にわかに注目を集めるBMW「SHIROCAB(シロカブ)」の魅力とは?

SHIROCAB

まさに「ミイラ取りがミイラに」的な出会いであった。取材に行った自分が、そのまま「SHIROCAB乗り」になるなんて、まったく想像もしていなかったのだ。ついハズミで買ってしまった中古の3シリーズ・オープンカー。その仲間たちとの時間が、こんなにも面白くて、ぐいぐいハマっていってしまうとは……


3シリーズ史上、最も高剛性なカブリオレ


2020年11月、東京プリンスホテル第2駐車場でオクタンが開催したギャザリングイベント「Coffee & Cars」。その会場に、まず普段なら気にも留めないBMW 3シリーズのオープンカーが数台参加していた。型式でE46型と呼ばれたモデルである。オーナーたちは季節にあった揃いの黒いパーカーを着ていたが、バックにはくっきりと、その車を横から見たフォルム、そして「SHIROCAB」のロゴデザインがプリントしてある。どういった内容なのかオーナーに尋ねると、46型カブリオレを略してシロカブ(=SHIROCAB)と命名し、それを楽しむ愛好家の集いだという。実はこの3シリーズ、スペック的にも乗り味としても、「いま乗ってこそ楽しいのだ」と、金色ボディの所有者がおしえてくれた。

E46型とはBMW第4世代の3シリーズのこと。小型車が得意だったBMWらしく、スモール・ラグジュアリィカー・トップのポジションを確固たるものにした名車だ。シャシー剛性の高さは別格で、先代E36との対比で70%アップとされていたが、その弱点はやはり重さだった。バネ下重量減少を狙ってサスペンション部位にはアルミ材を多用。FR駆動方式のセダン328iの重量分布は、前後ほぼ50/50であった。

そのカブリオレは、日本では2000~2006年に発売された。搭載されるエンジンは「シルキー6」と呼ばれる当時BMWの主力である3リッター直6エンジン(E54B30)。総排気量2,979cc で、最高出力231ps/5900rpm。最大トルクは、89.6mmもの長いストロークのおかげで300Nm/3500rpmを発揮する。ボディデザインはフロントからAピラーまではクーペと共通だったが、ウエストラインおよび後部はカブリオレ専用だった。3層構造のソフトトップは電動式であり、25秒で開閉可能。乗車定員は4名で、後席にも大人が無理なく乗れる十分なスペースが用意された。しかも横転時にロールバーが立ち上がるなど、安全装備も充実していた。そしてBMWはこのカブリオレボディでも剛性の確保を忘れることなく、リアサイドを中心に強化メンバー材を張り巡らせ、フルオープンでもミシリとも言わない強いシャシーに仕上げたのだ。その結果、車重は1680㎏に! 加速こそ緩慢だが、ひとクラス上の乗り心地を確立している。

SHIROCAB の次のミーティングは翌月12月だと聞いた。テーマ的にはぴったりと思い、古巣カーセンサーの編集を誘って湘南までのツーリング取材に帯同した。週末の朝に大黒PAで待ち合わせ。黒いパーカーはプルオーバーと前ジッパーがあるようでおしゃれだ。また黒いニット帽もお揃いのようだが、これも冬のオープンには必須といえる。時間通りにスタートするが、集まった5台の走りを眺めながらとても驚いた。皆とても運転が上手いのだ。他の車両を邪魔することなく、フォーメーションを自在に変えてランデブー走行を楽しんでいる。首都高速湾岸線から横浜横須賀道路を通過し、あっという間にゴールに到着した。車を降りてからも、皆の笑顔が絶えない。彼らは年齢も職業も様々だが、自動車遊びについてはベテラン揃い。中にはとんでもないコレクターもいて驚くが、「カテゴリーが違うだけで、大切な1台という価値は同じ」と本気で楽しんでいる。

現在用意されるグッズはパーカー、ニット帽、Tシャツ、野球帽(黒が正式)、トートバッグ、マスクほか。オリジナルのアルミ製キーホルダーや特注のフロアマット、シートカバーなどを独自で製作するメンバーも。

それから何となくだが、自身のSHIROCAB探しが始まった。取材の帰途や休日に、ヤフオクやカーセンサーと睨めっこをしながら実車を確認しに足を伸ばす。もう登録から20年近く経ったモデルなので、走行距離の多寡は程度の目安にはならない。外装がきれいでも本革がキズだらけとか、エンジンは掛かるが異音がひどいなど、「これだ!」という1台にはなかなかお目にかかることがなかった。SHIROCABの会では、登録入会の順にナンバーが指定される。「46-01」は初号機と呼ばれ、私はギリギリ一桁の「46-09」の9号機に収まった。購入したのは初号機と同じ京都のショップで。ガレージ保管だったらしく、ヘッドライトのくすみはなく、大事に使われてきた形跡がありGood。東京に運んでもらってから車検を取得し、ひと通りの油脂交換を施した。他にボディコーティングやルームクリーニング、ホイールリペアをして、さらにご機嫌に仕上がった。いま愛車の中で、なぜか一番のお気に入りである。
 
GW明けにまたツーリングがあり、なんと17台全車が参加した。遠征先で衝動買いをした方を含め、現在総メンバーは23人になっている。希少なBMWアルピナも4台に増え、またマイナーチェンジ前後期型の2台保有というSHIROCAB猛者も現われた。私もときどきカーセンサーでチェックをするが、何となくだが少し相場が上がってきているような気配がある。



SHIROCABは大人の会なので入会基準のようなものはないが、あえて記すとすれば、
1. ナンバーは順番に『46-〇〇』にする(好きな番号は選べない)
2. 特注のディフレクターを装着する
3. Mスポ―ツグリルバーを装着する
4. SHIROCABグッズを身に纏う
5. メンバー間の意思疎通重視のため、ツーリングは原則助手席禁止(入会希望者は応相談)

MカラーのBMW文字がデザインされたディフレクター。後席は乗車できないが風の巻き込みはほぼ皆無になる。

このMスポ―ツグリルバーを装着することもSHIROCABメンバーである証。

メンバーはLINEグループにて活発に情報交換を行っている。それは掘り出し中古車、メンテナンスや交換部品から、新しいグッズのアイデアなど様々。正直なところ私自身はツルんで走ることをあまり好まなかったが、ついにSHIROCABの会でその楽しさに開眼してしまったようだ。いつまで続くかわからないが、こういった「乗り損ね名車」を探し出すことも、車好きにとって、ひとつの大きなチャンスだと理解。箸休めに1台いかがでしょうか。


文:堀江史朗(オクタン日本版編集長) 写真:SHIROCAB の会 Words:Shiro HORIE(Octane Japan) Photography:SHIROCAB

文:堀江史朗(オクタン日本版編集長) 写真:SHIROCAB の会 Words:Shiro HORIE(Octane Japan) Photography:SHIROCAB

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