今こそEVで復活してほしい!1970年代に存在した奇抜な小型の3輪モデル

Photography:Bond Cars

ボンド・バグという超小型車があったことを覚えておられるだろうか。奇抜な“ウェッジー”な1970年代のアイコンだが、クラシックカーとして手が届きやすいものや、楽しすぎる車がある。


1970年代に流行した懐かしいものを紹介するとき、『イージーライダー』たちが愛したバイクを思わせる自転車、ローリー・チョッパーには遠くおよばないものの、ブライト・オレンジのボンド・バグはなかなかのチョイスだと思う。適切な選択だといえるのは、これらは両方とも、オーグル・デザインスタジオのトム・カレンがデザインしたものだからだ。

1960年代後半、リライアントは地味なイメージの既存ランナップだけでなく、若くてヒップな客層へも同社の三輪モデルをアピールしようと考え、ウェッジーでスポーティーなルックスのマイクロカーを製作することを決定。そのデザインをトム・カレンが手掛けることになった。だが、リライアントは計画を断念。1970年代になって、同じく三輪車を手掛けていたボンドが、計画を引き継ぐことになった。

リライアント社とボンド社の先代モデルは、ともにボディが強靭で比較的軽量なFRP製であった。カレンはボンド・バグではFRP製の一体成型とし、一般的なドアの代わりに、大胆な前ヒンジのキャノピーを採用した。そのボディの下には、リア・サスペンションをコイル式に改めるなどの改良を受けたリライアント製シャシーを備え、リーガル社製のアルミニウム製4気筒701ccエンジンと、4速マニュアルギアボックスを備えていた。

そのコンパクトなパッケージングは素晴らしく、『スター・ウォーズ』映画の初作では、ルーク・スカイウォーカー用「ランドスピーダー」のパワートレーンとして使用されるほどであった。



発売されてから3種のモデルが登場した。29bhpの700Eは、サイドパネルとヒーター、そして乗降用キャノピー付きであった。もう少し高いパフォーマンスを求める客層向けの700ESは、改造されたシリンダーヘッドとさらに高い圧縮比により34bhpに高められていた。より上質な仕上げとヘッドレスト、レーシングタイプ・ステアリング、そしてサイドミラーも備えられていた。残存する多くのバグが履いているクールなアルミホイールは、オプション装備であり、スペアホイールやシートベルトも同様だった。

さらに、エントリーレベル用に700も計画されていた。サイドスクリーン、ヒーターだけでなく、驚くことに乗降用キャノピーすら省いたモデルだったが、幸運にも製造されたのは1台だけだった。結果、スポーティーな“ES”が圧倒的な差で最も売れたモデルとなった。

最初の500台程度のバグは、イングランド北西部ランカシャーのプレストンにあったボンド社の工場で製造された。その後1971年に、リライアント社のタムワース工場に生産が移転され、その時点からバグには新型のフルシンクロメッシュ・ギアボックスが採用された。改良されたステアリングコラムと、ディッシュ型ホイールが功を奏し、1972年の販売は好調で、その後1973年に両モデルとも、大型エンジンの750EとESに交代することとなる。

バグは1974年5月に製造終了となったが、その時点での生産台数はわずか2268台にすぎなかった。だが、それはまったくの失敗ではなかった。結果として大勢のファンから愛されたからだ。ただ、小型車としてはリライアント社が望んだようには進まなかった。販売の不調の原因は価格が高かったことに加え、玩具のようなものという印象を与え、実用性のなさも影響した。ただし、ある意味では、それも目指していたので仕方がない。バグの車体色は、センセーショナルなタンジェリン(濃いオレンジ)だけに限られ、一部のプロモーション用にのみ、白色や緑色のものが存在した。

その持ち前の特異なスタイリングのおかげで、今後、ボンド・バグがクラシックとなるのは確実だ。いつでも楽しく、かつ比較的安価なままで、現代でも普通に使うことができる。それは、ただ単にクラシックカーを所有するだけではなく、実際に楽しむこともできる、という意味だ。どんな人にでも合うとはわけではないが、日曜日の午後にクルージングすれば、笑顔で溢れることは間違いないだろう。まぁ、あのチョッパーだとそうはいかないかもしれないが…。

編集翻訳:伊東和彦 (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:オクタン日本版編集部

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