200台以上のマイクロカー!世界一のコレクターが語るすべてのはじまり

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「わたしはコレクターだ。収集家ではない」と世界一のコレクションを作り上げたブルース・ワイナーは言う。その違いはこうだ。

「収集家は何の知識も持ち合わせないでただ買
っている。コレクターとは、対象について知っておくべき事柄について知識があり、深く理解している者のことだ」。

ワイナーは間違いなくコレクターだ。マイクロカーを200台以上所有するだけでなく、それに関する文献を5万冊以上、さらに100万ドルは下らないというマイクロカーの模型のコレクションも手元に集めた。



しかしワイナーはマイクロカーを手放すことに決め、ジョージア州マディソンにあるワイナーの私設博物館で2月に開催される2日間のイベントでそのコレクションを販売した。アイテムにはネオンサインや子供用乗り物、年代物の自動販売機も含まれ、競売会社RMは、オークションでの売り上げが300万ドル超になると見込まれた。

それは高額だが、ワイナーにとっては人生を変えるほどではない。2004年には所有していた菓子メーカーのコンコルド・コンフェクションズ(有名なダブル・バブルガムブランドを所有する)を推定1億8900万ドルで売却しているのだ。

その当時すでにワイナーはマイクロカーに入れ込んでいた。それも初めてではなかった。彼はそれをこのように振り返っている。「マイクロカーへ興味をもちはじめたのは、1991年『ヘミングス・モーター・ニュース』の記事を読んだことがきっかけだった。あらゆるクラブに入り、あらゆる大会へ行き、あらゆる文献を読み、それから実際にマイクロカーを買うことを始めた。仲間、旅、学習など、趣味に求めるすべての要素がそなわっていて、大きな楽しみをもたらした。なかでも一番興奮するのは、珍しいモデルを追跡し見つけ出すことだ。以前、ドイツのあるカー・コレクションを11年間追い続けた。6年経ってオーナーが亡くなってしまい、それを相続したオーナーの姉妹から入手するのにさらに5年かかった」。



1997年、ワイナーは、自分の最初のマイクロカーのコレクションをロンドンのクリスティーズにおいて約100万ドルで売った。それは新聞の見出しに格好のネタだった。「バブルガム王がバブルカーを売る」。

しかし翌日にはまた別のマイクロカーに熱を上げていた。まとめて4台のマイクロカーを買い、3カ月後にはドイツの博物館の所有物をすべて手に入れていた。

「その時、ジョージアに自分の博物館を建てよ
うと決めたんだ。一般に公開して、それ以来、週末にはここに平均600人が訪れる。この何年間かで、500台以上のマイクロカーを所有した。ある時期にはメッサーシュミットを90台持っていた。だけど今はもう、そんなにたくさんは持っていたくない」。

ワイナーは、博物館のスタッフ以外にも高度な技術を持つメカニックを雇っている。長年放っておかれたマイクロカー、彼いわく「ダイヤモンドの原石」をレストアして「王冠の宝石」にするためだ。

ワイナーのコレクションは、世界最高のものだ。それにはもちろんこれまで製造されたすべてのマイクロカーの中でもっとも良いもの、もっとも珍しいものも含まれている。1940年代後半の技術の乏しかった時代から1960年代初期にわたっており、マイクロカーの歴史を網羅している。ALCAヴォルペからツェンダップ・ヤヌスまで、すべてが揃っている。ドア、シート、ヘッドライトがそれぞれ1つしかない史上最小の市販車、1964年のピールP50、世界唯一の完全オリジナルのミヴァリーノ、航空機を応用したヴォワザン・バイスクーターC31が2台。さらには、1953年のKR175から、現存する唯一のKR201スポーツ、最高速度70マイルに達し市販マイクロカー最速と言われる非常に珍しいタイガーまで、ワイナーのコレクションにはメッサーシュミットのフルラインナップが含まれる。もちろん、バブルカーの代表イセッタもたくさんある。警察バージョン、ピックアップ、狩猟用、人気の高いバブルウィンドウのカブリオレ。

っと変わったものが良ければ、1959年のBMWイセッタに730bhpシボレーV8を積んだものもある。これはアメリカの模型ブランド、ホットウィールのおもちゃにもなった。



「これでマイクロカーをたくさん集めるのは終
わり。3つか4つは残す。もしかしたら7つになるかも。だがそれで終わりだ。博物館をもち、保険をかけ、管理人を雇い、そういうことのひとつひとつは重荷になるものだ。いずれにしても、売ることで、世界の誰かと共有することになる」。

しかし、ワイナーの貪欲な収集癖に終わりはない。現在ハマっているのは、VWとイギリスのスポーツカーだ(走行距離50マイル以下のTR6が8台もあった)。またクルマ以外のコレクションも、マシンガン、武器、腕時計、アンティークラジオ、さらにお菓子まで、その数は数千にのぼり、時代は1800年にまでさかのぼる。

「追跡のスリルなんだ」とワイナーは言う。「先
日息子が、ある銃を探しているが見つけられない、現存するものは100丁しかないと言う。100丁? そんなものマイクロカーの世界では100万台に相当する。私は1時間でその銃を見つけてやった。マイクロカーに比べれば、100丁もある銃の1丁見つけることなんて、目隠しして片手を縛られていてもできるさ」

世界にはすごいコレクターがいる。そして、どんなにマイクロでマニアックなものでも、上手く流通させる仕組みがあるのだ。

編集翻訳:藤野 太一 Transcreation: Taichi FUJINO 原文翻訳:木下 恵 Transcreation: Megumi KINOSHITA Words: Simon De Burton

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