元オーナーはJ.K! MVにも登場したベントレーS1コンチネンタル・ドロップヘッドクーペ

Simon Clay ©2023 Courtesy of RM Sotheby's

現在、RMサザビーズのプライベートセールに出ている、ベントレーS1コンチネンタル・ドロップヘッドクーペに目を奪われた。1958年5月28日、新車としてE.Lメイザーに納車されたもので、その時はチュドール・グレイの外板色、グリーンの内装色、ペール・グリーンの幌を纏っていたそうだ。





面白いもので、E.Lメイザーは広告代理店「ヒュイット、オグルヴィ、ベンソン&メイザー」(現、オグルヴィ)のマネージング・パートナーの一人の“メイザー”である。奇遇にも、同社は翌年に「時速60マイルでクルーズ中、新型ロールス・ロイスで最も大きな音がするのは電動時計である」という名キャッチコピーを生み出した会社でもある。

なお、この手のコピーはその前から存在し、1930年代には「新型ピアース・アロー(かつて存在したアメリカの自動車メーカー)で聞こえる唯一の音は、電動時計が刻む音だけ」というコピーもあったそうだ。今でも試乗記で静粛性を表現する際に、たまに目にするこのフレーズ…、実は使い古されたもの。

当該S1コンチネンタル・ドロップヘッドクーペ、E.Lメイザーに納車されたことは分かっているが、その後の行方は1990年にイギリスに“輸入”されるまで不明だ。1990年にはベントレー・ドライバーズ・クラブのメンバーであった、アラン・プリンスが購入。フルレストアを施したとともに、現在の内外装、ならびに電動幌が奢られた。



2001年、当該S1コンチネンタル・ドロップヘッドクーペは新たなオーナー、J.Kの手に渡った。J.Kとは、ジェイ・ケイ、…日本語表記にしたわけではなく、「ジャミロクワイ」のジェイ・ケイである。ジェイ・ケイは熱狂的な車好きとして知られ、アメリカにおいてコンサートツアー中、あまりに運転したくなり、ツアーバスのステアリングを自ら握ったという逸話が残っているほどの人物である。

2002年にはこのS1コンチネンタル・ドロップヘッドクーペがジャミロクワイの「ラヴ・フーロソフィ」という楽曲のミュージックビデオに登場している。当時のスーパーモデル、ハイディ・クルムがジャミロクワイ好きを公言しており、ジェイ・ケイがミュージックビデオへの出演をオファーしたところ快諾した。



そんなハイディ・クルムに似合う車は、ベントレーS1コンチネンタル・ドロップヘッドクーペしかない!とジェイ・ケイはひらめき、自身の車を撮影地、スペイン・マルベーリャまで輸送。4分弱のミュージックビデオのために9日間を費やしたそうだ。ちょっと驚かされるのは、ミュージックビデオ内に移っているナンバープレートが“ホンモノ”であることだ。



RMサザビーズが掲載している写真を確認しても、ミュージックビデオと同じナンバーが今でも付けられている。日本ではちょっと考えられない“オープン”ぶりは、オープンカーだからか、ジェイ・ケイの流儀なのか?



もとい。

S1コンチネンタル・ドロップヘッドクーペは94台しか生産されておらず、右ハンドルモデルは55台しか存在しない。そんな、そもそもレアな車両で、ジャミロクワイのミュージックビデオに登場した車両で、さらにジェイ・ケイが22年も保有してきたヒストリーまで付いてくる。結構な値段で取引されそうだが、プライベートセールはオークションではないので、取引価格が公になることはない。



ジャミロクワイ好きで、特に「ラヴ・フーロソフィ」を好きで、懐に余裕がある方は是非、RMサザビーズへ問い合わせてみてはいかがだろう?




文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)
Photography: Simon Clay ©2023 Courtesy of RM Sotheby's

古賀貴司(自動車王国)

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