イタリアンラグジュアリーの殿堂へようこそ|ポルトローナ・フラウの魅力を学ぶ

Poltrona Frau


デザイナーへのInterview


大城健作/デザイナー
1977年 沖縄県生まれ。Lissoni AssociatiやBarberOsgerbyの勤務を経て、2015年KENSAKU OSHIROをミラノに設立。ポルトローナ・フラウからは、2016年にスツールの「レプリ」を、そして2018年にアームチェア「アラベスク」を発表。デザイン賞の受賞歴も多数。


ポルトローナ・フラウからライティングデスクをデザインして欲しいと依頼を受けた時、まずは現行のライティングデスクのデザインや形状や機能は、果たして今の時代に合っているのか? そこから考えました。もちろん手書きの文化がなくなるとは思いませんが、これだけデジタル化が進んだ現代に必要なライティングデスクとは何か?そこで思いついたのが新しい収納方法でした。これだけツールがコンパクト化したのであれば、もっと違った方法でもいいはず。それが2枚の天板の隙間を収納にするアイデアです」

ポルトローナ・フラウ東京青山での展示会のため、ミラノから帰国。今後は日本やアメリカにも拠点と作りたいという。

ライティングデスク『イレン』は天板部分にスライド式の天板を重ねる構造で、その隙間はノートパソコンがちょうど収まる。この隙間部分にはUSBポートがあり充電も可能だ。しかもコンパクトなデスクだが、スライドさせることで作業面も拡張できる。2枚の天板が浮いているように見えるクリアランスや高さのバランスもかなり考えられており、可動式と収納の新しい考え方でも、これまでのライティングデスクとは違った革新的なレベルに達したともいえる。しかし、"デジタル時代を意識した家具"だと、言い切るものでもないとも大城は語る。


スライド式の天板を備えた、新機軸のライティングデスク「イレン」。上面の天板の手前側が緩やかにカーブしており、肘を柔らかく受け止める。スライドテーブルは任意の場所で停止でき、その下にUSBポートなどが隠されている。W119〜149×D56×H79cm。130万4000円

「もちろん社会が変わっていく中で、家具も変化していくべきだとは思います。しかし早急に変化する必要はない。世の中が変化したとしても、寝て、起きて、寛いで…、といった人間の基本的な生活はあまり変わらない。便利な道具ができたとしても、徐々に体が馴染んでいく程度です。だから家具やインテリアも"静かな変化"でいいし、USBポートだって、目立たないところに隠しています。むしろこのライティングデスクは、仕事や思考に影響するかもしれません。引き出しではなく、オープンな場所にパソコンなどを収納するのなら、整理しながら作業することになる。それは頭の整理や仕事の整理にもなる。いわゆるウェルビーイング(Well-being=身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)にも繋がるとも思うのです」

さらに肘が当たる天板部分を柔らかにカーブさせているので、肌当たりが良くて仕事中の姿勢にもストレスを与えない。

「このカーブは数値的に追い込むのではなく、自分が実際に肘を当ててみて感覚的に決めたもの。よく見ないと気付かないけど、使う時にはすっと体に馴染む。肌に触れる場所にペレ・フラウレザーを使用したのも、冷たい近代的な家具ではなく、人に肌感と近い感触にしたかったから。人に寄り添う柔らかみのあるラインは、ポルトローナ・フラウの職人技術だからこそ可能。最新の技術も使いながらも、手仕事でしっかりと仕上げていく。そういった技術と伝統、職人の手仕事を融合できるブランドは本当に数が少ないですから」

現代的な機能性もありながら、どこか優しさを感じる『イレン』。そこには、大城だからこその日本的な美意識も隠れている。

「ポルトローナ・フラウの仕事では、どこかに"エレガンス"を取り入れることをテーマとしていて、今回は"所作の美しさ"を、デザインを通じて伝えたかった。従来の引き出し型の収納は、出し入れの際に自分の体が邪魔になって動作が途切れてしまうし、スムーズではない。『イレン』という名の元は、書道用語の『意連』です。離れている点と点や線との間にも意識が繋がることで、全体として美しいバランスの文字になるという考え方から命名しました。何か作業を始める時にデスクをスライドさせ、終わったらデスクを戻す。そういった動きのスムーズさが、バラバラの行為の中に美しい所作で繋がっている。そういう考え方は日本的ですが、ポルトローナ・フラウが僕を起用する理由として、思考や内面から出てくる日本的な美しさを求めていると思うし、それには応えたいですね」

『イレン』は、形状の美しさだけでなく、所作の美しさや触れた時の気持ちよさも含め、人が使って完成する家具なのだ。

バレリーナが軽やかにバランスをとる姿をイメージしたというアームチェア「アラベスク」。硬質ポリウレタン製の座面の柔らかなカーブが、体を優しく受け止めてくれる。W67×D82×H75(SH40)cm。73万8000円

しなやかなカーブを描く「レプリ」は、伝統的なキルティング細工と職人技から生まれるプリーツで、優美な表情を引き出す。スツールW39×D39×H46cm。18万円 オットマンや収納ボックス付きモデルもある。


ポルトローナ・フラウ東京青山

住所:東京都港区南青山5-2-13
電話:03-3400-4321
営業時間:11:00~19:00
定休日:毎週水曜日(※祝日は営業)

2フロアに分かれた店内には、新作から定番まで幅広く商品を展開。ストアイベントも多く行われており、ポルトローナ・フラウの様々な情報発信基地となっている。

7月18日まで新作展示会『FutureHeritage』開催。オクタン読者限定プレゼントも!


※下記URLから来場予約をするとオクタン読者限定キャンペーンとして先着10名にペレ・フラウレザー製「Iren」マウスパッドをプレゼント。
【来場予約フォーム】https://kap.jp/idc_otsuka/futureheritage_O


文:篠田哲生 インタビュー写真:前田晃(MAETTICO) Words:Tetsuo SHINODA Photography:Akira MAEDA (MAETTICO)

文:篠田哲生 インタビュー写真:前田晃(MAETTICO) Words:Tetsuo SHINODA Photography:Akira MAEDA (MAETTICO)

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