伝説のラリーカーコレクターにインタビュー│そのきっかけとは?

Photography: Mark Dixon

アイルランド出身の実業家で慈善家のジョン・カンピオンは、決して有名とはいえないラリードライバーに触発され、見事なカーコレクションを作り上げた。

16歳で学業を終えたジョン・カンピオンは、会社を設立し、ライブ・イベント用ポータブル発電機を製作する会社を設立。ついにはAC/DC、モトリークルー、マイケル・ジャクソンといったアーティストたちのツアーに同行するようになる。やがてフロリダに本拠を構えたジョンは、この地でカーコレクションを収集し始めた。

「私がたしか14歳か15歳のとき、父、母、兄、
そして私の4人でサーキット・オブ・アイルランド・ラリーを観戦に行きました」

「見に行ったのは森のなかのステージでした。寒くて霧が出ていて、まるでロード・オブ・ザ・リングのような世界でした。やがてドリフトしながらコーナーを駆け抜け、宙を舞うマシンが姿を現します。それを操っていたのがビリー・コールマンで、車はストラトスでした。このとき私は心底、度肝を抜かれたのです」

「数年後にアメリカに渡って経済的な余裕が生
まれると、私はルッソ、275、デイトナ、F40などを手に入れました。どれも素晴らしいコンディションでしたが、私の心にはなにも訴えかけてきませんでした」

「ストラトスを買ったのは2008年のことです。
アリタリア・カラーもマルク・アレンが乗ったストラトスも手に入れられず、プライベートチームが走らせた車を買い求めました。でも、考えてみたら、ストラトスを見たのは1978年以来のこと。車に乗り込んでエンジンを掛けると"ワオ!" という言葉が口をついて出てきました」

「自分の原点であるストラトスを手に入れたの
だから、次はデルタ・インテグラーレを買わなければいけない。その次は037です。続いてフルヴィア。ほかに見逃しているものはないか?そうだ、S4も買わないと!」 

ジョンは、その後も心のままにコレクションを
増やしていった。356、ロータス・コルティナMk1、アルファ・ジュリア……。最近、ここにランチアLC2が加わった。

では、エスコートは? 「ある日、アイルランド政府が支援するモータースポーツ・アイルランドから手紙を受け取りました。彼らは若いドライバーにチャンスを与えるためにチーム・アイルランドを結成。アイルランド政府が予算の一部を負担するから、残りを私に支払えといってきたのです。そこで、アイルランドのモータースポーツが何であるかを示すために、私はこのエスコートを作り上げ、ビリー・コールマンがかつて使っていたライセンスプレート、TIV250を取り付けたのです。私たちはニューヨークで募金活動を実施、ビリーと一緒に会場を訪れました。

そこでビリーは私のところにやってきて、とても小さな声でこう訊ねました。『シートに腰掛けてもいいですか?』。彼の瞳には涙が浮かんでいました。『エンジンをかけてもいいですか?』『 もちろん、どうぞ。私は、この車に乗っていたあなたに魅せられたのです』。そしてふたりで泣き始めました」

編集翻訳:大谷 達也 Transcreation: Tatsuya OTANI Words: David Lillywhite 

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