが、何を目的にこのコンセプトは具現化されたのだろうか。

アウトモビリ・アモスはラリードライバーとしても活躍する、ミラノ生まれのエウジェニオ・アモスによって立ち上げられた。現在35歳の彼は2人の小さな男の子の父でもあるが、彼は自身も少年のように車で"遊ぶ"ことを愛し、ダカール・ラリーなど大規模なイベントにも出場を重ねている正真正銘の車好きだ。その性格は温厚篤実で気さくだが、彼が好むスーパーカーはフェラーリF40、ポルシェ911GT2RS、メルセデス・ベンツCLK-GTRなどハイパワーでアグレッシブなもの。複数台所有している中でも、一番のお気に入りはランチア・デルタである。小さな頃に彼の父が所有していたイエローのデルタが強い印象となり、それをきっかけに車を好きになったためにデルタが大好きなのだという。その愛は彼が大人になっていくにつれて膨らんでいき、「このユニークでアナログな車を現代に蘇らせ、その存在を再び称えたい」という想いが生まれた。こうして3ドアとなって復刻版デルタ"フトゥリスタ" が誕生した。

現在35歳のエウジェニオ・アモス。アウトモビリ・アモスでは、Tシャツやサングラスなどのアパレルも手掛けている。

このフトゥリスタは、デルタ・インテグラーレ 16vをベースにカーボンファイバーとアルミを多用しながらボディを新たに製作し、その車両重量は1250kgまで軽量化されている。排気量はオリジナルと変わらず2000ccのまま、直列4気筒ターボエンジンをチューンナップすることで330hpまでパワーアップを図っている。

エンジンはオリジナルと同様に、直列4気筒ターボを搭載。パートナーであるオートテクニカによるチューニングと冷却系・排気系の見直しにより、330hpまでパワーアップされている。

エウジェニオ自身は車の製造に関して特別なスキルを持っていたわけではないが、チーム全体で"トライアンドエラー" を繰り返しながら少しずつプロジェクトを進めてきたという。ボディワークとデザインに関しては、それぞれ別のパートナーと組んでいるが、そこでのスタッフも含めこのプロジェクトに関わっている人数は20名ほど。そのチームで、フトゥリスタのために新しいコンポーネントを2000種類近く製造したそうだ。プロジェクトに対し、チーム全員が相当の情熱と愛情を持ち合わせていなければ成し得ないことであるのはいうまでもない。

トランスミッションは1989年のデルタ・インテグラーレをベースに強化され、サスペンションはアルミを多用したものに変更されている。

インテリアはフトゥリスタ専用に、S4をモチーフにしながら作られている。カーボンに合わせる素材、色は好きなものを選べる。

一部はオリジナルの素材を使用/強化しながら作られているが、ほとんどは新しく設計されている。インテリアはランチアS4からインスパイアされているもので、すべてフトゥリスタ専用だ。一台あたりの完成にはおよそ半年の時間がかけられ、ボディ製造パートナーの工場をフル稼働させても年間で8台~10台の製造数となる。完成した車は代表を務めるエウジェニオによってシェイキングを兼ねたテストドライブがおこなわれ、厳しいドイツのTUV規格をクリアしてからカスタマーのもとへと届けられる。ちなみに、フトゥリスタは20台限定だが世界中からオーダーが集まり、売り切れとなっている。

また、フトゥリスタをコレクションに加えているカスタマーについて聞いてみると、興味深いことに30~50代だという。これにはエウジェニオ自身も「車業界の平均年齢を考えると、非常に若い」という。"車業界で若者の車好きを育てたいと思うか"と尋ねてみると、このような答えが返ってきた。「今の若い人たちは環境問題などで、クラシックカーに対してネガティブな情報を教えられてしまうから、僕ら世代に比べるとクラシックカーを好きな人は少ない。でも、それは素敵な一台を自ら体感したことがないからだと思う。クラシックカーは決して悪いものでないということを証明していきたい」

そして最後に、今後のプランを聞いてみた。「21世紀のBMWになるということが夢、だけれど…。魅力的な車を造ってみなさんを幸せにできればそれで満足!」

彼が見せる屈託のない笑顔は、かつてイエローのデルタに乗ったときに浮かべていたそれとまったく同じだろう。このピュアな想いで次世代における車文化を盛り上げていってもらいたいと、心から想う。

文:川端由美 Words: Yumi KAWABATA

文:川端由美 Words: Yumi KAWABATA

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