ハーレーダビッドソン史上最大排気量1997ccを搭載!CVOシリーズ新型車に試乗

Ryota SATO、Harley-Davidson Japan

ハーレーダビッドソンは6月、プレミアムモデル/CVOシリーズに加わった2つの新型車「CVOストリートグライド」と「CVOロードグライド」を発表。そして8月に富士スピードウェイで主催した複合イベント/ブルースカイヘブンで、両モデルの試乗会を行った。魅力あふれる2台を紹介する。





ハーレーダビッドソン(以下「HD」)は、まぎれもなくプレミアムブランドとして君臨している。昨年、日本では久しぶりに登録台数が1万台を越え、輸入車ブランドの中でも、その数は群を抜いている。他ブランドのほとんどが、スポーツモデルやツーリングモデルなど、多様なモデルカテゴリーや、異なる形式と排気量のエンジンを搭載するモデルを有しているのに対し、V型2気筒エンジンに特化し、かつて日本では“アメリカン”と呼ばれたクルーザーモデルのみをラインナップしている点においても、HDは特別な存在と言えるだろう。

そのHDラインナップのなかでもさらに特別な存在が、今回あらたに新型車をくわえたCVOシリーズだ。「CVO(シー・ブイ・オー)」とはカスタム・ビークル・オペレーションの頭文字。通常モデルラインナップからは一歩踏み込んだ新しい技術や匠の技を投入したパーツの装着やペイントを採用したモデルを意味する。四輪では広く知られている、メルセデスベンツにとってのAMGや、BMWにとってのMシリーズといえば、イメージしやすいかもしれない。



2台の新型車「CVOストリートグライド」「CVOロードグライド」は、これまでのCVOとはちょっと違う。それはHDが拒むように遠ざけてきた電子制御技術を満載し、またストリートグライドとロードグライドという、HD人気モデルのフェイスリフトという合わせ技だったからだ。



HDは2020年に現CEOヨッヘン・ツアイツが就任した直後、それまで発表していた、電動バイクをはじめとする電動モビリティや小排気量車の開発やモデル拡充と言った中長期戦略を一変。コアセグメントに投資してさらなる成長を目指す、新しい中長期戦略を発表した。その際に電動バイクブランドを分社化し、電動バイク戦略も一変した。それはさておき、そこで強化すると発表したコアセグメントとは、HDのツーリン・ファミリーであり、そのコアモデルがロードグライドとストリートグライドなのだ。CVOというエクスクルーシブモデルでのフェイスリフトでありながら、スタンダードモデルにも採用されるのではないかと期待させるアプローチは、なかなか面白い。



バットウィングと呼ばれるコウモリが羽を広げたようなカウルをフロントフォークにマウントするストリートグライドは、オッサン臭いHDのイメージを一新し、アクティブで若々しいHDイメージを作り上げた立役者だ。そのバッドウィングのカタチを一新させるのは至難の業であっただろうが、それを見事に成し遂げている。

そのストリートグライドの若々しさとアクティブなイメージをさらに発展させ、シャークノーズと呼ばれるフレームマウントの大型カウルを装着し、さらなるハイパフォーマンス化と、より高い速度域での走行安定性や居住空間の快適性を追求。瞬く間にHDのメインモデルへと成長したのがロードグライドだ。サメの頭部のようなシルエットのそのカウルには二灯ヘッドライトが採用されていたが、その伝統を破り、最新のLEDテクノロジーを駆使したヘッドライトシステムを採用。にもかかわらず、どこからみてもロードグライドらしく、しかし新しさも感じるデザインへと進化していた。

風洞実験によって空力や、居住空間の快適性を追求したそれらカウルの中には、12.3インチTFTカラータッチスクリーンを装備。3種類のビューオプションでカスタマイズ可能で、Appleのいくつかの機能をスクリーン上で楽しむことができる。またRockford社製のFosgate Stage II 4スピーカーオーディオシステムを装備。新しい500W RMSアンプによってプレミアムサウンドも楽しめる。



エンジンにも注目の技術が投入された。ミルウォーキーエイトVVT121と名付けられたそのエンジンは、HD史上最大の1997cc。出力特性やエンジンブレーキ、トラクションコントロールを合わせて制御する、ロード、スポーツ、レインの3つのライディングモードと、各設定を詳細に変更できる2つのカスタムモードも搭載。これまで通り空冷V型2気OHVというエンジン形式は継承しながら、排気バルブ周りを水冷化して冷却効果を上げるツインクールド・システムも採用している。





またVVT=可変バルブタイミングシステムを搭載。吸気バルブと排気バルブの開閉タイミングを変更することで、トルクやパワーの発生回転域を管理し、低回転域での力強さと高回転域の伸びの良さなど、VVTシステム無しでは達成が難しい、1つのエンジンで異なるキャラクターを作り上げることができるほか、各回転域で高い燃焼効率を得られることから燃費向上も達成している。

このVVTの効果は、走り出すとすぐに感じることができる。エンジンおよびフレームや足周りといったプラットフォームを共有する「CVOストリートグライド」と「CVOロードグライド」は、いずれもエンジンの回転上昇がともに軽く、力強い。様々な変更によって最高出力も最大トルクも、従来モデルからおおよそ10%ほど向上。その力強さはもちろんだが、シフトアップ/ダウンによる加減速の滑らかさによって扱いやすさが増している。



シャシー周りの進化も大きい。従来モデルに比べ15kgほど軽量化にくわえ、倒立フォークなど前後サスペンションをアップグレード。ブレーキ周りも強化されている。それらの総合的なパフォーマンスの向上により、軽さと扱いやすさが引き立っているのである。

いつかは乗ってみたい。多くのライダーをそんな風に思わせるHDは、アガリのバイクのように思われている。しかし、いますぐその考えは捨てた方が良い。先述したように、最新のHDツーリングファミリーは、長距離を快適に、そして速く走るために進化している。そして「CVOストリートグライド」と「CVOロードグライド」の2台の新型車は、その快適さと速さを、ひとつ、いやふたつ上のランクに引き上げている。こんなバイクこそ、体力があるいま、徹底的に乗り倒すべきだからだ。

さて記事の最後に、「CVOストリートグライド」と「CVOロードグライド」の試乗会が行われたHDのビッグイベント「ブルースカイヘブン」においても、少し触れておきたい。

通称“ブルスカ”はHDジャパン主催でありながら、メーカーはもちろんバイク乗りに限定することなく、音楽やグルメ、ショッピングやキャンプを複合的に絡めた“フェス”である。今年は特に、FMラジオ局J-WAVEの後援を得て、出演アーティストの注目度を高めるなど、音楽フェスの色合いを強めた。そして今年は、HDブランド創立120年のアニバーサリーであり、そのヒストリーにスポットを当てた展示なども行われた。来場者は、昨年を上回る9500人。富士スピードウェイを貸切り、この規模のイベントが開催できるのも、HDの底力なのだ。


文:河野正士 Words:Tadashi KONO
写真:佐藤亮太、ハーレーダビッドソン ジャパン Photography:Ryota SATO、Harley-Davidson Japan

河野正士

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