クラシックフェラーリが再び息を吹きこまれる│フェラーリ・クラシケとは?

Photography:Ferrari Media Center

フェラーリ・クラシケとは、フェラーリのクラシックカーのレストアとメインテナンスを行う、イタリア本社マラネッロにある専門部署の名称であり、そのシステムのことである。マラネッロで製造されたオリジナル車両が、再び同じ場所で新たな息吹を吹き込まれるのだ。

フェラーリ・クラシケでは、製造から20年を経過した市販GTロードカー、および製造年に関わらずすべてのフェラーリ・コンペティションカー(F1などのシングルシーターを含む)を対象に車両認定証明書の発行を行っている。車両認定証明書は、その車両が「フェラーリ真正」であることを公式に証明するものであり、オーナーが売却する際の、言わば保証書にもなるという。



フェラーリ・クラシケは、フェラーリ本社の歴史あるファクトリーを使用して2006年7月に創設されたもので、フェラーリ車がオリジナルデザインの特徴を長い間維持していくために、オーナーが安心して走行でき、最大限のパフォーマンスをいつでも発揮できることを可能にすることを目的にしている。そのため、なんと1974年以降に製造したすべてのアッセンブリィシート(組立図)がマラネッロの大規模な資料庫に保管されており、いつでも検証が可能になっていることは興味深い。

レストアおよびパーツの供給についても体制は整っている。特にクラシックモデルのレストアは極めて繊細な作業をともなうが、仮にパーツがオリジナルのものではないことが判明した場合でも、フェラーリ・クラシケがオーナーの要望に基づき純正状態にレストアすることが可能である。オリジナルパーツの製造と供給はすべて、フェラーリ・クラシケの修復およびメインテナンス作業の一環であり、事実フェラーリモデルに国際的な名声をもたらした車種は、パフォーマンス維持に注力したモデルばかりであるからだ。



認定書の発行にあたっては、世界中のフェラーリ正規ディーラーもしくはマラネッロにあるフェラーリ・クラシケの専門部署において検査が行われる。COCER(認定委員会)と呼ばれる特別専門委員会(議長はフェラーリSpA副会長のピエロ・フェラーリ)が、フェラーリの膨大なアーカイブを活用して、認定依頼のあった個々の車両の技術的な特性を評価する。車両の技術的な検証は、その車両が完全に機能しているか、シャシーやエンジン、ギアボックス、トランスミッション、サスペンション、ブレーキ、ホイール、ボディ、インテリアなどがオリジナルの状態であるか、または少なくともオリジナルのスペックに適合しているかを特定するものであり、認定プロセスの中でも最も重要なステップといえる。

クラシケの目的はフェラーリ車がもつ伝統の保護・保証であるが、オーナーにとってのメリットは、売却時の優位性やフェラーリ主催の公式イベントへの参加が可能になることもうれしい。

また2009年には新たに「ヒストリック・カー認定書( Attestation for vehicles ofhistoric interest)」を導入した。これはフェラーリ・クラシケの基準には合致しないものの、コンペティションへの参加、もしくは国際的に認められるショーへの出品といった実績が確認されたフェラーリ車に対して歴史的価値があると判断された場合に適用される認定書だ。



認定要件としては生産当時、①現状の仕様でイタリア国内外の競技に参戦したことがある。または②製造から10年以内に国際的に著名なデザイナーやコーチビルダーによる変更が加えられた結果、現状の仕様となっているモデルで、国際的に認められているショーやクラシックカーコンクールにそのままの仕様で出品、もしくは主要な自動車イベントに出品されたという実績があること、のふたつである。特に上記の2番目の要件を満たした場合はシェル・ヒストリック・チャレンジや、フェラーリが主催するクラシックカー・イベントに参加することが可能になる。


クラシケ等で認定書を取得する費用や期間は車両によって異なるが、伝統を受け継ぐ意味においてその価値は計り知れない。クラシケに残されたオーナーのコメントシートには、技術者の専門性の高い作業に対する賛辞が多数記載されているという。

文:オクタン編集部 Words:Octane Japan  写真:Ferrari Media Center 

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