異種交配された3台│イタリアンデザインとアメリカンV8エンジンの競演①

Photography: Paul Harmer



まずはトリオの中で最も堅実な印象のインターセプターから試そう。試乗した1967年Mk. Iは、製造拠点をヴィニャーレからイギリスに移した直後のモデルだ。オーナーであるナイジェル・マクモリンはまだ二人目の所有者で、2005年に購入。長年未使用だったのでエンジンはリビルドしたが、それ以外に必要なのはホイールのレストア程度だったという。

「それと、ジャガーEタイプのフロントディスクとキャリパーも取り付けたよ。オリジナルはダンロップのディスクブレーキだが、パッドの接触面が50ペンス硬貨くらいの狭さだったから、急ブレーキを避けるために6台前を注視している必要があったんだ」とナイジェルは話す。
 
見てのとおり、インターセプターのインテリアはイタリアン・エキゾチカにも負けていない。ミウラ風の深いメーターカウルと、ナルディによく似た大径のステアリングが目を引く。初めてドライブする人でも、走りの印象は想像通りのはずだ。柔らかで心地のよいレザーシート、クロームリムの大きなメーター越しに見る、広々としたフロントウィンドウからの眺め。V8は低く穏やかに唸り、ギアボックスは滑らかに動く。十分に速いものの、スーパーカー並みとはいえない(当時の『Autocar』誌のテストによれば0-60mph加速は7.3秒で、1967年の車にしては立派だが)。非難しているのではない。落ち着いた走りと快適さこそがインターセプターの魅力であり、スピードはそれを支える要素にすぎないのだ。
 


オーナーのナイジェルはノンアシストのステアリングにパワーアシストを取り付けた。これが、どうも進行方向の感触が曖昧で、しっくりこない。「そういう車だ」と書けば、インターセプターを所有する編集長は怒るだろう。事実、そんなことはない。
 
この点を除けば満点だ。特に秀逸なのが乗り心地で、高速でも低速でも気持ちのよいしなやかさである。重要なのが"低速でも"という部分だ。高速道路で牙を剥き出しているときだけでなく、都市でも小さな町でも乗員を快適に運ぶことができて初めて真のGTといえる。
 
要するに、インターセプターは日常使いができる車であり、それは誕生から半世紀以上が過ぎた現代にも当てはまる。だからこそ、アップグレードした様々な"現代版"インターセプターが販売されているのだ。クロプレディブリッジ・ガレージやジェンセン・インターナショナル・オートモーティブ(JIA)では、現代の顧客の要望に応え、よりパワフルなエンジンを搭載している。JIAのインターセプターRをテストした『トップギア』の元司会者ジェレミー・クラークソンは、次のように書いている。「ラジオなんか必要ない。信号で止まるたびに誰かが窓を叩いて、『素敵な車に乗っているね』と声を掛けてくるのだから」


 
当時の人々の受け止めも同じだったとみえ、インターセプターは大成功を収めた(それでも1973~74年の石油危機に始まる世界的な景気後退をジェンセンが乗り切ることはできなかったが)。1971年には排気量が7.2リッターに拡大(四輪駆動の"FF"は、それより小型の383cu-in、6.3リッター)。
 
同年に"SP"が登場し、232台造られた。SPはシックス・パックの頭文字だ。インターセプターの名はついていないが、ツインチョーク・キャブレターを3基搭載する最もパワフルなバージョンである。ほかにコンバーチブルと、希少なノッチバックスタイルのクーペがあった。ただしベースはほとんど変わらず、パフォーマンスも横ばいだった。排ガス規制への対応で、排気量を拡大した分が相殺されてしまったからだ。

次回はイタリアン・エキゾチカ、イソ・グリフォをお届け。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Mark Dixon Photography: Paul Harmer

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