コレクターだからこそ価値がわかる|フェラーリ250 カリフォルニア・スパイダーが特別な存在である理由

1961年式フェラーリ 250GT SWB(Photography:James Lipman)

フェラーリ250 カリフォルニア・スパイダーほど、コレクターにとって羨望に値する車は数少ない。しかし、なにがこの車をこれほどまでに特別な存在にしているのだろうか

フェラーリ250カリフォルニア・スパイダーが登場する映画がある。1986年に公開され、若きマシュー・ブロデリックが主演を務めた映画『フェリスはある朝突然に』だ。その中に「ビューラー?ビューラー?ビューラー?」というセルフがある。ある程度年齢をいった人ならば、この謎めいた言葉の意味がお分かりかもしれない。

だが、劇中で実際に使われたのは、グラスファイバー製ボディのレプリカであった。1980年代半ばの当時でさえ、カリフォルニア・スパイダーは、低額予算の映画に使うにはとてつもなく高価な車だったからだ。しかし、この映画をきっかけに、カリフォルニア・スパイダーが究極のソフトトップ・クラシックカーとして、その名を馳せるようになったことは間違いない。ノエル・カワードがチープな音楽についてそう語ったように、予算のない映画のどこにそんな力があるのかと疑う人もいるかもしれない。だが、2013年のオークションでこのレプリカの"フェリス・ビューラー・フェラーリ"についた落札価格は、23万5000ドルと、FRP製のレプリカとしては悪くない額だ。

なぜ、カリフォルニア・スパイダーが求められるのか
言うまでもなく、本物のカリフォルニア・スパイダーの価値は、それとは比べ物にもならないほど高い。オクタン日本版 Vol.09で掲載したバイヨン・コレクションのバーンファインドが、アールキュリアル主催の2015年レトロモビル・オークションに掛けられた時の落札額は、1640万ユーロにも達した。錆に覆われ、あちこちにフィラーが施され、ビニールのトリム、そしてオリジナルと異なるバンパーとフードフレームが装備された車でさえ、これほどの価値がある。

しかしこのバイヨンカーが確かに持っていたのは、人を虜にする、値を付けられないほどの魅力である。250 GTO以降、カリフォルニア・スパイダーは「史上もっとも価値の高いクラシック・フェラーリ」となった。

「値が付けられないほど」とはいえ、すべてには値段があり、フェラーリも例外ではない。今回特集しているカリフォルニア・スパイダーは、2017年1月19日、アリゾナ州のスコッツデールで行われるオークションに供されたが、ボナムスは1000万ドルの落札価格を見込んだ。正直な話、いったいこの車にそんな価値があるのだろうか。

スイスを拠点とするフェラーリの歴史研究家、マルセル・マッシーニは、この車がアイコン的なコレクターズフェラーリだからだと言った。

「カリフォルニアという名前がすべてを語っています。希少なソフトトップのフェラーリがスウィンギング・シックスティーズと呼ばれた1960年代のフレンチ・リヴィエラを走る姿を想像してみてください。あらゆるスターやVIPが乗ってきたこの車は今、エンスージアストにとって絶対に手に入れなければならない車なのです」

今回取材したシャシーナンバー2277GTのオーナーであり、ロンドンを拠点とするヘキサゴン社を経営するポール・マイケルズも、この意見に同意し、さらに外見だけでなく他にも数多くの魅力があると語った。「カットオフルーフの250 SWBは、すべてが完璧に揃った1台なのです」と言うのだ。"2277GT"を11年間にわたって所有し、ヨーロッパのクラシックカーラリーで何千マイルも走らせてきた彼は、誰よりもこの車を知り尽くしているに違いない。

カリフォルニア・スパイダーは、フレンチ・リヴィエラで絶大な人気を誇っていたが、その名前が示すように、実際はアメリカをターゲットとしていた。名付け親は、ノースアメリカンレーシングチーム(NART)を設立したイタリア生まれのアメリカ人、ルイジ・キネッティ。または西海岸に拠点を置いていた彼のエージェント、ジョン・フォン・ノイマンのどちらかがだろうと言われている。サンタモニカでもラグナ・セカでも馴染むであろう、スポーティなフェラーリは需要があるはずだと踏んだのだ。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:渡辺千香子(CK Transcreations Ltd.) Translation:Chikako WATANABE (CK Transcreations Ltd.) Words:Mark Dixon Photography:James Lipman 取材協力:ポール・マイケルズ、キャメロン・ミッチェル、フィリップ・キリアコウ、ベン・ホ

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