倉庫の片隅で眠っていた膨大な大衆車コレクション ~前編~

Photography: Junichi OKUMURA

スポーツカーや、スーパーカーといったクルマたちは、元々が高価だったこともあり、新車当時より大切に扱われ、後世に残る割合の高いことは間違いない。一般的に、それに対してファミリーカーは、家族構成の変化や、より良い利便性を求められるため、買い替えられ続けるだろう。生産台数の割には減少の運命を辿るというのは、当たり前のことだと言える。

もっとも我々クルマ好きはその範疇ではない。ホンダ N360を含めた昭和の
クルマたちの持ち主が亡くなり、倉庫の片隅で眠っていると、“N360”のオーナーズクラブの事務局を務めるK氏へと連絡があったのは、2019年3月初旬のことであった。さっそく、クラブ内でそれを報告すると、数名のクラブメンバーが、譲り受けたいと名乗りをあげた。そして、一度、そのN360を見学したいと持ち主に申し出たところ、実はN360だけでなく、なんと約150台の自動車たち、そして約300台のモーターサイクルという全く想像もし得なかった超えたコレクションがあることが判明したのだ。

最初に案内された保管場所に足を踏み込むと、ところ狭しと(とは言っても広い倉庫なのだが、、、、)並んだ戦後からのビジネスバイクを中心としたモーターサイクルが目に飛び込んできた。

モーターサイクルに圧倒されながらも横長になっている倉庫の奥を確認すると、数台の国産大衆車たちに気づいた。そして、この倉庫には空調が入れられており、高温多湿からクルマやモーターサイクルを守っているのが分かった。

そのコレクションは、地場産業が盛んな地で、世界的水準で“ある物”の加
工技術を持つ工場の経営者が長年に渡り集めたもの。その膨大なコレクションは、数年前に社長が亡くなってからは、遺族もどうにかできる数ではなく、近隣の自動車修理販売業者などに相談するも、台数の多さからどこも引き受けてくれなかったそうだ。相談を受けた自動車部品を製造販売するワイズスクエア代表の塚野さんがコレクションを一括して引き継ぐこととなった。その塚野さんと仕事の取引のある人物と懇意にしているN360エンジョイクラブの事務局担当の菊島氏へ話がきたのである。

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ニッサン・セドリック・カスタム、ダイハツ・コンパーノ、トヨタ・パブリカといった数台の大衆車も“すこぶる良い状態”で保管されている。

そして、3月某日、N360エンジョイクラブのメンバーたちが、N360を見学に
行くというので、筆者も同行させてもらうことにした。新幹線駅でメンバーと待ち合わせ、迎えに来てくれた塚野さんの案内で、まずは一つ目の倉庫へ。

鍵を開けて大きな引き戸を開けると、まず目に飛び込んできたのは、無数の
モーターサイクル。ラビット、シルバーピジョンといったスクーターや、ホンダ、ヤマハなどのビジネスバイクに混じりトーハツも数台が見える。パッと見渡しただけでも優に100台を超えている。そして、ここには数台のクルマたち

レストアプロジェクトのようなモーターサイクルが、ひとまとめになっているスペースには、メグロやトーハツ、丸正、ブリヂストンといった国産モーターサイクルの黎明期を支えたメーカーのモデルも多くあった。

前オーナーはコレクションすべての個体をチェックし、いつ動態状態にしたかなどを、こうした札に記していた。この“不要”の札は“ゴミ”という意味ではなく、動態のため、整備は不要という意味だ。

ここはまだ整理しきれないていないモーターサイクルをストックしてある場
所だと塚野さんは説明してくれた。倉庫2階へ上がると、モペットやスクーターなどの原動機付自転車が並べられており、さらには新品のシートやタンクといった予備のパーツたちが、棚に整理されていた。(後編へ続く)

文:奥村純一 Words: Junichi OKUMURA

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