歴史上初めてユネスコに認められた車が持つストーリーとは?

Photography:Thomas Macabelli

これは、高名なイタリアのコレクター、コラード・ロプレストが所有する11台のアルファロメオ・ジュリエッタの話である。1台残らずすべて歴史的価値の高い貴重なコレクションについて、マッシモ・デルボが話を聞いた。今回はジュリエッタSZ"コーダトロンカ"プロトティーポをご紹介。


1961年 アルファロメオ・ジュリエッタSZ"コーダトロンカ"プロトティーポ
スプリント・ザガート(SZ)は、ショートホイールベース・シャシーをベースに、カロッツェリア・ザガートがトレードマークの空力と軽量化の技術を生かして開発した。そのため1959年の"ラウンドテール"SZは、当時のジェントルマンドライバーに選ばれるだけのスピードを備えていた。
 
しかし1960年に、新しいロータス・エリートのパフォーマンスに驚いたエリオ・ザガートは、SZを改良する必要性に気づいた。デザイナーのエルコーレ・スパーダの助けを借り、テールを断ち落として空力性能を向上させるウニバルト・カム教授の理論に従って、新しいボディワークを開発。アウトストラーダ上でのテストで、20km/hの速度向上を果たしたことを確認した。あまりに見事な結果に、ザガートは計器をチェックするようテスト中に求めたほどだ。1.3リッターのエンジンながら227km/hに達したことが信じられなかったのである。
 
写真は、この新型"コーダトロンカ"の開発に使われた最初のプロトタイプである。元はコーダトンダ(ラウンドテール)のシャシーナンバー170で、1961年に造られた。さらなる開発作業のあと、ジェントルマンドライバーのアルビーノ・ブティッキに売却され、何度かレースに出走。その後アメリカに渡ると、以来50年にわたって納屋に仕舞い込まれていた。それをコラード・ロプレストの友人が発見した。ロプレストは打ち明ける。

「電話を受けたとき、私は懐疑的でした。冗談だろうと思いながら飛行機に飛び乗りましたよ。ところが、納屋の扉が開くと驚異的なものが待っていました。現存する中で最も保存状態がよく、最もオリジナルのSZ、しかもプロトタイプだったのです」



「帰国すると、私はこの車をどう扱うべきか思案しました。レストアするのが惜しいほどオリジナルの状態ですが、そのままにするには劣化が進んでいたからです。しばらく考えて、半分だけレストアすることにしました。"レストア"といっても、貴重な絵画を修復する際に、すべて清掃してから、厳密に必要な箇所だけリタッチするのと同じやり方です。一切変更はせに、半車身は清掃して、剥がれかけたペイントチップは接着剤を注射器で使って注入し、アクリルガラスの小さなひび割れは修繕しました」

「そして考古学の教えに従って、残りの半車身は埃も含めてそのままで残しました。2016年にヴィラ・デステで初公開すると、レストアの新基準として多くの人から認められ、FIVAとユネスコによるベスト・プリザーブド賞に輝きました。歴史上初めてユネスコに認められた車になったというわけです」

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:渡辺千香子(CK Transcreations Ltd.) Translation:Chikako WATANABE (CK Transcreations Ltd.) Words:Massimo Delbo Photography:Archivio Zagato-Carrstudio

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