インディ500のボルグワーナートロフィー、彫像の製作者に独占インタビュー!

Images: INDYCAR

インディ500の覇者が勝利後に訪れるアメリカ・ノースカロライナ州にあるトライオンという小さな町。勝者がそこに赴く理由はなぜかご存じだろうか。インディ500を制した者のみが手にすることができるボルグワーナートロフィーの彫像の制作が、その町で行われているからである。

写真右に写るのがボルグワーナートロフィー。マシンと並べるとその大きさが際立つ。

トライオンに住む彫刻家ウィリアム・ベーレンズ氏は、過去30年にわたりボルグワーナートロフィーの彫像の制作を手掛けている。大きなトロフィーの側面にある歴代勝者の顔のひとつひとつを毎年制作しているのだ。

ウィリアム・ベーレンズ氏。

2020年インディ500は、先にもレポートしたように佐藤琢磨選手が2017年に次いで二度目の優勝を果たしている。まさに現在、今年のトロフィー用の彫像を作成しているベーレンズ氏に、octane.jpはインタビューをすることができた。



―まず、彫刻家としてのキャリア、プロフィールを教えてください。

私はプロフェッショナルの彫刻家として47年間活動しています。さまざまな形で肖像の彫刻にずっと専念してきました。 私は、ブロンズ、大理石(うち3つはワシントンの米国議会議事堂に置かれています)、そしてボルグワーナートロフィーの場合はスターリングシルバーを用いて製作します。 また、過去25年間にわたり、サンフランシスコ・ジャイアンツ本拠地であるオラクルパークにある5つの彫刻など、記念碑的な規模のスポーツ彫刻をブロンズで数多く製作してきました。

―インディ500のトロフィーの彫像は、いつから手掛けているのでしょうか。

1990年の優勝者であるアリー・ルイエンダイクの彫像が、私がボルグワーナートロフィー用に最初に手掛けたものです。

―トロフィー用の彫像の制作ステップを簡単に教えてください。

はじめに等身大の胸像を作ります。その後、粘土を用いてそのイメージを小さなサイズで形にします。この粘土から、高密度の歯科用石膏を鋳造する型を作ります。さらにこの石膏を彫って形を整え、シャープなディテールと滑らかな表面を出していきます。それから、石膏の別の型を作ります。これが完了すると、ロストワックス鋳造のプロセスが始まります。最初のステップは、ロウで肖像の複製用の型を作成することです。私がロウ型のディテールをチェックし再度精査したあとで、型はマスタージュエラー(宝石・宝飾職人)に送られます。マスタージュエラーはスターリングシルバーを型に注いで鋳造します。その後私のもとに戻ってきた粗いスターリングシルバーの鋳造物を、さらに磨きをかけて仕上げていきます。

佐藤琢磨選手の2017年の肖像。

―佐藤琢磨選手の彫像は2017年のものをベースにするのですか?それともまったく新しく作るのですか?

佐藤琢磨選手の彫像は、まったく新しいものを作りました。実は2017年に私が作った彼の彫刻は、私のスタジオの高い棚に保管しています。私はそれを詳しく見ようと棚から降ろすことはありません。2020年の彼の彫像はまったく新たなチャレンジだと考えていますので、3年前に行った自分の仕事の影響を受けたくありません。

―インディ500トロフィーの彫像を完成させるのに通常どのくらい時間がかかりますか?

合計で約3カ月かかります。


2017年にも佐藤琢磨選手はベーレンズ氏の工房を訪れている。そのときのエピソードについても訊ねてみた。



―2017年に佐藤琢磨選手がトライオンに来訪したときにはどんな話をしましたか?

初期のカートからフォーミュラワン、そしてインディカーにいたるまでの琢磨さんのレースキャリアの話はとても興味深い内容でした。F1参戦歴のなかで、どのサーキットがいちばんのお気に入りかと私は彼に訊ねてみました。彼はもちろん鈴鹿だと答えてくれましたよ!

幸運にも彼が私たちの小さな町に1泊してくれたので、彼に敬意を表して特別ディナーをアレンジしました。琢磨さんはとてもフレンドリーで魅力的な人で、尊敬に値します。私にとって、とても素敵な思い出ですよ。



今年もまたこの町で、ベーレンズ氏は佐藤琢磨選手との再会を果たすことになる。2020年の勝者の肖像があらたに加わった大きな大きなボルグワーナートロフィーが、2017年の初勝利のときと同様に佐藤選手とともに日本へ凱旋帰国するのだろうか。続報を楽しみに待ちたい。

文:オクタン日本版編集部 写真:INDYCAR

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