スクランブラー1200XEは、最先端テクノロジーで開発された普段着感覚で楽しめる、稀有な一台だ。

タンク底部からシート、そしてリアフェンダーへと流れる直線的なラインは、かつてスティーヴ・マックイーンが愛したビンテージ・トライアンフも採用していたオーセンティックなボディライン。それに合わせるようにデザインされたアップタイプの2本出しサイレンサーは、スクランブラーの伝統的なディテールだ。

ファッションのほか、インダストリアルデザインやカッティングエッジなテクノロジーの最前線であるイタリア・ミラノで、SUVやアドベンチャースタイルのバイクは、依然として人気が高い。身の回りにあるすべてのモノやコトで、自らのアイデンティティを表現する彼らにとって、デザインにおいても、テクノロジーにおいても、それらを統合したパフォーマンスにおいても、SUVやアドベンチャーバイクはうってつけのアイテムなのだ。

日本同様、慢性的な渋滞と駐車場&駐輪場問題を抱えるミラノにおいても、彼らはビジネスにもフォーマルにも、臆することなくそれらを使う。しかしそのスタイルはいたってカジュアルで、SUVやアドベンチャーバイクの起源である、オフロードでの逞しさや荒々しさを、見事に中和している。

そのイタリアと同様に、デザインとカルチャーを醸造し続けるイギリスにおいて生まれたこのトライアンフ・スクランブラー1200XEも、そのアドベンチャーバイクのDNAを持つモデルだ。いや正確には、アドベンチャーモデルの先祖である“スクランブラー”というカテゴリーを現代解釈したモデル、と表現した方が良いだろう。

バイクらしいシンプルなデザインは、街にもよく馴染む。過酷なラリーにも堪えるポテンシャルを持ちながら、カジュアルなスタイルのライダーとの相性も良い。


オンとオフを繋ぐ存在がスクランブラーだった
かつてバイクには、オフロードとオンロードというカテゴリー別けが存在しなかった。バイクが道を走り始めたときに舗装路はなく、都市部に舗装路が普及し始めてからも、郊外には依然として未舗装路が多くあった。そこを走るバイクは、エンジンやフレームといった車体の基本骨格を共有しながら、マフラーの位置やサスペンションの性能、ハンドル形状やシート形状を変更することで、オンロード寄りのモデルとオフロード寄りのモデルと、そのキャラクターを分けたのである。そのオフロード向けモデルが“スクランブラー”と呼ばれた。このオンロードとオフロードが絶妙にリンクするスクランブラーモデルこそ、アドベンチャーモデルの祖というワケだ。

等間隔爆発だった旧型トライアンフ2気筒エンジンから不等間隔爆発エンジンへと変更することで、エンジン内のパワーロスを解消。歯切れの良い排気音とともに、オフロードにおいてもオンロードにおいても、タイヤが路面をしっかりと掴む感覚を強めている。

ユニークなのは、スクランブラーモデルはその後発展し、オフロードでの走破性をさらに高めるため、長いサスペンションや大径ホイールなどオフロードバイク専用パーツを数多く採用し“オフロード専用モデル”が生まれる。そのオフロードモデルがさらに発展し、電子制御技術などの進化によってオフロードでの高い走破性に加え、オンロードでのスポーツ走行性能や長距離走行における快適性を高めたモデルがアドベンチャーモデル。要するにオフロードバイクは、進化によって先祖返りしたのである。

シート高は870mm。身長170cmのライダーが跨がれば、両方のつま先が着く程度。身長180cmなら両足のカカトが少し浮くくらいの足つき性。車体のバランスが良く、車体の押し引きは227kgという乾燥重量以上に軽く感じる。


文:河野正士 写真:高柳健 Words:Tadashi KONO Photography:Ken TAKAYANAGI

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