「腹に響く」3台のみ製造されたアストンマーティンとは?

Pendine

アストンマーティンV8ヴァンテージ・ザガートは製造わずか52 台。写真は、それ以上にスペシャルな3台のみのプリ・プロダクション・プロトタイプである。
 
この1980 年代のスーパーカーは、まずV8ヴァンテージの後席を取り外し、ホイールベースを数インチ切り詰めるところから始まった。当初は燃料噴射式にする計画だったが、アストンマーティンは大型のウェバー48キャブレターを選び、5.3リッターのエンジンの出力を400bhpにまで高めた。
 
ザガートはこれをスーパーモダンなデザインに仕上げた。フラットサーフェスの窓と、巨大なエアボックスを収めるためのボンネットのパワーバルジが特徴である。ボディの製造もザガートが担当し、1台1台、アルミパネルを手作業で叩き出してイタリアで造られた。完成したV8 ザガートは市販車で最高の速さを誇り、0-60mph加速は5秒を切る。最高速はアストンマーティン曰く190mphで、『Autocar』誌がフランスでテストしたプロトタイプは186mphに達した。


 
このグラディエーターレッドのシャシーナンバー20011をオーダーしたのは、アストンマーティンのエンスージアストであるウェンズリー・ヘイデン- ベイリーで、当時のCEOヴィクター・ゴーントレットの友人でもあった。通常の製造に先駆けて造られ、ワンオフの仕様も多い。たとえばファクトリーの手でエンジンの出力を432bhpにまで高めた例は、これを含めて4 台しか知られていない。そのためにキャブレターのチョークを50mmに拡大し、より大型のエアボックスと特殊な排気システムを備える。また、ロールバーを装備するのも2 台のみだ。
 


車内には、ウォルナットのセンターコンソールに本物の証しであるプレートが付けられている。ドアトリムも一般のV8 ザガートとはまったく異なる仕様だ。
 
現オーナーは3人目で、20年前から面倒を見てきた。ペブルビーチで受賞経験のあるニュージーランドのスペシャリスト、オート・レストレーションズで、2009〜2013年に広範囲に及ぶレストアを受けている。エンスージアストの間ではよく知られた1 台であり、2016年にはコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステでも展示された。


 
現在はビスター・ヘリテージにあるペンダインで販売中。アストンマーティン・ヘリテージトラストの"重要な車" にもリストアップされている比類なき1 台だ。整備や所有の履歴がすべて揃っている上に、製造時にファクトリーで書かれた興味深い覚書も付属する。現オーナーによれば、これまでにドライブしたどのV8 ザガートより"腹に響く"1 台だという。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA

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