さらにラグジュアリーに!磨きがかけられたBMWアルピナXB7

Takaaki MIURA

いかなるモデルであっても“駆けぬける歓び”をスローガンに掲げるBMWモデルにあって、BMW X7はめずらしくラグジュアリーであることを打ち出すフルサイズSUV。全長5m超、全幅2mの巨体に3列シートを備え、乗車定員は6名もしくは7名が選べる。

このX7をベースに、アルピナがさらにラグジュアリーに磨きをかけ、GT性能を高めたのがBMWアルピナXB7だ。2020年にアルピナ初の大型SAVがデビュー。今回は、ベースモデルのX7のLCI(マイナーチェンジ)に伴い大幅にアップデートされた。

まず最新の7シリーズなどと同じく、大きなキドニーグリルの左右には上下2段に分割された特徴的なヘッドライトが目に飛び込んでくる。キドニーグリルには、イルミネーションで浮かび上がるアイコニック・グローというギミックが仕込まれており、フロントとリヤエプロンにアルピナ独自のデザインが採用されている。



ボディサイズは、全長5180mm、全幅2000mm、全高1835mm、ホイールベース3105mmという堂々たる体躯で、いくらアンダーステイトメントであることを是とするアルピナといえども、街で注目されてしまうのはいたしかたないだろう。

今回のLCIでは、インテリアにも大きく手が加えられている。メーターパネルとセンターコントロールディスプレイを一体化した大型のカーブド・ディスプレイを採用。インフォテイメント系のオペレーティングシステムは第8世代へと進化しており、「オーケー、BMW」と話かけるとシステムが起動する、音声制御機能などデジタル化が一段と進んでいる。



BMWに限らず最新モデルは、スペースを有効活用するためオートマティックのシフトセレクターを小型化する傾向にあるが、ベースとなるX7でもシフトセレクターは小さなツマミのようなタイプに変更されている。一方で、XB7では従来タイプのシフトノブにこだわり、センターコンソールにはクリスタル仕立てのノブが配置されている。その脇にあるiDriveコントローラーも同様にクリスタル製だ。



実はパワートレインも変更された。4.4リッターV8ツインターボで、最高出力621ps、最大トルク800Nmという数字だけをみればまったく変わっていないように見える。さらに言えば、B8グランクーペのエンジンスペックとも同じようにも思える。



しかし、エンジン型式は従来のN63型から最新世代のS68型へと変更されている。48Vマイルド・ハイブリッド・システムが追加されており、かつては2000―5000rpmだった最大トルクの発生回転域が1800―5400rpmと、上下に拡大している。ちなみにBMWはさすがにX7ではサーキットを目指さないようで、“X7M”は設定しておらず、MパフォーマンスモデルのX7 M60i xDriveが、高性能版の位置づけにある。こちらのスペックが最高出力530ps、最大トルク750Nmなので、いまのところX7シリーズにおける最高峰モデルがアルピナXB7ということになる。パワーの増強にあわせて車体剛性は、アルピナ独自のドームバルクヘッド・ストラットや強化されたトーション・ストラットによって高められている。またアクティブ・ロール・スタビライザーの電子制御式アンチロールバーとリヤアクスルのブッシュの強化によって、ロールは最小限に抑えられている。



48Vマイルド・ハイブリッド・システムの恩恵もあって、いかなる回転域からでも瞬時に加速する。補機類などのノイズもなく静粛性の高さもあって、低回転域ではまるで電気自動車のように感じる場面もあった。アクセルペダルに力を込めると、アルピナチューンのV8エンジンらしく精緻さと気持ちよさを味わわせてくれる。

足回りには、エアサスペンションを採用している。スポーツ/スポーツプラスモード選択時や、車速が一定を超えると自動的に車高を低くおさえてくれる。またマニュアル操作によって上下に40mmの範囲で高さを変更することも可能だ。しかし、やはりアルピナの白眉は独自のコンフォートプラスモードだ。状況によってはさすがに軽いピッチングを感じる場面もあるが、基本的にはいたってフラットでゆったりと穏やかな気持ちでドライブすることができる。試乗車はアルピナ史上最大というオプションの23インチタイヤ(ピレリP ZERO)を装着していたが、それを一度も意識させないほどの絶妙なセッティングによって見事に履きこなしていた。さらに、後輪には最大 2.3°左右に操舵するインテグレイテッド・アクティブ・ステアリングを備えており、低速域では取り回しや俊敏性が、高速域では直進安定性が高められている。



過日のBMWのリリースによると「BMWグループは、ALPINAブランドを取得し、ポートフォリオの拡充を図ることになった。BMWグループはALPINAの商標権を取得することで、ラグジュアリーカー・セグメントをより多様なものにする方針である」とある。

メルセデスにあって、BMWにないもの。それはラグジュアリーモデルのサブブランドだ。メルセデスはハイパフォーマンスモデルの「メルセデスAMG」、ラグジュアリーモデルには「メルセデス・マイバッハ」、電動モデルに「メルセデスEQ」というサブブランドを展開している。

対してBMWは、ハイパフォーマンスモデルは「BMW M」、電動モデルは「BMW i」があるが、ラグジュアリーブランドがない。これはあくまで想像だが、「BMWアルピナ」をラグジュアリーモデルのサブブランドとして展開していこうと考えているのだろう。

歴史のあるエクスクルーシブなブランドが欲しいBMWと、キャブレーターとクランクシャフトを紋章に掲げ、電気自動車は手掛けないというアルピナ社にとって、協力関係の解消は、未来への挑戦に向けたポジティブな試みであると捉えることができる。ちなみに現アルピナ社はこれまで手掛けたBMWアルピナ車のメンテナンスやクラシックモデルのレストアなどは2026年以降も引き続き継続していくというから、いまのうちにアルピナを手に入れて大事に乗り継いでいくのも、悪くない選択と言えるかもしれない。


文:藤野太一 写真:三浦孝明
Words: Taichi FUJINO Photography: Takaaki MIURA

藤野太一

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