フェラーリ400iの「プロトタイプ」として活躍した、365GT4 2+2がオークションに登場!

Darren Capp ©2023 Courtesy of RM Sotheby's

去る5月10日から11日にかけてヒストリック・グランプリが開催された期間中に、モナコにてRMサザビーズのオークションが開催された。ヒストリック・グランプリ参加者をターゲットにしているオークション、と言っても過言ではない。メモラビリアをはじめ、新旧様々な車両、そしてヒストリック・グランプリ開催時期だけあって、ヒストリック・レースマシンも多数出品されていた。

そんなオークション出品車両のなかで、ちょっと気になった1台がフェラーリ400i 'Prototipo'(プロトタイプ)。1975年に365 GT4 2+2として完成し、ベージュの内装にアルジェント・メタリツァートで仕上げられたシャシーNo.18415は、車両開発とテストのためにマラネッロのファクトリーに保管されていた個体だ。





マラネッロ・コンセッショナリーズ・アーカイブのトニー・ウィリスからの手紙によると、このフェラーリにはオートマチック・トランスミッション(GM製THM400 3速)と365 GT4 2+2よりも大きな4.8リッターV12エンジンが搭載され当初はキャブレター、そしてテストカーとして使用されていた時期にはフューエル・インジェクションを搭載していた。当該車両はスクーデリア・フェラーリのエース、ニキ・ラウダがハンドルを握ったこともある、と言い伝えられている。



400iは400の後継車で12気筒、フューエル・インジェクションを搭載したFRグランドツアラーだった。なお、マニュアル・トランスミッションを搭載したものは「400i GT」と呼ばれていた。400iは1980年から1985年まで販売され400と同じ4.8リッターV12エンジンを搭載していたが、キャブレターに代わってボッシュのKジェトロニック燃料噴射システムが採用された。当初、400iの最高出力は306ps/6500rpmだったが、後に内外装の改良とともに最高出力は311psにまで引き上げられた。1986年、412へと進化するまでに900台弱の400iが生産された、と考えると実はF40よりもレアな存在である。







RMサザビーズの車両解説ではフェラーリの専門家であるマルセル・マッシーニのレポートを引用し、当該車両は1980年3月に公道登録され翌月に最初のオーナーに売却されたことが記されている。その後、6人のオーナーの手を経て、2002年にイタリアから輸出された。2017年に再び当該車両が姿を現し、オーストラリア・タスマニアのフェラーリ愛好家の手に渡り、2020年にオークション出品者が入手したという。





当該車両には多数のテスト資料が付属している、という歴史的な価値が見出せる個体ではあるものの、走らせるには“それなり”に手を入れる必要があった。予想落札価格は6万~8万ユーロと見積もられていたが、実際には4万250ドルとやや拍子抜けな結果に終わった、と言わざるを得ない。そのほかの落札車両も一部のレースマシンを除くと全般的にやや弱気であったのは、何かの前触れなのだろうか?


文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)
Photography: Darren Capp ©2023 Courtesy of RM Sotheby's

古賀貴司(自動車王国)

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